子どもの自立心を育みたいならSTOP!先回り育児
子どものやることに、ついつい手を出していませんか?先回りばかりしていると、子どもが本来持っている「自分でやりたい!」という気持ちが奪われ、自立心が育たなくなってしまいます。
“見守る保育”を園の方針に掲げる、新宿せいが保育園園長の藤森平司さんに「先回り育児」をしないための心得を聞きました。
お話を聞いたのは:藤森平司さん
新宿せいが保育園(東京都新宿区)園長。自由遊びの内容や、給食を誰と食べるかを選択制にするなど、1日の活動の多くを園児たち自らに決定させる「見守る保育」を園の方針に掲げ、全国の幼稚園・保育園長らが見学に訪れる。著書に「やってあげる育児から見守る育児へ」(学習研究社)。
Q、子どもができること・できそうなことを代わりにやってしまうことはありますか?
Q、やってしまうのはなぜですか?
※2016年7月6日~8月9日、WEBアンケート、有効回答数1081人
4位以下は「自分がやる方がきれいにできるから」「結局やり直すことになるから」「汚す・けがをするなど失敗するから」「どうせできないと思うから」などの理由が上がりました。また「特に理由はないけれど、つい手を出してしまう」という声も。
子どもは生まれながらに「自分でやりたい!」気持ちを持っている
子どもはもともと、「自分でいろいろなことができるようになりたい」という意欲を持って生まれてきます。
その成長意欲がもっとも強いのは赤ちゃんのとき。生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の力だけではどこへも行けませんが、やがてハイハイができるようになり、歩けるようになり、自分の行きたい所に行けるようになります。
もし、ママやパパがいちいち抱っこで、赤ちゃんの行きたい場所へ運んであげていたら、どうなるでしょうか。自分で歩く必要はないと思って、歩かなくなってしまうかもしれません。このように、「何かをやってあげる」というのは、「自分でやる!」という気持ちや、その能力自体を本人から奪ってしまうということなのです。
子どもの自立を、「自分の手から離れるようでさびしい」と思うかたもいるかもしれませんね。ですが、そんな気持ちは敏感に子どもに伝わります。「僕が〝自分でやる〞と言うと、ママが悲しむから」と思い、いつまでたってもやってもらうケースが少なくないようです。
「自分でやりたい!」気持ちは成長の証し。わが子の自立を喜べる親であってほしいと思います。
あるある!? あなたはいくつ当てはまる!ありがちケース5
■ありがちケース1
時間がないとき親が代わりに着替えさせる
■ありがちケース2
「まだ無理」と思うことはやってしまう
■ありがちケース3
周りを汚しそうなことは親がやってしまう
■ありがちケース4
子どもが悩んでいるのを待てずに親が決めてしまう
■ありがちケース5
うまくできていないときいいやり方を教えてしまう
先回りしないための4つの心得
先回りがいけないと言われても、実際の場面ではつい手が出てしまうもの。
そんなときには、この心得を思い出すことで、ちょっと意識が変わるかも?ママ&パパに覚えておいてもらいたい、4つの心得を藤森さんに聞きました。
親の心得その1
親が手を出すのは「やって」と言われたときだけ
自分ができないことを人に頼めるのも、自立のひとつ。「ママがやって」と言うのは、何となく自分には無理そうだと感じているからで、自分の力量が分かってきた証しなのです。子どもが「やって」と言ったときに手を貸すのは、先回りではありません。「その度に手を貸していたら、いつまでたっても自分でできるようにならないんじゃないの?」と思うかもしれませんが、それは逆。
理想を言うなら、親がやってあげるのは完成の一歩手前までがベストです。たとえば着替えなら、ポロシャツでも上着でも、最後の方のボタン留めだけを子どもにやらせましょう。普通、最初だけやらせて続きを親がやってしまうのですが、「これくらいならできるかな」と思えるところまで親がやり、完成したときの喜びを子どもに味わわせるのがコツです。そうすると、「自分でもっとやりたい!」気持ちが育っていきますよ。
親の心得その2
忙しいときは事情を説明して親がやってOK
「先回りはいけない」けれど、忙しいときまで子どもに全部やらせていたのでは、ママたちのストレスはたまる一方。そんな無理をする必要はありません。その時の状況によって、手を出すことがあっても構わないと思います。
大事なのは子どもの「やりたい」という気持ちに向き合うこと。黙って取り上げたり、頭ごなしに「だめ!」と言うのはやめましょう。
親の心得その3
子どもが“自分で選ぶ”チャンスを増やす
「自分で選ぶ」というのは、子どもの自立にとってすごく大切なことです。その理由の1つめは、決定を受け入れてもらうことで、「自分はできる!」という気持ち(自己有能感)が生まれるから。2つめは、責任を取ることを覚えていくからです。たとえばうちの園では、給食をどれだけよそうか子どもたちが自分で決めるのですが、この方法を取ってから残飯がすごく少なくなりました。
家庭でも、食べたい物や着たい物など、日常の小さなことで「これは子どもに決めさせても問題ないな」ということがあったら、できるだけ子どもが自分で選ぶ機会を多くつくってほしいと思います。そして、親がいいと思う物を子どもが選ばなくても、「そんなのだめ。こっちにしなさい」と否定しないこと。子どもの意思を大切にしてください。
親の心得その4
どれだけできたかという結果より失敗する過程が大事
ママたちがつい先回りをしてしまう理由の多くは、「まだ無理」「周りを汚しそう」など、今の子どもの力では上手にできないことがあるから。また、うまくいく方法を教えたいがために、善かれと思って手を出してしまう場合もあると思います。
けれど、これからいろいろな能力を身に付ける子どもにとっては、何度も失敗しながら、自分でいいやり方を見つけ出す経験こそが大切です。
藤森さんから終わりに
「待てる親」が「自分で考える子」を育てる
「将来、自分で考えられる子になってほしい」というのは、ママやパパに共通の願いでしょう。そのために親ができるのは、子どもの選択や、やろうとしていることを「待つ」ことだと私は思います。たくさん自分の頭で悩んで、考える機会を与えられることで、子どもは親の言うなりではなく、自分で考えられるようになります。
ただし、子どもの力だけでは解決が難しいことももちろんあるでしょう。
監修/西東桂子(あんふぁんサポーター)
illustrationKAWAZOE Mutsumi
“見守る保育”を園の方針に掲げる、新宿せいが保育園園長の藤森平司さんに「先回り育児」をしないための心得を聞きました。
お話を聞いたのは:藤森平司さん
新宿せいが保育園(東京都新宿区)園長。自由遊びの内容や、給食を誰と食べるかを選択制にするなど、1日の活動の多くを園児たち自らに決定させる「見守る保育」を園の方針に掲げ、全国の幼稚園・保育園長らが見学に訪れる。著書に「やってあげる育児から見守る育児へ」(学習研究社)。
Q、子どもができること・できそうなことを代わりにやってしまうことはありますか?
Q、やってしまうのはなぜですか?
※2016年7月6日~8月9日、WEBアンケート、有効回答数1081人
4位以下は「自分がやる方がきれいにできるから」「結局やり直すことになるから」「汚す・けがをするなど失敗するから」「どうせできないと思うから」などの理由が上がりました。また「特に理由はないけれど、つい手を出してしまう」という声も。
子どもは生まれながらに「自分でやりたい!」気持ちを持っている
子どもはもともと、「自分でいろいろなことができるようになりたい」という意欲を持って生まれてきます。
その成長意欲がもっとも強いのは赤ちゃんのとき。生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の力だけではどこへも行けませんが、やがてハイハイができるようになり、歩けるようになり、自分の行きたい所に行けるようになります。
もし、ママやパパがいちいち抱っこで、赤ちゃんの行きたい場所へ運んであげていたら、どうなるでしょうか。自分で歩く必要はないと思って、歩かなくなってしまうかもしれません。このように、「何かをやってあげる」というのは、「自分でやる!」という気持ちや、その能力自体を本人から奪ってしまうということなのです。
子どもの自立を、「自分の手から離れるようでさびしい」と思うかたもいるかもしれませんね。ですが、そんな気持ちは敏感に子どもに伝わります。「僕が〝自分でやる〞と言うと、ママが悲しむから」と思い、いつまでたってもやってもらうケースが少なくないようです。
「自分でやりたい!」気持ちは成長の証し。わが子の自立を喜べる親であってほしいと思います。
あるある!? あなたはいくつ当てはまる!ありがちケース5
■ありがちケース1
時間がないとき親が代わりに着替えさせる
■ありがちケース2
「まだ無理」と思うことはやってしまう
■ありがちケース3
周りを汚しそうなことは親がやってしまう
■ありがちケース4
子どもが悩んでいるのを待てずに親が決めてしまう
■ありがちケース5
うまくできていないときいいやり方を教えてしまう
先回りしないための4つの心得
先回りがいけないと言われても、実際の場面ではつい手が出てしまうもの。
そんなときには、この心得を思い出すことで、ちょっと意識が変わるかも?ママ&パパに覚えておいてもらいたい、4つの心得を藤森さんに聞きました。
親の心得その1
親が手を出すのは「やって」と言われたときだけ
自分ができないことを人に頼めるのも、自立のひとつ。「ママがやって」と言うのは、何となく自分には無理そうだと感じているからで、自分の力量が分かってきた証しなのです。子どもが「やって」と言ったときに手を貸すのは、先回りではありません。「その度に手を貸していたら、いつまでたっても自分でできるようにならないんじゃないの?」と思うかもしれませんが、それは逆。
子どもは、自分が求めたときには必ず応えてもらえることで心が満たされ、「今度は自分でやってみようかな?」と思えるようになるのです。
理想を言うなら、親がやってあげるのは完成の一歩手前までがベストです。たとえば着替えなら、ポロシャツでも上着でも、最後の方のボタン留めだけを子どもにやらせましょう。普通、最初だけやらせて続きを親がやってしまうのですが、「これくらいならできるかな」と思えるところまで親がやり、完成したときの喜びを子どもに味わわせるのがコツです。そうすると、「自分でもっとやりたい!」気持ちが育っていきますよ。
親の心得その2
忙しいときは事情を説明して親がやってOK
「先回りはいけない」けれど、忙しいときまで子どもに全部やらせていたのでは、ママたちのストレスはたまる一方。そんな無理をする必要はありません。その時の状況によって、手を出すことがあっても構わないと思います。
「ごめんね。本当はあなたができることは分かってるんだけど、今日は忙しいからママがやるね」と事情を説明すれば、子どもも納得します。
大事なのは子どもの「やりたい」という気持ちに向き合うこと。黙って取り上げたり、頭ごなしに「だめ!」と言うのはやめましょう。
親の心得その3
子どもが“自分で選ぶ”チャンスを増やす
「自分で選ぶ」というのは、子どもの自立にとってすごく大切なことです。その理由の1つめは、決定を受け入れてもらうことで、「自分はできる!」という気持ち(自己有能感)が生まれるから。2つめは、責任を取ることを覚えていくからです。たとえばうちの園では、給食をどれだけよそうか子どもたちが自分で決めるのですが、この方法を取ってから残飯がすごく少なくなりました。
先生が何も言わなくても、「自分で決めたんだから食べなきゃ」という意識が自然と芽生えるんですね。
家庭でも、食べたい物や着たい物など、日常の小さなことで「これは子どもに決めさせても問題ないな」ということがあったら、できるだけ子どもが自分で選ぶ機会を多くつくってほしいと思います。そして、親がいいと思う物を子どもが選ばなくても、「そんなのだめ。こっちにしなさい」と否定しないこと。子どもの意思を大切にしてください。
親の心得その4
どれだけできたかという結果より失敗する過程が大事
ママたちがつい先回りをしてしまう理由の多くは、「まだ無理」「周りを汚しそう」など、今の子どもの力では上手にできないことがあるから。また、うまくいく方法を教えたいがために、善かれと思って手を出してしまう場合もあると思います。
けれど、これからいろいろな能力を身に付ける子どもにとっては、何度も失敗しながら、自分でいいやり方を見つけ出す経験こそが大切です。
大人はついつい結果を重視してしまうので、上手にできるようにと手を出したくなってしまいますが、大事なのは試行錯誤を繰り返す過程。そう思えば、自然と先回りをしなくなるのではないでしょうか。ただし、いくら失敗が大事だとは言っても、危険過ぎることはいけません。安全な範囲で失敗を経験させることが親の役目です。
藤森さんから終わりに
「待てる親」が「自分で考える子」を育てる
「将来、自分で考えられる子になってほしい」というのは、ママやパパに共通の願いでしょう。そのために親ができるのは、子どもの選択や、やろうとしていることを「待つ」ことだと私は思います。たくさん自分の頭で悩んで、考える機会を与えられることで、子どもは親の言うなりではなく、自分で考えられるようになります。
ただし、子どもの力だけでは解決が難しいことももちろんあるでしょう。
そんなときこそ、大人の出番です。「どこまでやってあげれば、子どもの考える力を邪魔しないか」を見極めることこそが、私たち大人の役割なのです。
監修/西東桂子(あんふぁんサポーター)
illustrationKAWAZOE Mutsumi