幼稚園の伝え方から学ぶ 子どもの勘違いにはワケがある
「大きくなったら何になるの?」と聞くと、「ゾウ!」と答えたり「あそこのコップを持ってきて」と頼むと、見当違いのコップを持ってきたり…。子どもはママの意図と違った返事や行動をすることがありますね。でもそれは、子どもなりに一生懸命に考えた結果です。
広野幼稚園(京都府宇治市)では、そんな子どもの言動を28年間記録し続けて、日常の保育や避難訓練に生かしています。
あんふぁん読者の「子どもに伝わらなかったこと」を取り上げながら、子どもが勘違いしない伝え方や子どもの勘違いを楽しむ姿勢について聞きました。
お話を聞いたのは
広野幼稚園(京都府宇治市)/吉村裕園長(左)/木村典子主任(右)
よしむら・ゆたか/保育内容から施設まで、さまざまな領域において「オンリーワン」でありたいという考えの下に、幼稚園教育を展開している。著書に「子どもの心とからだを育てる広野幼稚園からのメッセージ」(大修館書店)など。
きむら・のりこ/学生時代に広野幼稚園にて教育実習を受けて以来、同幼稚園で23年間教諭を務める。
3人の子どもの母。
Q.ママが伝えたかった意図が子どもに伝わらなかったことは?
※2017年1月11日~31日、Webアンケート、有効回答数1081
記録し続けている子どもの言動は約5500件!
広野幼稚園の先生たちが、保育中、意外に感じた子どもたちの言葉や行動を記録し始めたのは、1989年のことです。
「目的は保育者の実力向上のためです。保育者は子どもの言葉・行動を学ばなければいけませんが、大人の言い方・やり方を押し通してしまうことがあります。記録することで、反省し、次に生かしていくために始めました」と、記録の発案者である吉村裕園長。
今では約5500件の事例がデータに保存され、日々更新されています。先生たちは必要に応じて、「音楽会」「避難訓練」などのキーワードを入れて検索し、過去の事例を読むことができるのです。
保育歴23年のベテランである主任の木村典子先生も記録を活用しています。
「私たちの伝え方がちょっと足りないと、子どもたちはこちらの意図と違った動きをします。それを記録することで、どんな言葉が足りなかったのか、どう言えば伝わったのかを考えます。他の先生たちの記録も読めるので、一人の経験だけで終わらずに、みんなで共有できるのがいいですね」
子どもの勘違いを楽しむ気持ちも忘れない
子どもの勘違いは子どもが悪いのではなく、大人側の言葉が足りないため、と捉えている先生たちですが、全てにおいて子どもが勘違いしないように大人が伝え方を配慮しなければいけないとは考えていません。