協調性が無いと指摘された息子。友達と遊ばない理由を聞いてみた
みんなの遊びに入らない息子に、保育園の先生は…
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アスペルガー症候群の息子(ハル)は現在小学1年生。今では、友達と鬼ごっこなどにも喜々として参加していますが、保育園の頃は集団に入らずに、よく1人で数字を書いて遊んでいました。
保育園の担任の先生は、その様子を見て、息子の友達との関わり方が独特かつ積極性に欠けること、それを問題視しているようでした。気になった私は、息子の普段の様子を聞いてみることにしました。
私「お友達と遊ぶことを息子が拒絶する、ということですか?」
先生「そうではないのですが、遊びに誘ってもみんなと関わりたがらずに、1人でずーっと数字ばかりを紙に書いているんです」
私「それがお友達や先生方のご迷惑になっているのでしょうか…?」
先生「いいえ。ただ、もしかしたらハル君は発達障害の特性だけではなく、何か不安を抱えているのではないかと心配で…」
後日、息子とほぼ同時期に、アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)の診断を受けることになる私には、このとき先生がおっしゃったことの何が独特かつ消極的なのか、イメージすることができませんでした。
「みんなと遊んでるの?」息子に聞いてみることに
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その後、先生がおっしゃった「息子の不安」がわからなかった私は、息子に直接聞いてみることにしました。
私「みんなと保育園で遊んでる?」
息子「ハルは一緒に遊んでいるよ」
私「え?どういうこと?先生は『電車ごっことかになると加わらない』って言ってたけど…」
息子「電車ごっこの電車には入らないけど、同じ部屋にいて楽しいって思ってるもん」
私「なるほど。
でも先生やほかの人はそういうのを“一緒に遊んでない”って思うみたいだよ。じゃあ、聞き方を変えようか。みんなと同じように電車の輪に入らないのは、何か理由があるのかな?」
息子「見てるのは楽しいけど、入りたいって思わないから。だって、入らなくちゃいけないわけじゃないでしょう?」
私「うん、そうだね。私もそう思うよ」
息子「じゃあどうして先生はそんなことを聞いたのかなあ?」
私「ハルが何かを心配していて、仲間に入りたくても入れないんじゃないかって心配だったみたい」
息子「あ、そうなんだ。でもね、別にハルがいなくてもみんな楽しそうだからね、ハルは別の遊びをしながら見ていたいんだ」
そのさっぱりした口調からは、「仲間に入りたいけれど入れない」と嘆いているようには感じませんでした。
翌日、先生への不信感は増すことに
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息子に本心を聞いた私は、翌日先生に大まかな会話の内容を伝え、私自身はこの現象を息子らしい「個性」と捉え、のんびり見守ることにしました。
しかし今度は、担任の先生より「協調性がない」という視点で問題視されました。
これまでも、息子の意志をできるだけ尊重してきた私は、「みんなと仲良く一緒に遊びなさい」などの無理強いをするつもりはありません。
この会話の後、先生との価値観の違いを感じた私は、ストレスから次第にノイローゼ気味になっていったのでした。
年長になり、担任の先生が変わったことで対応にも変化が
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新年度が始まってからしばらくは、保育園の先生方全員に対し、まだ不信感で一杯だった気がします。
そのため、新担任のY先生に「今日、みんなでごっこ遊びをするときに、ハル君を誘ったのですが…」と話しかけられたときは、思わず身構えてしまいました。
私「…何か問題でもありましたか?」
Y先生「いえ、そうではなくて、誘ったんですけど、ハル君は加わりたくないみたいで、ずっと数字を書いていたんです」
ああ、また「協調性がない」とのご注意を頂くのかな…とうつむきかけたところ、
Y先生「ハル君、すごい集中力ですね!」
まさかの褒め言葉が。
私「へ…?」
Y先生「一緒に遊べなかったのは残念なんですけど、周りが賑やかなのを気にせずに、一所懸命に数字を書いているハル君を見て、すごいなって思ったんです!好きなことにそうやって取り組めるハル君、素敵ですよね!」
邪気が一切ないY先生の笑顔に、毒を抜かれた私は、「あああありがとうございます。ここここれからもよろしくお願いいたします」と、どもりながら頭を下げてしまいました。
それからもY先生から、協調性の無さを問うような言葉を聞くことは、一切ありませんでした。
しばらくして、みんなの遊びに自ら参加した息子。その参加の仕方が息子らしく…
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ある日のこと、「今日はハル君も電車ごっこに参加したんですよ!」とY先生からご報告がありました。
いつものようにY先生が「一緒に遊ぼう」と声をかけて下さってもそれに乗らず、黙々と紙に数字を書き続けていた息子。
今日も見学だけで、遊びには参加しないのかと思いきや、息子は立ち上がってお友達に近づき、数字を書いた紙を配り始めたのだとか。不思議そうにしているみんなに向かって、息子はポツリ。
「電車に乗るには切符がいるし、切符を買うにはお金がいるでしょ?」
そう、造幣局と切符を売る駅員さんの、二役を買って出たのだそうです。
驚きながら話を聞いた私は、息子は自分なりの関わり方を模索していたのかもしれないのだと気づいたのでした。
息子が大事にしたかった思い、それは
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その日、家で息子に「普段はどんな心境で、みんなが遊ぶ様子を見ているの?」と質問してみました。
息子「(自分なりの関わり方を)ずっと考えていたわけじゃないけど、切符とお金を作る役を思いついたときは、嬉しかったよ」
私「嬉しかったってことは、電車ごっこに加わりたいって気持ち、少しはあったの?」
息子「うん。
でもね、運転士さんやお客さんにはなりたいって思えなかったの。それなら見てる方が楽しいから」
私「そうか」
息子「…あのね、ハルはね、数字を書くのが大好きなんだよ。みんなが電車ごっこをするのと同じぐらい大好きなんだと思う。それはどっちも同じぐらい大事なことだと思ってたんだよ。だから、電車ごっこに入らないで数字を書いていることは良くないみたいに言われるのは、本当に嫌だったんだ」
私「そりゃそうだよな、どっちが上でどっちが下とかないもんね」
息子「でもね、Y先生はそういうのを言わなかったんだよ。ハルが数字を書くのを『いいよ』って言ってくれてたから、ずっと数字を書いていられたし、だからお金と切符を作る役を思いつけたのかもしれないなあ」
相手の「好き」を尊重し、自身の「好き」も尊重されたいと願っていた息子。
そんな彼が自分なりの関わり方を発見できたのは、Y先生が息子を尊重し、見守って下さったからでしょう。
子どもの「やりたい」を尊重することで見えてくる可能性
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学校などの集団生活で協調性が求められるのは、ごくごく当たり前の話だと、私は思っています。
とはいえ、右向け右に従えない子どもにも思いがあり、言い分があるのです。
それを無視して「みんなと同じようにしなさい」と押し付けられると悲しくもなるし、場合によってはできることも意固地になって、やらなくなるかもしれません。
自分の過去を振り返ると覚えがあります。
「できない」「やりたくない」の裏側にある「できる」「やりたい」を尊重することで、欠如しているように見えていた協調性が意外な形で発揮されることもあるのだな、と感じられた電車ごっこの一件。
それを思い返すたび、Y先生への感謝の気持ちが、私の心に湧き上がるのでした。