知りたい聞きたい! 幼稚園の先生のホンネを聞きました
多くの子どもにとって、幼稚園は初めての集団生活の場所。
楽しい思い出いっぱいの園生活を送ってほしいと、ママも先生もいろいろと試行錯誤しています。
そこで今回は3人の先生達による座談会と、全国のママ・先生へのアンケートを実施。お互いの“子どもに対する真剣な思い”が見えてきました。
子どものためになるのか、そこを基準に互いが協力
幼稚園で子ども達と日々向き合っている先生達が、子どもと向き合うことと同じくらい大切にしているのが、ママとの関わり。「子どもの園生活を楽しく、充実したものにするにはママとの協力は不可欠」と先生たちは口をそろえて話していました。
今のママたちに対する印象は?
花井先生「とても丁寧に子育てをしている、という印象です。園に対してもきちんと向き合ってくれるママが多いので、子どもの小さな変化を一緒に喜んでくれるのはありがたいですね」
葉山先生「気にかかることがあったとき、きちんと伝えてくれるママが増えたように感じています。
実川先生「以前あるママから「〝失敗〟という表現を使わないでほしい」と言われたことがあります。園としては、失敗から成功体験へ導くことが大切なので、決してマイナスな意味で使ったわけではなかったのですが…」
葉山先生「子どもやママにとって本当にいいのか・必要なのかを吟味することが難しいのかな?と感じることはありますね。SNSなどで得た情報が保護者間で「これはいいらしい」と広まり、検討する前にどんどんみんながそれに続いてしまう。「いいらしい」が連鎖することは少し心配だな…と思います」
共に成長を喜べたときが先生になって良かった!と思う瞬間
園生活では、ママとの関わりがたくさんありますが、うれしかったことは何でしょう?
実川先生「やはり、子どもの成長を喜び合えたときですね。例えば、「うちの子はスキップができなくて」という悩みをママから受けたとして、園でさまざまなやり方を試して、成功したとします。そのことを一緒に感動して共感し合えたときなどは、この仕事をやっていて良かった!と心から思います」
花井先生「「子どものペースで、できるようになるのを信じて待ちましょう」とママと見守っていたことができるようになったとき、一緒に喜び合えるのは本当にうれしいですよね」
葉山先生「私の園では、卒園児のママたちが在園児ママに向けてその後の生活について話してくれる会があるのですが、なんと卒園児が高校生くらいのママも参加してくれるんです。
トラブルは成長の好機、子どものペースでの解決を待って
逆に、これはちょっと困るな、と思うことはありますか?
葉山先生「子ども同士のトラブルへの対応でしょうか。ほとんどの保護者は協力的ですが、中には「うちの子は悪くないから、周りをどうにかしてほしい」というママも。そういったケースの場合、わが子の話だけをうのみにしていることが多いのですが、自分の子ども時代を振り返ってみてください。子どもは自分の悪いことを親には言いたがらないもの。それだけで判断するのは待ってほしいです」
実川先生「生まれて3~6年しかたっていないのだから、トラブルはあって当然。それを子ども同士で解決することが、成長へとつながります。そして、成長には時間が必要です。
花井先生「トラブルがあったときに、わが子の悲しみや怒りを受け止めて「イヤだったね」と共感することは大切。でもその後に「もう〇〇くんとは遊んじゃダメ」など、親の価値観を伝えることはできれば避けてほしいです。ママの発言は子どもにとって大きな影響を与えます。子ども自身は思っていなかったことでもママに言われると従ってしまうので、子どもがどうしたいか、を大切にしてあげてほしいですね」
実川先生「子どもからイヤなことがあったと言われたら、園に伝えてもらいたいです。先生同士で共有して、きちんと対応します!」
ママとは違う立場で、でもママと同じように子どもたちを大切に思い、その成長に一喜一憂していてくれる先生達。〝子どもが生き生きできる〟ことを第一に考え、お互いにとってより良い関係を築いていきたいですね。
■座談会に参加してくれたのは
花井先生(仮名):300人規模の幼稚園に勤務。
葉山先生(仮名):270人規模の幼稚園に勤務。教諭歴20年目。主任
実川先生(仮名):120人規模の幼稚園に勤務。教諭歴24年目。副園長
これはどうして?ママの疑問に先生が答えます
Q.行事に結果を求めすぎて、厳しすぎると感じることがあります。もっと伸び伸び、楽しい時間を過ごさせてあげたいのですが…
A.子どもの主体性を大切にする園、集団でやり遂げることの達成感を味わわせてあげたい園など、園によって方針はさまざま。
中には厳しいと感じる保護者もいるかもしれませんね。
子どもが生き生きとチャレンジしているのならば、見守ってあげてほしいです。その上で、もし子どもの隠れた本音に気付いたのならば、まずは先生に伝えてみて。
Q.「ダメ」などの強い否定の言葉掛けや、「早くしなさい」とむやみに子どもを急かすのはやめてほしいです
A.最初から「早くしなさい」と急かすことはなるべく言わず、子どもに予定が見えるよう段階を踏んで進めるなど、先生たちも工夫をしていると思います。
ママが見たその瞬間は「早く!」と言っているかもしれませんが、もしかしたらそれ以前に働きかけている可能性もあるので、気になったときは先生に事情を聞いてみてはいかがでしょうか。
「ダメ」も同様ですが、どうしてもいけない行為(噛みつきやひっかきなどの危険な行為)の場合は、回りくどく説明しても特に小さい子には伝わりづらく、危ないケースもあるので、短く強めに使うことはあるかもしれません。
Q.子ども同士のトラブルがあったとき、前後の事情を聞かずに頭ごなしに叱っているように思うことがあります
A.本当にそのようなことがあった場合は、叱った先生・叱られた子どもたちなど、関係者にまずは話を聞き、その上で園から保護者に報告をしていると思います。
ただ、そのトラブルが命に関わるようなことの場合は、頭ごなしに叱る可能性は否定できません。
もちろん、その後で子どもに事情は聞きますが、まずその行為をやめさせることが大切なので、そこは理解してもらいたいところです。
ママたちは園での様子を一日中観察しているわけではないので、どうしてもその場面を断片的に切り取って判断することが多いと思いますが、その断片の前後にも事情があるのかも…と少し想像してもらえるとありがたいです。私たち、こんなふうに思っています【園のホンネ】
■うれしかったこと
●卒園後の子ども達の様子を報告してくださったり、卒園児が保護者として園に戻ってきて、積極的に行事に参加してくれるなど、園を離れた後も縁をつないでいてくれることはうれしいですね
●園のことを理解し、「先生がいて安心です」「ずっと辞めないでくださいね」と言ってもらえたときは、先生になって良かったと思いました
●子どものことで相談を受け、それが幼稚園で成功したときに、一緒に感動して「子育ては一人じゃない」と共感してくれたとき
●ねぎらいや「ありがとう」という感謝の言葉・手紙をもらったこと
■悲しかったこと・困ったこと
●トイレトレーニングや箸の使い方、あいさつなど、園に“任せる”のではなく、家庭と園で協力して取り組むことだと理解してほしいです
●緊急時に電話がつながらなかったとき
●手紙を読んでもらえなかったり、提出物の期限を守ってもらえないときは少々困ります…
●お迎えの後、子どもから目を離しておしゃべりに夢中になっているママたちがいます。危険なので安全な場所に移動してからにしてほしいです
私たち、こんなふうに思っています【ママの気持ち】
■うれしかったこと
●子どものことで「気にしすぎかも…」と相談できずにいると、先生から「気になることがあったら何でも言ってください。いつでも待ってます!」と言われたとき。先生の懐の広さを感じた
●子どもの成長に合わせた対応をして、成功体験を味わわせてくれた。おかげで子どもも私も自信がつきました
●ささいなことでも小まめに報告してくれること。きちんと見ていただけているのだと安心します
●「お母さん、頑張りすぎないようにね」と気遣ってもらったときは涙が出ました
●先生の手を焼かせることが何度かあったので「いつもすみません」と謝ったら、「大丈夫、毎日楽しいですよ」と言ってくれました
■悲しかったこと・困ったこと
●以前伝えたことを忘れられて、同じことを何度も確認されました。
●毎日ダメ出しが続いたときは、くじけそうになりました
●けがをしたことについて、何の報告も説明もなかったとき
●子どもの名前を間違えて呼ばれたときは悲しかったです
●「他の子はできることが、息子さんはできていないことが多くて」と比べるように言われたときは嫌な気持ちになりました
一緒に育ててくれて、ありがとう!ママの気持ち、伝えます
●子どもがやりたいことを引き出してあげてほしい
●笑顔で子どもに接してくれるとうれしいです
●先生が明るく楽しく保育してくれていることが一番!
●安全確保は徹底してもらいたい
●先生も休みをしっかり取って、人間らしく過ごしてほしいと思っています
●定期的に子どもの様子を教えてくれたり、親の不安や疑問を聞いてくれるとうれしい
●子どもの個性を大事にしてほしいです
イラスト/柴田ケイコ
楽しい思い出いっぱいの園生活を送ってほしいと、ママも先生もいろいろと試行錯誤しています。
そこで今回は3人の先生達による座談会と、全国のママ・先生へのアンケートを実施。お互いの“子どもに対する真剣な思い”が見えてきました。
子どものためになるのか、そこを基準に互いが協力
幼稚園で子ども達と日々向き合っている先生達が、子どもと向き合うことと同じくらい大切にしているのが、ママとの関わり。「子どもの園生活を楽しく、充実したものにするにはママとの協力は不可欠」と先生たちは口をそろえて話していました。
今のママたちに対する印象は?
花井先生「とても丁寧に子育てをしている、という印象です。園に対してもきちんと向き合ってくれるママが多いので、子どもの小さな変化を一緒に喜んでくれるのはありがたいですね」
葉山先生「気にかかることがあったとき、きちんと伝えてくれるママが増えたように感じています。
それはとてもありがたいことなので、どんどん伝えてほしいと思っています。ただ、要望に応えるかどうかは、子どものためになるかどうかで判断するようにしています。たとえ保護者の希望でも、子どものためにならないことは、勇気を持って「NO」と言うことも必要だと思うのです」
実川先生「以前あるママから「〝失敗〟という表現を使わないでほしい」と言われたことがあります。園としては、失敗から成功体験へ導くことが大切なので、決してマイナスな意味で使ったわけではなかったのですが…」
葉山先生「子どもやママにとって本当にいいのか・必要なのかを吟味することが難しいのかな?と感じることはありますね。SNSなどで得た情報が保護者間で「これはいいらしい」と広まり、検討する前にどんどんみんながそれに続いてしまう。「いいらしい」が連鎖することは少し心配だな…と思います」
共に成長を喜べたときが先生になって良かった!と思う瞬間
園生活では、ママとの関わりがたくさんありますが、うれしかったことは何でしょう?
実川先生「やはり、子どもの成長を喜び合えたときですね。例えば、「うちの子はスキップができなくて」という悩みをママから受けたとして、園でさまざまなやり方を試して、成功したとします。そのことを一緒に感動して共感し合えたときなどは、この仕事をやっていて良かった!と心から思います」
花井先生「「子どものペースで、できるようになるのを信じて待ちましょう」とママと見守っていたことができるようになったとき、一緒に喜び合えるのは本当にうれしいですよね」
葉山先生「私の園では、卒園児のママたちが在園児ママに向けてその後の生活について話してくれる会があるのですが、なんと卒園児が高校生くらいのママも参加してくれるんです。
だから在園児のママは、小学生~高校生の様子もイメージすることができる。本当に感謝しています」
トラブルは成長の好機、子どものペースでの解決を待って
逆に、これはちょっと困るな、と思うことはありますか?
葉山先生「子ども同士のトラブルへの対応でしょうか。ほとんどの保護者は協力的ですが、中には「うちの子は悪くないから、周りをどうにかしてほしい」というママも。そういったケースの場合、わが子の話だけをうのみにしていることが多いのですが、自分の子ども時代を振り返ってみてください。子どもは自分の悪いことを親には言いたがらないもの。それだけで判断するのは待ってほしいです」
実川先生「生まれて3~6年しかたっていないのだから、トラブルはあって当然。それを子ども同士で解決することが、成長へとつながります。そして、成長には時間が必要です。
最近の保護者はすぐに結果を出したがることが多いように感じます。子どもの力を信じて、ぜひ見守ってほしいです」
花井先生「トラブルがあったときに、わが子の悲しみや怒りを受け止めて「イヤだったね」と共感することは大切。でもその後に「もう〇〇くんとは遊んじゃダメ」など、親の価値観を伝えることはできれば避けてほしいです。ママの発言は子どもにとって大きな影響を与えます。子ども自身は思っていなかったことでもママに言われると従ってしまうので、子どもがどうしたいか、を大切にしてあげてほしいですね」
実川先生「子どもからイヤなことがあったと言われたら、園に伝えてもらいたいです。先生同士で共有して、きちんと対応します!」
ママとは違う立場で、でもママと同じように子どもたちを大切に思い、その成長に一喜一憂していてくれる先生達。〝子どもが生き生きできる〟ことを第一に考え、お互いにとってより良い関係を築いていきたいですね。
■座談会に参加してくれたのは
花井先生(仮名):300人規模の幼稚園に勤務。
教諭歴13年目。学年主任
葉山先生(仮名):270人規模の幼稚園に勤務。教諭歴20年目。主任
実川先生(仮名):120人規模の幼稚園に勤務。教諭歴24年目。副園長
これはどうして?ママの疑問に先生が答えます
Q.行事に結果を求めすぎて、厳しすぎると感じることがあります。もっと伸び伸び、楽しい時間を過ごさせてあげたいのですが…
A.子どもの主体性を大切にする園、集団でやり遂げることの達成感を味わわせてあげたい園など、園によって方針はさまざま。
中には厳しいと感じる保護者もいるかもしれませんね。
ただ、先生たちも意味なく厳しくしているわけではなく、根本にあるのは〝子どもたちが楽しんでいるか〟という気持ちです。
子どもが生き生きとチャレンジしているのならば、見守ってあげてほしいです。その上で、もし子どもの隠れた本音に気付いたのならば、まずは先生に伝えてみて。
Q.「ダメ」などの強い否定の言葉掛けや、「早くしなさい」とむやみに子どもを急かすのはやめてほしいです
A.最初から「早くしなさい」と急かすことはなるべく言わず、子どもに予定が見えるよう段階を踏んで進めるなど、先生たちも工夫をしていると思います。
ママが見たその瞬間は「早く!」と言っているかもしれませんが、もしかしたらそれ以前に働きかけている可能性もあるので、気になったときは先生に事情を聞いてみてはいかがでしょうか。
「ダメ」も同様ですが、どうしてもいけない行為(噛みつきやひっかきなどの危険な行為)の場合は、回りくどく説明しても特に小さい子には伝わりづらく、危ないケースもあるので、短く強めに使うことはあるかもしれません。
Q.子ども同士のトラブルがあったとき、前後の事情を聞かずに頭ごなしに叱っているように思うことがあります
A.本当にそのようなことがあった場合は、叱った先生・叱られた子どもたちなど、関係者にまずは話を聞き、その上で園から保護者に報告をしていると思います。
ただ、そのトラブルが命に関わるようなことの場合は、頭ごなしに叱る可能性は否定できません。
もちろん、その後で子どもに事情は聞きますが、まずその行為をやめさせることが大切なので、そこは理解してもらいたいところです。
ママたちは園での様子を一日中観察しているわけではないので、どうしてもその場面を断片的に切り取って判断することが多いと思いますが、その断片の前後にも事情があるのかも…と少し想像してもらえるとありがたいです。私たち、こんなふうに思っています【園のホンネ】
■うれしかったこと
●卒園後の子ども達の様子を報告してくださったり、卒園児が保護者として園に戻ってきて、積極的に行事に参加してくれるなど、園を離れた後も縁をつないでいてくれることはうれしいですね
●園のことを理解し、「先生がいて安心です」「ずっと辞めないでくださいね」と言ってもらえたときは、先生になって良かったと思いました
●子どものことで相談を受け、それが幼稚園で成功したときに、一緒に感動して「子育ては一人じゃない」と共感してくれたとき
●ねぎらいや「ありがとう」という感謝の言葉・手紙をもらったこと
■悲しかったこと・困ったこと
●トイレトレーニングや箸の使い方、あいさつなど、園に“任せる”のではなく、家庭と園で協力して取り組むことだと理解してほしいです
●緊急時に電話がつながらなかったとき
●手紙を読んでもらえなかったり、提出物の期限を守ってもらえないときは少々困ります…
●お迎えの後、子どもから目を離しておしゃべりに夢中になっているママたちがいます。危険なので安全な場所に移動してからにしてほしいです
私たち、こんなふうに思っています【ママの気持ち】
■うれしかったこと
●子どものことで「気にしすぎかも…」と相談できずにいると、先生から「気になることがあったら何でも言ってください。いつでも待ってます!」と言われたとき。先生の懐の広さを感じた
●子どもの成長に合わせた対応をして、成功体験を味わわせてくれた。おかげで子どもも私も自信がつきました
●ささいなことでも小まめに報告してくれること。きちんと見ていただけているのだと安心します
●「お母さん、頑張りすぎないようにね」と気遣ってもらったときは涙が出ました
●先生の手を焼かせることが何度かあったので「いつもすみません」と謝ったら、「大丈夫、毎日楽しいですよ」と言ってくれました
■悲しかったこと・困ったこと
●以前伝えたことを忘れられて、同じことを何度も確認されました。
たくさんの園児・保護者がいるので仕方ないのかな…
●毎日ダメ出しが続いたときは、くじけそうになりました
●けがをしたことについて、何の報告も説明もなかったとき
●子どもの名前を間違えて呼ばれたときは悲しかったです
●「他の子はできることが、息子さんはできていないことが多くて」と比べるように言われたときは嫌な気持ちになりました
一緒に育ててくれて、ありがとう!ママの気持ち、伝えます
●子どもがやりたいことを引き出してあげてほしい
●笑顔で子どもに接してくれるとうれしいです
●先生が明るく楽しく保育してくれていることが一番!
●安全確保は徹底してもらいたい
●先生も休みをしっかり取って、人間らしく過ごしてほしいと思っています
●定期的に子どもの様子を教えてくれたり、親の不安や疑問を聞いてくれるとうれしい
●子どもの個性を大事にしてほしいです
イラスト/柴田ケイコ