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連載 細川珠生のここなら分かる政治のコト

わが子の言葉が出馬のきっかけに…結婚と子育てをもっと身近なものにするためには?【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.38】

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江東区の新しい歩みを牽引する大久保区長。就任以来、区民の信頼回復に向けた区役所のコンプライアンス推進に取り組むとともに、女性職員の視点を生かした「プロジェクト・スマイル」など独自の施策を進展開してきました。区政の現場に女性ならではの感覚を取り入れ、働き方や暮らしの在り方を変える挑戦を続けています。都庁での長年の経験、そして二人の娘を持つ母としての思いを胸に、「次の世代のためにできること」を模索する大久保区長に話を伺いました。


わが子の言葉が出馬のきっかけに…結婚と子育てをもっと身近なものにするためには?【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.38】 お話を聞いたのは…
江東区 大久保朋果区長

1971年8月生まれ。元東京都職員。都立三田高、早稲田第一文学部卒業。都庁でのキャリアは全て政策部門・福祉衛生部門。

政策企画局 政策担当課長、福祉保健局 生活福祉部 統括課長、政策企画局 政策担当部長を歴任。義父母の介護の経験から「高齢者になっても安心して暮らせるまちづくり」を目指す。2023年12月10日に行われた江東区長選挙において5万7,029票を集め初当選。
>>江東区公式HP 「区長室」



―区長就任以来、区役所のコンプライアンス推進を重視され、「江東区コンプライアンス基本方針」も策定されました。
大久保区長:江東区は前区長時代に政治的な事件などもあり、イメージが悪くなったり、ご批判もとてもたくさん受けました。元々、区の職員は、住民に一番近いところで、みんな真面目に、一生懸命仕事をしているんです。にもかかわらず、当たり前にやっても褒められないけれど、ちょっと失敗すると怒られ、それに加え、色々なことがあって・・・。コンプライアンスの確保と推進は、公務員としては当たり前のことですが、職員が頑張って働いているということを、区民の皆さんにも理解してもらって、少しでもイメージを変えたいと思ったんです。


―区民サービスに女性の視点を追加するという「プロジェクト・スマイル」も始められましたね。事業化されたものには、どのようなものがありますか。
大久保区長:災害時には子ども連れだととても大変なので、防災備蓄品にベビーグッズを追加しました。また、公園は日陰がなかなかないので、日除や着替え台を設置するなど、子育て中の目線を大いに生かしました。

―女性職員だけで、事業化までもっていくのですか?
大久保区長:プロジェクトチームは全員女性です。昨年度は20代の女性だけで考えてもらったので、割と身近なことが多かったのですが、今年は年代を限定していないので、また違う政策が出てくるかなと期待しています。
わが子の言葉が出馬のきっかけに…結婚と子育てをもっと身近なものにするためには?【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.38】
―女性職員に限定されたのはなぜですか。
大久保区長:女性活躍も、我々の先輩方のご尽力によって、少しずつ、少しずつ広がってきましたが、まだ社会全体は、アンコンシャスバイアスが根強く、世界と比較してもジェンダーギャップが下位にあることが、もったいないと思うんです。
男性に対しても、アンコンシャスバイアスはあり、その意味からすると、性別に関係なく、自分がやりたいことを目指せる社会を作りたいと思ってきました。その中で、まずは女性目線というものは、区政に必要だと思って、進めています。

―手応えはいかがですか。
大久保区長:自分達が考えたことが予算化されるという意思決定のプロセスに参加する経験を楽しいと思ってもらえたら、キャリアにもつながっていくのではないかと、期待しています。

―区長ご自身はずっと都庁で働いてこられましたが、アンコンシャスバイアスで悩んだり、苦しむようなことや、逆に意欲が向上したり満足度が上がったりというご経験はされてきたのですか。
大久保区長:私自身は、母が教員で働いていましたし、父方の祖母は政治家のもとで働いていたり、母方の祖母は農家でしたが、農家は女性も皆働き手なので、女性でも働くのが当たり前だと思っていました。むしろ専業主婦って、想像できなかったんです。ところが、いざ都庁に入ったら、全然違って…。
奥様が働いていない男性も多かったですし、夫婦で都庁にいる場合でも、男性が管理職になると女性の方が辞めるということも、別にルールでも強制されるわけでもなく、そういう人が多くて、「え?」て驚きましたね。
わが子の言葉が出馬のきっかけに…結婚と子育てをもっと身近なものにするためには?【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.38】
―ご自身で、女性だからということで不自由を感じたということなどは、ありましたか。
大久保区長:私の場合は、ちょうどタイミングが良かったのかもしれません。少し上の先輩だと、まず女性だと係長さえも少ないし、管理職はもちろん(少ない)ですね。私は、女性を積極的に活用しなきゃという風潮の中にあったので、色々な立場を経験させていただきました。ただ、そんな今でも、例えば江東区も、職員は女性が多いのに、管理職比率は2割未満。まだまだですね。

―今後の人事計画では、より女性や、あるいは若手などの抜擢人事も進めていきたいとお考えですか。

大久保区長:いわゆる、下駄を履かせる、ということをするつもりは一切ありません。それより、誰もがチャレンジできる土台を作りたいと思っています。実は、男女とも、管理職試験の受験率が低下しているのです。プライベートとの両立を大事にしたいと思う中で、時間の調整が難しいことなどが課題になっています。こういうことが阻害要因にならないように、変えていきたいと思っています。

―都庁でお仕事をされてこられたので、行政のご経験は大いに活かされると思いますが、一方で、政治家にチャレンジするというのは、また違うお立場です。何が、区長選への出馬を決意させたのですか。

大久保区長:両親が教員だったせいもあるのかもしれないのですが、子どもが元々好きなんですね。
私には娘が二人いますが、やっぱり可愛いんです。その娘たちにもできれば子どもを産んでほしいと思っていて。本来、親でも子どもに、そのようなことを言うべきではないという時代ですが、それを娘たちに、ついつい言っていたんです。そうしたら、娘が、「お母さんはいつもそういうことを言うけど、今は、そう簡単に結婚することも、出産することもできない」、と怒られてしまって。

―若い方々は、生計を立てていくのは、本当に大変そうなのは、私も周りを見ていて思います。
大久保区長:都庁でも、婚活など対策を打ち始めていた時期だったのに、肝心の若い世代には響いていなかったということが、私としてはとてもショックで…。政治家というのは、あるべき世の中というものを目指していく、そういう仕事だと思っているので、若い女性に、結婚も子どもも大変と思わせているのではいかん!と思ったんです。

―それで区長選への出馬を決意された、ということですね。

大久保区長:はい、なんとかしたいって思いました。娘にもですが、次の世代のためにも頑張りたいと思っています。

取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生


わが子の言葉が出馬のきっかけに…結婚と子育てをもっと身近なものにするためには?【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.38】 政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。



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