子どもの姿勢、大丈夫?姿勢の悪さは脳が関係している!?
ママが気になる子どもの姿勢 Q&A
ごはんを食べる時、絵本を読んでいる時など、「背中をピンとして!」と言っても、なかなか続かない…。
あんふぁん読者の約8割が気になっている「子どもの姿勢」。その原因や対処法について、野井真吾さんに聞きました。
イラスト/杉浦さやか
お話を聞いたのは野井真吾さん
日本体育大学体育学部教授。子どものからだと心・連絡会議 議長。学校保健学、教育生理学、発育発達学、体育学を専門領域として、保育・教育現場の先生や子育て中の親の実感をもとに、子どもの“からだ”にこだわった研究活動を行っている。著書に『新版からだの“おかしさ”を科学する』(かもがわ出版)など
あんふぁんママに聞きました
※2020年2/5~3/3にWebで読者アンケートを実施。有効回答数461
Q.最近、姿勢が悪い子が多いって本当?
A.5年に1度、保育・教育現場の先生に子どもの“ からだのおかしさ”についての調査をしていますが、2010年は幼児・小学生ともに「背中ぐにゃ」が3位に。
なお、調査を始めた1978年は小学生の1位が「背中ぐにゃ」(44%)。つまり、姿勢は長年の問題と言えます。順位だけ見ると昔の方が注目されているように思えますが、割合で見ると昔は4割程度のため、今の方が注目度は高まっています。
「からだの“おかしさ”を科学する―すこやかな子どもへ6つの提案」から、2010年の調査
Q.姿勢が悪くなる原因は?
A.姿勢の良し悪しにはいわゆる「体幹」が関わっていますが、運動をしているのに姿勢が悪い子も多く見られます。
実は、脳の発達や生活習慣など、複合的な原因があるのです。
こんな姿勢は要注意
座っている時
・背中が曲がっている
・浅く座って背もたれに寄りかかる
・頬づえを付く
・筆記時に文字をのぞき込む
・脚を投げ出す
・足を組む
・机の上に突っ伏す
立っている時
・顎が出ている
・首が前に出ている
・背中が曲がっている
・おなかが出ている
・手がももの前にある
・膝が曲がっている
・脚が曲がっている
原因1背筋力の低下
人間が重力に逆らって姿勢を保つための筋力を「抗重力筋」といい、体を支える「体幹筋力」もその一つです。
そのうち、腰からお尻にかけての力を「背筋力」と言います。
小学校の体力・運動能力調査(スポーツテスト)の結果によると、年々背筋力が低下しています。
今の子は昔よりも体が大きいにも関わらず、筋力が低下し続けていることも分かっています。
原因2「元気の素」の不足
原因1で触れた「抗重力筋」をしっかり働かせるためには、体内の「セロトニン」が必要です。
セロトニンは、抗重力筋に緊張を与えるのに必要なほか、イライラを抑えたり、緊張をほぐしたりする「元気の素」。セロトニンは太陽光を浴びると増えるため、日中にしっかり太陽光を浴びないと、セロトニンが不足して抗重力筋が十分に機能しません。
原因3“そわそわ型”の脳
姿勢には脳の働きも影響しています。大脳の前頭葉はやる気や集中力、コミュニケーションなど人の心を司る部分で、「興奮」と「抑制」をコントロールしています。
働き方によって下の5つのタイプに分けられ、もっとも幼い「そわそわ型」から、最終的に活発型に変化すると考えられています。
ところが、最近その変化の速度が遅く、小学校に入学しても「そわそわ型」の子どもが増えています。そのため、集中力が続かずだらけたり、そわそわしてきちんと座れなくなったりするのです。
大脳前頭葉の5つのタイプ
● 不活発(そわそわ)型
興奮も抑制もともに十分育っていないタイプ(幼児タイプ)
● 興奮型
興奮も抑制もある程度の強さはあるが、興奮が優位なタイプ(子どもタイプ)
● 抑制型
興奮も抑制もある程度の強さはあるが、抑制が優位なタイプ(良い子タイプ)
● おっとり型
興奮と抑制の強さ・バランスはいいが、切り替えが苦手なタイプ(おっとりタイプ)
● 活発型
興奮と抑制の強さ・バランス・切り替えも上手なタイプ(大人タイプ)
便利な社会が姿勢にも影響している
長年、教育現場で子どもの〝心とからだ〞について調査してきた野井真吾さん。姿勢の悪さの背景には、社会が便利になったことも一因にあると言います。
「テレビゲームが登場して外で遊ばなくなったり、エレベーターやエスカレーターなどの移動手段が増えたり、社会が便利になった反面、日常的に体を動かすことが少なくなりました。その結果、身のこなし方が分からなくなり、〝からだのおかしさ〞を訴える子が増えています」
子どものころに身のこなしをつかむために大切なのが、「遊び」なのです。
「遊びは〝からだと心〞の素地を作ります。イヤイヤやらせるのはダメ。
正しい姿勢になるために合言葉は“光・暗闇・外遊び”
原因を解決することが姿勢を良くするための道。
そのキーワードは「光・暗闇・外遊び」です。
【光】朝、「元気の素」を作る
朝起きたらまず太陽光を浴びて、セロトニンを増やしましょう。セロトニンが分泌されると体内時計がリセットされて、生活リズムも整います。朝ごはんを食べることも大切です。
Point
● 窓のそばにベッドを置く
● カーテンは開けておく
※防犯や街灯が気になる場合は無理しないように
【暗闇】夜は明かりを落として「眠りの素」を作る
日中に増えたセロトニンは、夜になると眠りの素となる「メラトニン」を作ります。しっかり寝ることで生活リズムが整い、健康な体づくりにつながります。光による刺激が与えらるとメラトニンの分泌が抑えられるので注意しましょう。
Point
● 夜は部屋の照明を暗めにする
● 「明日は○時に起きる」と決めると、寝る1時間半前から眠るのに必要なホルモンが出る
【外遊び】公園遊びで脳に刺激を
「そわそわ型」から成長するには、興奮で刺激を与えることが大切。遊びでワクワクドキドキすると脳に刺激を与えられます。公園など外で遊べば太陽光も浴びられます。思いっ切り体を動かすことで、運動能力もアップ。散歩など歩くだけでもOKですよ。
Point
● 大きな声を出すことで深呼吸になり、心の安定につながる
● 滑り台やジャングルジムなど、同じ動作を繰り返す遊びは体幹筋力アップにも
※遊具の使用については十分注意してください
姿勢良く座るには、机・椅子選びも大切
多くのママが気になっていた「座る姿勢」。正しい高さの机と椅子を使うことも姿勢を良くするポイントです。
高さ調節や新たに購入するのが難しい場合は、クッションを挟むだけでも変わります。
机と体の距離も近付けましょう。
[椅子から机までの高さ] 座高の1/3の高さ
[椅子の高さ] 座面とひざの高さが同じで、ひざが直角に曲がっている
※座高とは、椅子に座った時の椅子の面から頭頂までの上体の高さのこと
野井さんから
思いっ切り遊んでよく寝る、当たり前の生活が正しい姿勢に
姿勢を良くする方法は、当たり前の生活を送ること。規則正しく・元気いっぱいに過ごせば、自然と姿勢も良くなります。大人にも効果的なので、親子で一緒にやってみると子どもも取り組みやすいと思いますよ。
また、椅子に座っていられなくて動き回ってしまう子もいますが、それは無意識に脳を「興奮」させようとしているのかもしれません。「今、変わろうとしているんだな」と思えばイライラも収まり、ゆったりと見守れるでしょう。
ごはんを食べる時、絵本を読んでいる時など、「背中をピンとして!」と言っても、なかなか続かない…。
あんふぁん読者の約8割が気になっている「子どもの姿勢」。その原因や対処法について、野井真吾さんに聞きました。
イラスト/杉浦さやか
お話を聞いたのは野井真吾さん
日本体育大学体育学部教授。子どものからだと心・連絡会議 議長。学校保健学、教育生理学、発育発達学、体育学を専門領域として、保育・教育現場の先生や子育て中の親の実感をもとに、子どもの“からだ”にこだわった研究活動を行っている。著書に『新版からだの“おかしさ”を科学する』(かもがわ出版)など
あんふぁんママに聞きました
※2020年2/5~3/3にWebで読者アンケートを実施。有効回答数461
Q.最近、姿勢が悪い子が多いって本当?
A.5年に1度、保育・教育現場の先生に子どもの“ からだのおかしさ”についての調査をしていますが、2010年は幼児・小学生ともに「背中ぐにゃ」が3位に。
多くの先生が子どもの姿勢の悪さが目に付くと回答しました。
なお、調査を始めた1978年は小学生の1位が「背中ぐにゃ」(44%)。つまり、姿勢は長年の問題と言えます。順位だけ見ると昔の方が注目されているように思えますが、割合で見ると昔は4割程度のため、今の方が注目度は高まっています。
「からだの“おかしさ”を科学する―すこやかな子どもへ6つの提案」から、2010年の調査
Q.姿勢が悪くなる原因は?
A.姿勢の良し悪しにはいわゆる「体幹」が関わっていますが、運動をしているのに姿勢が悪い子も多く見られます。
実は、脳の発達や生活習慣など、複合的な原因があるのです。
こんな姿勢は要注意
座っている時
・背中が曲がっている
・浅く座って背もたれに寄りかかる
・頬づえを付く
・筆記時に文字をのぞき込む
・脚を投げ出す
・足を組む
・机の上に突っ伏す
立っている時
・顎が出ている
・首が前に出ている
・背中が曲がっている
・おなかが出ている
・手がももの前にある
・膝が曲がっている
・脚が曲がっている
原因1背筋力の低下
人間が重力に逆らって姿勢を保つための筋力を「抗重力筋」といい、体を支える「体幹筋力」もその一つです。
そのうち、腰からお尻にかけての力を「背筋力」と言います。
小学校の体力・運動能力調査(スポーツテスト)の結果によると、年々背筋力が低下しています。
今の子は昔よりも体が大きいにも関わらず、筋力が低下し続けていることも分かっています。
原因2「元気の素」の不足
原因1で触れた「抗重力筋」をしっかり働かせるためには、体内の「セロトニン」が必要です。
セロトニンは、抗重力筋に緊張を与えるのに必要なほか、イライラを抑えたり、緊張をほぐしたりする「元気の素」。セロトニンは太陽光を浴びると増えるため、日中にしっかり太陽光を浴びないと、セロトニンが不足して抗重力筋が十分に機能しません。
原因3“そわそわ型”の脳
姿勢には脳の働きも影響しています。大脳の前頭葉はやる気や集中力、コミュニケーションなど人の心を司る部分で、「興奮」と「抑制」をコントロールしています。
働き方によって下の5つのタイプに分けられ、もっとも幼い「そわそわ型」から、最終的に活発型に変化すると考えられています。
ところが、最近その変化の速度が遅く、小学校に入学しても「そわそわ型」の子どもが増えています。そのため、集中力が続かずだらけたり、そわそわしてきちんと座れなくなったりするのです。
大脳前頭葉の5つのタイプ
● 不活発(そわそわ)型
興奮も抑制もともに十分育っていないタイプ(幼児タイプ)
● 興奮型
興奮も抑制もある程度の強さはあるが、興奮が優位なタイプ(子どもタイプ)
● 抑制型
興奮も抑制もある程度の強さはあるが、抑制が優位なタイプ(良い子タイプ)
● おっとり型
興奮と抑制の強さ・バランスはいいが、切り替えが苦手なタイプ(おっとりタイプ)
● 活発型
興奮と抑制の強さ・バランス・切り替えも上手なタイプ(大人タイプ)
便利な社会が姿勢にも影響している
長年、教育現場で子どもの〝心とからだ〞について調査してきた野井真吾さん。姿勢の悪さの背景には、社会が便利になったことも一因にあると言います。
「テレビゲームが登場して外で遊ばなくなったり、エレベーターやエスカレーターなどの移動手段が増えたり、社会が便利になった反面、日常的に体を動かすことが少なくなりました。その結果、身のこなし方が分からなくなり、〝からだのおかしさ〞を訴える子が増えています」
子どものころに身のこなしをつかむために大切なのが、「遊び」なのです。
「遊びは〝からだと心〞の素地を作ります。イヤイヤやらせるのはダメ。
やる気を持つことが発達につながるので、子どもの興味があることを楽しみながらやることが大切ですね」
正しい姿勢になるために合言葉は“光・暗闇・外遊び”
原因を解決することが姿勢を良くするための道。
そのキーワードは「光・暗闇・外遊び」です。
【光】朝、「元気の素」を作る
朝起きたらまず太陽光を浴びて、セロトニンを増やしましょう。セロトニンが分泌されると体内時計がリセットされて、生活リズムも整います。朝ごはんを食べることも大切です。
Point
● 窓のそばにベッドを置く
● カーテンは開けておく
※防犯や街灯が気になる場合は無理しないように
【暗闇】夜は明かりを落として「眠りの素」を作る
日中に増えたセロトニンは、夜になると眠りの素となる「メラトニン」を作ります。しっかり寝ることで生活リズムが整い、健康な体づくりにつながります。光による刺激が与えらるとメラトニンの分泌が抑えられるので注意しましょう。
Point
● 夜は部屋の照明を暗めにする
● 「明日は○時に起きる」と決めると、寝る1時間半前から眠るのに必要なホルモンが出る
【外遊び】公園遊びで脳に刺激を
「そわそわ型」から成長するには、興奮で刺激を与えることが大切。遊びでワクワクドキドキすると脳に刺激を与えられます。公園など外で遊べば太陽光も浴びられます。思いっ切り体を動かすことで、運動能力もアップ。散歩など歩くだけでもOKですよ。
Point
● 大きな声を出すことで深呼吸になり、心の安定につながる
● 滑り台やジャングルジムなど、同じ動作を繰り返す遊びは体幹筋力アップにも
※遊具の使用については十分注意してください
姿勢良く座るには、机・椅子選びも大切
多くのママが気になっていた「座る姿勢」。正しい高さの机と椅子を使うことも姿勢を良くするポイントです。
高さ調節や新たに購入するのが難しい場合は、クッションを挟むだけでも変わります。
机と体の距離も近付けましょう。
[椅子から机までの高さ] 座高の1/3の高さ
[椅子の高さ] 座面とひざの高さが同じで、ひざが直角に曲がっている
※座高とは、椅子に座った時の椅子の面から頭頂までの上体の高さのこと
野井さんから
思いっ切り遊んでよく寝る、当たり前の生活が正しい姿勢に
姿勢を良くする方法は、当たり前の生活を送ること。規則正しく・元気いっぱいに過ごせば、自然と姿勢も良くなります。大人にも効果的なので、親子で一緒にやってみると子どもも取り組みやすいと思いますよ。
また、椅子に座っていられなくて動き回ってしまう子もいますが、それは無意識に脳を「興奮」させようとしているのかもしれません。「今、変わろうとしているんだな」と思えばイライラも収まり、ゆったりと見守れるでしょう。