2カ月先まで予約がいっぱい!?ママの”自立”を応援するおうちカフェ「だんご三兄弟」
都営新宿線「瑞江」駅から徒歩5分。閑静な住宅街の一角に、今回紹介したい一軒家カフェ「だんご三兄弟」はあります。といっても、見た目は何の変哲もない一戸建てのおうち。テラス席があるわけでもなく、大きな看板が出ているのでもなく、あるのは小さな椅子に置かれた看板だけ。一瞬カフェだということを疑ってしまいそうな外観ですが、実はこのカフェ、2カ月先まで予約が埋まってしまう、超人気親子カフェなのです。
今回はそんな人気カフェのオーナー、渡辺さんに話を聞きました。
1日3組限定「部屋貸し切り」親子カフェ
「だんご三兄弟」はオーナーの自宅をそのままカフェにしてしまった、超アットホームな「おうちカフェ」。2LDKのおうちのLDKと2部屋、すべてを客室として使い、ランチや子育て講習会(ベビーマッサージやスクラップブッキングなど)で利用するゲストがそれぞれ1部屋貸し切りをしています。
ランチの場合はランチ代のみで、貸切料金などは発生しません。
ママ友のおうちに遊びに来たような感覚で、赤ちゃん連れのママも赤ちゃんを寝かせてゆっくり過ごすことができ、元気な子どもたちも自宅で遊んでいるように安心して過ごすことができます。そして、オーナーの手作りランチを食べて心も体もリフレッシュできる親子カフェなのです。もともとは一見(いちげん)さんお断りのカフェだったそうですが、話題が話題を呼び人気カフェとなり、今では遠くから予約を取ってやって来る親子連れもたくさんいるのだそうです。
きっかけは、託児をしていたころの「ママの一言」でした
「だんご三兄弟」のオーナー、渡辺さんはこの一戸建てに引っ越す前、近くの自宅マンションで託児所をしていました。そのときに、子どもたちに安全でおいしい野菜たっぷりのご飯を食べさせたいと、子ども向けに作っていた食事を、託児中の子のママが見て「私も食べたい」と言ったことが、カフェを開いたきっかけなのだそうです。
また、託児を依頼するママの中には、産後うつ気味で思いつめていたママもいました。そうしたママの姿を見て「子育ては孤独ではいけない」、「ママ自身が、精神的、身体的に自立するための場所を作りたい」と感じたことも、開業のきっかけになりました。
渡辺さんの言う「自立」とは、ママが働いたりお金を稼ぐことだけではなく、ママ自身が自分の体や子どもの体を気づかい、健康でいられるように自ら考えることができるようにする、ということなのだそうです。それを実現するため、だんご三兄弟では野菜や肉、炭水化物など、栄養バランスに気づかい、体に優しいランチを提供しています。また、渡辺さんの思いとともに、時短料理の作り方を伝え、できた料理を夕飯のおかずとして持ち帰るクッキング教室も行われ、人気を集めています。
ベビー講座も、もともと通っていたお客さんがいつしか講師になったり、託児のママが講師になるなど、人が人を呼び、現在は数多くの教室や講習会が開かれる場になりました。こうした経験から、もともと人見知りだったと語る渡辺さんも、人見知りが治ったのだとか。今話している笑顔からは想像もできません。
オーナーの子育てと”自立”
渡辺さん自身も、現在大学生から中学生の3人の子どもを育てているママ。カフェを開業して、マンションで9年、一戸建てで丸2年。
子どもが小さい頃シングルマザーになり、子どもたちのそばで働けるということと、子どもと料理が好きだという理由で、自宅での託児やカフェを始めたのだそうですが、今ではたくさんのママが、渡辺さんのランチを食べたり、渡辺さんと話すことを楽しみにカフェを訪れます。
自宅がそのままカフェになっていることについて、子どもたちはどう感じているのか聞いてみると、「託児は子どもたちがまだ幼稚園と小学校低学年の頃からやっているので、家に家族以外の人がいる環境には慣れていて、お客さんがいても緊張せずにいられるみたいです」と渡辺さん。取材時には今年大学生になった1番上のお子さんがいましたが、特に気を張る様子もなく、お母さんである渡辺さんに普段通り話しかけるなど、リラックスした様子で過ごしていたのが印象的でした。カフェに通っているとお子さんたちに会うことが多いのですが、男の子3人みんなが小さい子が好きで、子どもたちにも優しく接してくれ、また、渡辺さんと息子たちの様子から、家族の仲の良い様子が伝わってきます。
自宅をそのままカフェにすることで気を付けていることは、家族全員、病気予防と身体作りに専念すること。誰か1人がダウンしてしまうと、その日の予約のお客さんすべてにキャンセルしてもらわなくてはいけません。そこで、渡辺さんは食事面から体調管理に気を付け、予防が必要なときにはマスクの着用なども家族全員で徹底。そのおかげで、開業から今までで体調不良によるキャンセルはないのだそうです。
「だんご三兄弟」は、カフェを訪れるママたちにとってだけでなく、渡辺さんにとっても”自立”の場なのだと感じました。
ママたちの癒しと自立、そして学びの場に
子育ての孤独感から開放され、ママ友と子連れで楽しんだり、講座で新たなママ友と出会ったり。まさに渡辺さんが開業時に目指した場所が、そこにはありました。そして取材をした私自身も今、子育てに疲れると通っている場所でもあります。
子育てをしながらカフェを開業し、赤ちゃん、幼児の育児に奮闘するママを温かい目で見守る渡辺さん。これからも多くのママがこのカフェに救われ、育児に笑顔が増える場になっていくのでしょうね。
<取材・写真協力>
だんご三兄弟渡辺幸江さん
http://dango.heteml.jp/
<文・写真:フリーランス記者宮澤初恵>