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連載 細川珠生のここなら分かる政治のコト

「子育て支援」よりも「こども支援」…足立区が掲げる4つのポイント 区長5期目にして踏み込める「貧困の連鎖」とは【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.42】

ウーマンエキサイト
足立区が長年向き合ってきた「ボトルネック的課題」。その核心にあるのが、「貧困の連鎖を断つ」という強い使命です。近藤弥生区長は「まず守るべきは子ども」と語り、妊娠期からの伴走や家庭への丁寧なアプローチで、孤立しがちな子育てを支える取り組みを進めてきました。どんな環境でも、子どもが未来を選び取れるように——。ママたちに寄り添う温かで力強い足立区のこども支援について、近藤区長にお聞きしました。


「子育て支援」よりも「こども支援」…足立区が掲げる4つのポイント 区長5期目にして踏み込める「貧困の連鎖」とは【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.42】 お話を聞いたのは…
足立区 近藤やよい区長

1959年4月生まれ。東京都足立区出身。青山学院大学大学院経済学博士前期課程修了。

その後、警視庁警察官(1983年4月〜1989年1月)、税理士(1996年8月〜)、東京都議会議員(1997年7月〜2007年3月)を経て、足立区長就任(2007年6月20日就任、2023年6月20日から5期目)。趣味は寺社巡り、写経。座右の銘は「継続は力なり」。
>>足立区公式HP 区長紹介ページ



―足立区では「子育て支援」よりも「こども支援」を重視していると伺いました。その理由を教えてください。
近藤区長:まず守るべきは子どもだと思っているんです。家庭の経済状況によって、子どもが受けられる経験が左右されてしまうことがありますね。どんな環境に生まれても、教育や公的なサポートを通して、自分の力で未来を切り開けるようになってほしい。
これは「貧困の連鎖を断つ」という区の大きな使命にもつながっています。

―「貧困の連鎖を断つ」ことに、足立区はかなり力を入れてこられたということですが。
近藤区長:はい。足立区には、区のイメージを左右する4つの大きなポイントがあります。「治安」「学力」「健康」、そして「貧困の連鎖」です。これを、区では「ボトルネック的課題」と呼んでいますが、これを解決しない限り、区内外から正当な評価を得られないと考えています。最初の3つ、治安、学力、健康、この3つの表に出やすい課題をたどっていくと、突き当たるのが「貧困の連鎖」なんです。区長になって5期目になりますが、治安から始まって、学力、健康…と一つずつ取り組み、ようやく最近、本丸である“貧困の連鎖”に本格的に踏み込めるようになってきました。

「子育て支援」よりも「こども支援」…足立区が掲げる4つのポイント 区長5期目にして踏み込める「貧困の連鎖」とは【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.42】
―こども支援の中では、どのように「貧困の連鎖」を断ち切る取り組みを行っているのですか。
近藤区長:出産前からスタートします「ASMAP(エースマップ)事業」と言って、各自治体でも、妊娠届出の際に問診を行っていますが、そこに東京医科歯科大学(現:東京科学大学)と共同で取り組んだ区独自の項目を入れて、出産や子育てに不安を抱えやすい妊婦さんを早い段階で把握します。例えば、相談相手がいないとか、経済的に困窮しているとか、望まない妊娠であったとか、項目出しをして、妊娠中から、そして産後も切れ目なくサポートすることで、孤独な育児にならないようにしたいんです。徹底的に家庭に入りきって、家庭を支えていくという考えです。

―ただ、「家庭に入る」のは簡単ではありませんよね。拒まれるケースもあるのでは。
近藤区長:本当にその通りで、支援が必要な方ほど、支援を拒否することがあります。そこで今年から始めたのが、絵本を配付する「子育て家庭訪問事業」です。
月に1回、最大10回訪問して、お話を伺う。今年10月から始めたので、効果はこれから見ていきますが、アンケートも取りながら、絵本じゃなくてオムツの方が助かるならオムツでもいい。ご家庭によって必要なものは違いますから、無理のない形で関係をつくっていきたいと思っています。

―足立区は、児童虐待を防止するために、区内の警察署との連携強化の協定を結ばれていますね。警察との連携を躊躇する自治体が多い中、どのように実現されたのですか。
近藤区長:警察については、治安の問題が特に大きかったのですが、行政に対する地域の支援者と警察に対する地域の支援者というのはかなり被ってるんです。交通安全協会だとか、警察の協力団体も、町会長さんが務めていらしたりということで、そういう共通の方々の人的な資源を共有しながらやっていくということを考えると、警察は警察、役所は役所でやるのではなく、一緒に、距離感を縮めてやっていきましょう、ということでした。

―区民に抵抗はなかったのでしょうか。

近藤区長:もちろんプライバシーの問題がありますので、ケースバイケースだと思います。今、警察の方もソフト的なところに流れが変わってきていますので、取り締まるということではなく、地に足のついたご相談に応じていただけているという気はします。

―専業主婦のご家庭や、保育園を利用していない方へは、どのようなサポートをされているのですか。
近藤区長:「マイ保育園」という制度があって、保育園に通っていなくても、近くの保育園のイベントに参加したり、絵本を借りたり、保育士に相談したりできます。地域の子育てサロンでは、今、お孫さんがいるような世代の方々など、多くの方が関わってくださっています。一番心配なのは、親子が家にこもって、不安をひとりで抱えてしまうこと。「外に出られないなら、こちらから行きますね」というアウトリーチは、とても大切だと思っています。

―私は出産後も、親が比較的近くにいましたが、心配してくれるのはありがたいのですが、逆にこちらが不安になるようなことを言ったりして、どうしたらよいかわからないことも、結構あったんです。
親が近くにいても解消しきれないことがあるので、やはり相談相手がいるって、大事だなって思います。

近藤区長:本当にそうですよね。区の調査でも明らかになっていますが、たとえ経済的に厳しい家庭でも、相談できる相手がいると、経済的に苦しくなくても相談相手がいない家庭より、子どもの健康面に良い影響があるんです。予防接種の受け方も、自己肯定感等も変わってくる。それくらい、「孤立しないこと」は子どもの成長に影響を与えます。だからこそ、気軽に話せる人がいること、そして行政がその一人になれることが大切だと思っています。
「子育て支援」よりも「こども支援」…足立区が掲げる4つのポイント 区長5期目にして踏み込める「貧困の連鎖」とは【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.42】
―手応えはありますか?
近藤区長:まだ始まったばかりのものもありますが、産後ケアの泊まり・日帰り・訪問支援を拡充するなど、必要な方が使いやすい形に整えているところです。よく、少子化が進むと日本が消滅するっていうことを耳にしますよね。


―日本を消滅させないために産むのではないですからね。
近藤区長:産むか産まないかは、一義的に女性自身の選択です。なので、地域を司る立場としては、産む、産まない、あるいは仕事をする、専業主婦になるなど、私は、女性が自分で「これがいい」と選べるよう、選択肢を増やしていく方がずっと大事だと思っています。


取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生


「子育て支援」よりも「こども支援」…足立区が掲げる4つのポイント 区長5期目にして踏み込める「貧困の連鎖」とは【細川珠生のここなら分かる政治のコト Vol.42】 政治ジャーナリスト 細川珠生

聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。

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