直さなきゃダメ? うちの子の野菜嫌い
よその子はパクパク食べているのに、うちの子だけお皿の端によけている…など、野菜嫌いは、ママも切なくなってしまう場面がありますね。そもそも、野菜を食べることはなぜ大事なのでしょうか。今のうちに野菜嫌いを直さないといけないのでしょうか?管理栄養士として、親子の食の悩みに長年向き合ってきた太田百合子さんに話を聞きました。
お話を聞いたのは:太田百合子さん
管理栄養士。研究テーマは小児肥満、離乳食、幼児食。大学・専門学校で非常勤講師を務めるほか、NHKの子育て番組出演や育児雑誌の監修を行っている。著書に「0-5歳児 食育まるわかりサポート&素材データブック」(学研プラス)など。
Q.お子さんは野菜が好きですか?
Q.お子さんに嫌いな野菜があることについてどう感じますか?(複数回答)
※2017年2月1日~28日、Webアンケート、有効回答数1247
野菜を食べる目的は食物繊維を取り入れること
みなさんは、子どもから「なんで野菜を食べなきゃいけないの?」と聞かれたら、どう答えますか。
「体にいいから」でしょうか。「栄養が取れるから」でしょうか。
実は、野菜には栄養分がほとんどありません。栄養となるのは炭水化物(ご飯やパン)と、タンパク質(肉や魚)と、脂質。よく「野菜でビタミンやミネラルが取れる」といわれますが、魚や大豆の方が多くの量を含んでいます。
「それならご飯や肉だけを食べればいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、タンパク質や脂質だけの食事を続けていると、おなかの中の悪玉菌が増えてしまいます。悪玉菌は、便秘や動脈硬化の原因になります。
そこで出番となるのが野菜です。
野菜に含まれている食物繊維は、おなかの中にカスとしてとどまり、悪玉菌を取り込んで、うんちと一緒に体の外に出します。同時に善玉菌をおなかの中で育てます。つまり野菜を食べる目的は食物繊維を取ることなのです。
「野菜ジュースや野菜入りのスナック菓子を食べさせているから大丈夫」というママもいますが、野菜の代用にはなりません。ただ野菜に親しむきっかけにはなるので、上手に取り入れるといいですね。お手伝いには野菜への恐怖心を軽くする効果がある
下の「子どもの嫌いな野菜ランキングTOP5」を見ても分かるように、嫌われる野菜の特徴としては苦味・酸味・辛みがあります。これらは腐っていたり、熟していなかったり、毒があることを連想させる味なので、人間は本能的に拒絶します。いろいろな食の経験を積むことで、こうした味もおいしいと感じられるように味覚が変わるので、食経験の少ない子どもが嫌うのは当然です。
また、離乳食では刻まれて形も色も分からない野菜が、固形物として出されるようになるのも、1歳半ごろから野菜嫌いが増える原因。子どもにとっては「初めて見るもの」なので、恐怖心を持つのです。
いきなり「食べなさい」と料理を出すのではなく、食卓にあがるまでの過程を伝えることで恐怖心が和らいでいきます。一緒にスーパーに行って夕食に使う野菜を選ぶ、皮むきや水洗いをするなど、簡単にできることでOK。見て、触れた経験があれば、「私が洗ったピーマン!」と親しみが持てるはずです。
食べられる野菜を増やすより楽しい食事が大事
野菜嫌いの相談を受けて感じるのは、ママたちがすごくまじめだということ。だから「食べさせなくちゃ」と焦ってしまうんですよね。でもその考えをいったん捨てた方が近道だったりするんですよ。
例えば、正月のおせち料理。子どものころはおいしそうに思えなかったけれど、大人になるにつれて食べられるものが増えていきますよね。それは、家族が「おいしい」と言って食べる姿や、楽しい食卓の雰囲気が私たちの記憶に残っているから。これは普段の食事でも同じことです。
もう一つ大切なのは、おなかがすいていること。特にジュースやお菓子は満腹中枢を刺激しやすいので、食事前は避けたいですね。何か食べさせるなら、その時作っている料理を味見させましょう。そして「◯◯ちゃんが味見してくれたナス、おいしいね」といっぱい褒めてください。
家族の役に立てた誇らしい気持ちも、食事に対する楽しいイメージの一つになります。
子どもの嫌いな野菜ランキングTOP5(複数回答)
1位ピーマン・・・42.6%
2位ナス・・・39.6%
3位ネギ・・・29.4%
4位キノコ類・・・25.4%
5位トマト・・・24.1%
6位以下
6位ホウレン草・・・18.9%
7位ブロッコリー・・・14.8%
8位カボチャ・・・12.2%
と続きます。子どもが嫌いな野菜の代表とされがちなニンジンは12位(7.2%)と、意外な結果に。
※2017年2月1日~28日、Webアンケート、有効回答数1247
嫌いな野菜も夢中でパクパク!わが家の殿堂入りレシピ
子どもが野菜を苦手と感じる原因は「味」「食感」「見た目」にあると語る太田さん。そのポイントを見極めれば、意外とあっさり食べてしまうことが多いそうです。この3つのポイントを克服するレシピや調理の工夫をあんふぁんメイト&読者に教えてもらいました。
味・食感
切り方一つでピーマンを攻略!
「ピーマンは切り方で味や食感が変わる」と料理本で見て実践。娘は苦味が嫌いなので、細かく縦切りにして、麻婆豆腐に混ぜたら食べるようになりました。
[千葉県・年少ママ]
切り方と味・食感の変化は以下の通り。種の周りの白いわたを取ることでも苦味が減ります。(太田先生)
食感
焼きナスは皮を取り手づかみでパクリ!
焼きナスは皮を取り、しょうゆとかつお節で味付けします。あえて長いまま手づかみでパクリ!いつもと違う食べ方が面白いようで、がっついて食べますよ。[あんふぁんメイト 増田明子さん]
ナスの硬い皮と柔らかい実の食感の違いが、子どもが嫌う原因。ナスの皮にはアントシアニンという辛み成分が含まれているので、辛みを除く意味でもいいですね!(太田先生)
味
3種のキノコをご飯がすすむ佃煮に
キノコは3種類以上を混ぜると味が良くなると知って、思い付いたアイデア。味付けはしょうゆとみりんで甘辛く。葉物野菜のおひたしもこれをのせると食べてくれます。
[あんふぁんメイト 砂見一美さん]
キノコは独特の風味が苦手の原因。甘辛く味付けするのはいいですね。私は鶏肉と一緒に卵とじにして、肉と卵の旨味でキノコの風味を消しています。(太田先生)
見た目
牛乳ととろけるチーズでお手軽チーズフォンデュ
ナスはオリーブ油で焼き、ブロッコリーやニンジンは下ゆで。牛乳とチーズを電子レンジで温めたものにディップしながら食べます。[あんふぁんメイト 日比野紀子さん]
味
旬野菜を好物のミルクスープ仕立てに
野菜全般が苦手でしたが、息子が好きなミルクスープ仕立てだと食べるようになりました。「根っこの野菜を食べると風邪をひかなくなるよ」と栄養についても伝えています。[あんふぁんメイト 日比野紀子さん]
野菜の大切さを伝えるのはとても大事!「いいうんちが出るよ」「元気モリモリになるよ」などの野菜に対する知識が、「食べてみよう」と思うきっかけに。(太田先生)
見た目
煮野菜はおでん風串刺しに
煮た野菜が嫌いだったのに、おでんのように串に刺したら食べてくれました。それ以来、煮野菜は何でも竹串に刺して出しています(笑)。[福岡県・年中ママ]
見た目を変えることも、食事に興味を持たせるための刺激の一つ。いろいろなものを見ることで「食べてみようかな」という意欲が育っていきます。(太田先生)
味
ごま油と鶏ガラ味でナムル風ホウレン草
おひたしにしたホウレン草はダメだけど、ごま油と鶏ガラスープの素を加えてナムル風にしたものだけは食べます。[大阪府・年中ママ]
食感
冷凍ペーストでカボチャのアイス
カボチャやサツマイモが嫌いでしたが、下の子の離乳食としてペーストにして冷凍したものを、夏にアイスとして出したら大好きになりました。[神奈川県・年少ママ]
食感
トースターでかりかりナスチップス
柔らかいナスがどうしても苦手。スライスしてトースターでチンし、チップスのようにして食べています。[東京都・年長ママ]
太田先生が答えます! 野菜嫌いQ&A
Q.嫌いな野菜の食べさせ方これってOK?
【OK】細かくみじん切りにする
「食べられた」という達成感は大事なので、嫌いな野菜が入っていることは伝えてください。調理前に「刻んで入れるよ。どうかな?」と聞き、食べられたらいっぱい褒めてくださいね。
【NG】「入ってないよ」と嘘をつく
ママのことを信頼できなくなるし、いつも「何か入っていないかな?」と疑うようになるので、食事が楽しくなくなってしまいます。
【OK】濃い味付けにする
「料理は薄い味付けがいい」といわれる傾向にありますが、野菜に限っては濃い味付けの方が食べやすいもの。マヨネーズやケチャップなど、子どもが好きな調味料も活用してください。
Q.幼稚園のお弁当や給食で野菜をどう食べさせる?
■お弁当の場合
お弁当箱に「肉・魚…1、野菜…2、炭水化物…3」の割合で食材が入っているのが理想的なバランスといわれています。徐々に野菜を増やすときは、卵とじにする、味付けを濃くするなど、食べやすい工夫をして。
■給食の場合
お友達から刺激を受けて食べられることが多いですが、先生たちは決して無理強いしません。「今日はピーマンを食べられました」と先生が教えてくれたときは、家でもマネできるよう調理法を聞くのもいいですね。
巻頭特集監修/西東桂子さん(あんふぁんサポーター)illustrationYAMAMOTO Mamoru