宿題をやらないわが子どうしたら?元小学校教諭に聞いてみた
私が小学校で1年生の担任をしているときに、保護者からよく相談されていたのが「宿題」に関してです。
小学校に入ったばかりのころや新学年になった初めのころは張り切って取り組んでいても、だんだんとやるのを嫌がったり、忘れてしまったり、後回しにしてしまったり…ということが出てくるものです。
今回は、宿題の対策と取り組みについてお話しします。
低学年の宿題は家庭学習の定着が目的
1年生の宿題は、ひらがなの練習、運筆、音読、数字の書き取り、簡単な計算練習といった内容が多いと思います。
高学年や中学生のようにやっておかないと授業についていけない…なんてことはなく、やってもやらなくても授業内で十分理解できる子がほとんどです。
では、「なぜ宿題が出されるのか」というと、家で勉強をする習慣をつけることが目的です。
学年が上がるにつれて、勉強の内容が難しくなり、予習や復習が必要になっていきます。そのときに家庭で学習することが当然になっていると、自分でどんどん勉強を進めていけるようになります。
この習慣は、一朝一夕には身につきません。そのため、低学年のうちに短時間から練習しておくのがいいとされています。なので、1年生の宿題の内容自体はそんなに難しいものではなく、自分の力でできるものが中心です。
宿題についてのルールは自分で決めさせる
宿題は先生との「約束」
「やりなさいと言わないと、一向にやらないんです」「毎日、宿題をやるやらないでケンカになってしまいます」
そんな相談をよく受けました。毎日そんなやり取りをしていると、子どもも大人もストレスになってしまいますね。
まず、「宿題は先生との約束である」ということを説明しましょう。
1年生は1週間先、1か月先…という見通しは立てるのが難しいですよね。とはいえ、社会に出れば書類やレポートなど定められた期限までに提出を求められます。
その練習として、「次の日までにこの宿題をやってくる」と先生と約束をし、それを守り、期限内に提出することを繰り返していくのです。
子どもの考えを尊重しましょう
次に、宿題についてのルールを一緒に決めます。
一方的に親が「ゲームは宿題が終わってから!」「宿題が終わるまでは遊びに行くの禁止!」などと決めてしまうと、子どもは納得していないので、そのルールを守ることを渋ります。そして親は守らせるために必死になり…ということになりかねません。
ルールは子ども主体で決めるのがいいと思います。「宿題はいつやるの?」と聞いて、子どもの考えを尊重します。
「おなかがすくとできないから、おやつを食べたらやる」「すぐ終わる宿題だから、夜寝る前にする」「今日は友達と遊びたいから、帰ってからやる」など、子どもなりに考えられると思います。
寝る前なんかにしたら、眠くなってできないじゃないか、遊びに行ってからだと忘れてしまうのではないかなど、大人は先を見通してやきもきしてしまうものですが、失敗も含めて、どんどん経験させましょう。
サポートは子どもから求められたことだけを
やる時間を決めるには、「〇時からやると時間を決める方法」と「〇〇が終わったら(帰ってきたら、夕飯が終わったらなど)とタイミングを決める方法」があります。
どう手伝ったらいいかを確認し、言われたことだけ手伝いましょう。タイマーをセットしておいてあげる、忘れていたら1回だけ声をかける…といったように。
宿題の時間になったら、親も近くに座って、一緒に過ごしましょう。子どもの勉強を見張るのではなく、自分も本を読んだり、家計簿をつけたり、これを機に資格の勉強をするのもいいですね。
もしやらなかったらどうなるかも経験させる
それでもやらなかったら、しつこく声をかけるのではなく、忘れたらどうなるかを経験させましょう。
先生に怒られてしまうかもしれません。休み時間にやるように言われるかもしれません。
放課後に残ってやることになるかもしれません。次の日の宿題に前日の分のものがプラスされるかもしれません。宿題を忘れたことでどうしようとドキドキするかもしれません。
一方でちゃんとやってきたクラスメイトは、先生に褒めてもらえるかもしれません。そして、休み時間は最初からお友達と遊べることでしょう。
そういったことを経験したり、先生と忘れないためにどうしたらいいかを話し合ったり、自分でも考えたりしながら工夫して、家庭学習の習慣がついていけばいいと思います。
できたときはそれを認める声かけを
「今日は自分から宿題をやることができたね」「ひらがなが丁寧に書けたね」「毎日やっているから、音読が上手になったね」など、できたことを認める声かけをしていくと、子どものやる気が引き出されると思います。
量が多いときは相談してみるのも
一生懸命やっているのに、宿題に時間がかかってほかのことをする時間がないというときは、その子にとって宿題が多すぎるのかもしれません。
家庭学習の目安は「学年×10分+10分程度」と言われていますので、1年生は20分ほどです。
遊びながらダラダラやっているわけではなく、頑張ってやっているのに、1時間も2時間もかかるようであれば担任の先生に相談してみてもいいと思います。
ただ、そのときに「先生の出す宿題の量が多すぎます!」と批判的に言ってしまうと、よかれと思って出している先生はショックを受けてしまいます。
そこで、「宿題を一生懸命やっているのに2時間もかかり、寝るのが遅くなってしまいます。どうしたらいいでしょうか」というように、困っていることを具体的に伝えてみてください。
当然ながら、宿題は子どもを苦しめるために出しているのではなく、学力をつけてほしいと願って出しているものです。
上手につきあって、家庭学習の習慣を身につけ、将来につなげていけるといいなと思います。
<文・写真:ライターHIDE>