現役高校生が語る!3年半の不登校が僕をエンジニアにしてくれた
「学校に行かなくても、自分の道はみつけられる」−吉開拓人(高校生エンジニア)
現役高校生でありながら、エンジニアとして「株式会社ウィンクル」というIT企業に勤務、「Gatebox」というホログラム映像を使ったコミュニケーションロボットの開発に携わり、数々のコンテストでの受賞経歴もある吉開さん。
http://vinclu.me/
株式会社ウィンクル
そんな吉開さんには、3年半ほどの不登校経験があります。
「当時の経験が今の自分をつくっている」と力強く語る吉開さん。
不登校になってから、エンジニアとして活動するまでの道のりをうかがってきました。
「学校に行く意味がわからない」―小さな疑問からはじまった不登校時代
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編集部: 現役高校生でありながら、エンジニアとしても活躍されている吉開さんですが、不登校の時期があったとお聞きしました。そのときのきっかけは何だったんでしょうか?
吉開さん: 何か大きなきっかけがあったわけではないのですが、一番の理由は学校の空気に窮屈さを感じていたことでしょうか。
中学に上がると急に受験に向けた詰めこみ教育がはじまって「何のために勉強してるのかわからないなぁ」と悩み始めたんです。
勉強やスポーツが特別出来る方じゃなかったので、気づいたらドラえもんの「のび太くん」状態になってましたね。
あとは、中学生特有の人間関係というか、学校の中に流れるギクシャクした雰囲気も苦手でどんどん嫌気がさし始めたんです。
編集部: 大きなきっかけがあったわけじゃなかったんですね。
吉開さん: そうなんです。特にいじめがあったとか家庭環境が悪かったというわけではなかったですね。
だけど、中学生になって半年経ったところで「1日、ちょっとずる休みしてもいいかな」って気持ちがもたげてきて。そこで学校をサボってみたんです。一度「えいっ」と休んじゃうと心のハードルが下がるんですよね。
そのまま1日、また1日と休む日が増えて、気付いたら中学1年の秋頃から不登校になってました。
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10272002458
編集部: そこから始まったんですね。
吉開さん:はい。16歳まで、約3年半ほど続きました。だから中学は最初の半年だけしか行ってないです。
編集部: どんなことをして過ごしていたんですか?
吉開さん: 最初はゲームばかりして過ごしていましたね。別にゲーム好きじゃなかったんですが、何がしたいのか思い浮かばなくて暇つぶしでやってました。
その時は家からぜんぜん外に出なかったので、親以外との交流もほとんどありませんでしたね。
編集部: ちなみに、そのときご両親との関係は?
吉開さん: 不登校になってから、仲が悪くなりましたね。
母は「休んだらいいんじゃない?」と言ってくれていたのですが、父は早く学校に行かせたいという気持ちが強かったみたいで。それが原因でよく喧嘩をしてました。
「父のおかげでとことん好きなことに向き合うことができた」
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編集部: そんな中から、エンジニアを目指すようになったんですよね?
吉開さん: はい。実は、エンジニアになったキッカケは、父の一言だったんです。
編集部: あ、そうなんですか!
吉開さん: そう(笑)
不登校になってからの1年間、ずーっとゲームをしてたら、父が「そんなにゲームをやるなら、自分でつくってみれば?」って言ったんです。
“ゲームをつくる”っていう言葉にすごく惹かれて、それを境にプログラミングの世界にどっぷりはまりました。
編集部: お父様の一言が今につながってるなんて、すごいですね。
吉開さん: ほんとですよね。
父には今でもとても感謝してます。
プログラミングを始めると言ってから、勉強に必要なものは惜し気なく与えてくれました。今までに専門書は60冊くらい買ってもらいました。
編集部: 60冊!?
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吉開さん: 「プログラミングを始めるぞ!」と決意してからは、父が買ってくれた本を片手にずっとひとりで勉強していましたね。
編集部:独学で勉強していたんですか?
吉開さん: はい。ずっと独学。自分のペースで勉強していました。編集部: ネットの掲示板やコミュニティで交流しながら勉強、という事も特になく?
吉開さん: そうですね。
情報収集のためにエンジニアのコミュニティを利用することはありましたが、他のプログラマーとの交流はしませんでした。
僕の場合は、周りに左右されず自分のペースで勉強を進めるのが合っていたんだと思います。
編集部: まっすぐ好きなことに向かえる環境にいられたということですね。
吉開さん: そうですね。そういう点でいうと、僕は不登校という環境を選べてよかったと思っています。
自分のやりたいことを自分に合ったペースで探求できたのは、不登校になったおかげだとおもっています。もし学校にそのまま通っていたらエンジニアも目指してなかったかもしれませんね。
編集部: お父様からのサポートや、ひとりで勉強できる環境…いろいろなことが重なってエンジニアとしての道につながっていったんですね。
吉開さん: はい、その中でも父のサポートは大きかったですね。
学校にいかなくても自分なりの道がみつけられたのは、僕がプログラミングだけに集中して取り組めるように環境を整えてくれたおかげだと思います。
自分にぴったりの高校に出会い、学校に通いながらエンジニアの道へ
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編集部: そのあと高校に進学されましたよね。高校へ行こうと思ったのはいつごろからなのでしょうか?
吉開さん: 実は、高校に行く年齢になっても、まだ学校には行きたくない気持ちの方が強くて1年ほどのんびりしていました。
だから僕、みんなより1年遅れて高校に入学してるんです。そのときは行きたいと思える高校がなかったんですよね。
編集部: という事は、逆に言うと今の高校は吉開さん自身が「行きたい!」と思えた…?
吉開さん: はい。行くならこの学校しかない!と思ってすぐ願書を出しました。
正直、この高校に入学してから人生が変わりましたね。
今通っている学校は、「プログラミングの授業が必修」という謳い文句に惹かれて入学を決めました。それに、通信制高校なので自由に使える時間が多いんですよ。学校側も、外で自由に活動することを推奨していました。
編集部: 自分のやりたいことにマッチした学びができるというのは、素敵ですね。
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吉開さん: うちの高校は面白い人が多くて、企業でインターンしている人、エンジニアとして働いている人や学生団体をたちあげる人…いろいろな人がいますよ。
高校に入ってから活動的な人たちと交流することも増えていって、そこからどんどん外でやっているイベントに顔を出すようになりました。
いま働いている会社に出会ったのも、この時期に参加したイベントがきっかけだったので、高校に入ったことは大きな転機だったなぁと思います。
編集部: なるほど。高校に入ってからの出会いが転機だったんですね。
吉開さん: 本当に、不登校の時代からは考えられないくらい毎日がガラリと変わりました。あの頃とは真逆で、家にいる時間はほとんどなくて、必ず外に出て何かをやってますね。
学校や仕事を通じて、自分が成長している実感があることが楽しくて仕方がないんです。
周りの人たちも自分のやりたいことに向かって目的を持って行動しているから、その環境の中に身を置けて良かったと思っています。
http://code.ac.jp
学校法人信学会 コードアカデミー高等学校
これからの社会に必要なのは、子ども達それぞれにあったサポート体制をつくること
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編集部: これから大学進学が待っていますね。大学生になってから挑戦したいことはありますか?
吉開さん: 僕には大きな目標が2つあるんです。
ひとつは、コンピュータサイエンスの技術を活かした、モノづくりのサポーターになること。
もうひとつは、不登校だったり学校での生きづらさを感じている子どもたちのための、教育支援の仕組みをつくること。
これまでの仕事を通じて、自分の技術で人をサポートできるようになりたいと思ったんです。
モノづくり自体が楽しくして仕方がないので、「誰かのアイデアをどう実現できるのか」を考えて実行できる人になれたらいいなと。そのためにもっと技術を身につけていきたいです。
子ども達の支援も、自分と同じような境遇の人たちをサポートするにはどういう仕組みが最適なのかを考えたいと思います。
学校教育を変えるとなると難しいかもしれないけれど勉強カフェのような溜まり場や塾みたいなものを作っていけばいいかもしれない…というようにアイデアを練っていきたいと思ってます。
編集部: 素晴らしい目標ですね。
そんな吉開さんがこれまでを振り返って、今、同じように不登校を経験している人に何を伝えたいですか?
吉開さん: 一旦不登校になると、なかなか戻れないというイメージって強いと思うんです。
でも不登校になってみてわかったんですが、出来ないことってそんなにないんですね。
僕の他にも同じような環境から自分のやりたいことを見つけて活躍している人はたくさんいます。
とくに今やりたいことがないという人には、少しでも興味のあることにはどんどんチャレンジしてほしいです。三日坊主になってもいいので、興味をもったらまずやってみることです。
僕の場合は、色々と経験することで本当に自分に向いていることが見えてきたので、思い切ってチャレンジしてみるというのはいいのかもしれません。
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吉開さん: それと、お父さんお母さんには、その子が思いっきりチャレンジできる環境をつくってもらいたいです。
父が一生懸命に取り組めるような環境を整えてくれたから今の僕があると思っています。
だから、興味を持ったものを学ぶためのサポートをしてもらえれば、安心して自分の道を突き進むことができるんじゃないかなぁと思うんですよね。
編集部: 最後に、吉開さんの考える「これからの学校や社会で必要だと思うもの・変えていきたいもの」を教えてください。
吉開さん: 今ある学校に適応できなかったら失敗、という、ひとつのレールに子どもを乗せていくような教育観が変わっていけばいいなと思っています。
好きな事には夢中になって取り組めますし、仕事にできるくらい極められるようになると思うんです。
そういうふうに、型にはまった勉強以外にも子どもたちそれぞれの好奇心や意欲を活かせる場所をつくってあげれば、自立して社会で活躍する人材が育っていくんじゃないかと考えているんです。だから、学校の中に生きづらさを感じている人がいたら、その人たちの悩みに寄り添いながら、それぞれの「なりたい・やりたい」を実現できるような体制作りが必要だと思っています。
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吉開さんは終始、物腰柔らかな受け答えをしつつも、自分のなかで育てた価値観を真正面から伝えてくれました。
会話の中で印象的だったのは、お父様への感謝の言葉が何度も出てきていたところ。
「本人にあった支援は何か」を考え続けられてきたからこそ今の活躍があるのだと思わずにはいられません。
「学校に行かない」という選択から、不登校である時期を「自分にあった生き方を探す時間」として向き合ってきた吉開さんだからこそこれからの社会に必要なサービスを生みだしてくれそうだと、そう思わせてくれるほどに芯をもった方でした。
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