何度言っても伝わらないのはなぜ?中学生の息子に理由を聞いたら…
聞くことが苦手な息子が考えた、コミュニケーション方法
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10417000495
アスペルガー症候群の息子は、コミュニケーションにおいて、いくつかの困難を抱えながら生きています。言語は達者ですが「話す」ことの円滑さに相対して、「聞く」ことが苦手。
だからこそ、「人の話を聞かない」「空気が読めない」などと言われ、同級生や先輩、年下の相手に至るまで、息子は上手く関わる事ができず、時々衝突します。
子どもだけではありません。相手が大人でも、コミュニケーションが上手くいかないことがあるのです。
ある日息子が自慢げに、説教の受け方を教えてくれたことが、あります。
「大人が怒って説教を始めたら、タイミングよくうなずいて、時に『はいっはいっ』と相槌を打つ。相手の言葉が切れたところで、素早く謝る。
僕の経験だと、この方法が1番早く説教が終わる。」
息子は、説教を聴いて反省するのではなく、いかに早く説教を終わらせるかを、考えていました。
これまでのお説教は、半分しか届いていなかった?
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11038021183
「大人の説教は雑音にしか聞こえない。不快な音にしか聞こえないから早く終わらせた方が良い。」こう考える息子は、決してふざけている訳ではありません。
ガミガミくどくど言われても、頭に入っていかないようなのです。息子にとって説教する先生の声は、雑音があまりに多すぎるために、「伝えたいこと」が届かないのです。
息子は、「何もかも一生懸命聞くと、頭がこんがらがってパニックになってしまうけど、聞かずに相槌と謝るタイミングを計るだけにしたら、耐えられるようになった」と教えてくれました。
「お母さんのお説教も、雑音にしか聞こえないの?」と思わず聞きました。
「お母さんの説教も半分は雑音だけど、お母さんはちょっと違うんだ。
聞き流している僕の耳に、突然スコンと言葉が入ってきて、思わず納得してしまうんだよ」
母親として息子の発見に感心しつつ、自分の言葉も半分は雑音だったかと思うと、少し複雑ではあります。
「お説教の内容に納得してしまう割には、『うーっ』って唸ったり、泣いたりするよね?どうして?」と聞くと、「言われたことを脳が考えようとしてるのに、それも待たずに次々と言うから、混乱しちゃうんだよ」と息子。
息子は注意をされる場面で、「ふてくされている」とか「返事がない」と思っていましたが、実は混乱しているだけだったんですね。妙に納得してしまいました。
息子にとって嫌な説教というのは、厳しさではなかった!
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11021002955
説教の話で1人、思い出した先生がいます。
中学に入った息子が「すごく良い先生なんだよ」と教えてくれたのですが、その先生の評判を聞いて驚きました。学年で1番厳しい先生だったからです。
こんなに厳しい先生を気に入っているのはなぜだろう?不思議に思って聞いてみました。
「先生は厳しいよ、でも正論しか言わない。どんなことを言われても納得してしまう。だから何を言われても大丈夫。僕がキライなのは、結論を出さずに話がどんどん変わっていく人。
最後まで一生懸命聞いても、最終的に何が言いたいのか分からない人の話は、説教じゃなくても、雑音にしか聞こえない。」
息子が苦手なのは怖い人ではなく、わかりにくい人だったんだ!目からウロコが落ちる思いでした。
「話しているうちに、あちこちと話題が変わったあげく、明確な結論が出ない」といった会話は、息子を最も混乱させるのだと、思っておいたほうが良さそうです。
息子が「お母さんの話も半分は雑音」と言った意味の謎が少し解け、気を付けるべきポイントも、把握できました。
「わかりやすいこと」が成長につながる
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11017013692
この先生、実は音楽の先生です。
この点も私にとっては意外でした。小学校時代、音楽といえば息子が苦手な教科の1つでした。特に合唱は苦手で、毎回のように脱走!その様子から、この子は音楽に親しむことは無いだろうと思っていたのです。
しかし息子は、この先生が結成した合唱団に率先して入り、部活と掛け持ちしてまで、厳しい練習に参加しています。
先生からは音感の良さを評価され、見事パートリーダーを務めるまでになりました。小学校時代からは、とても考えられない変貌ぶりです。
それには理由がありました。
「小学校のとき、合唱は究極の雑音だった」とも話していた息子。
そんな彼が「先生は、音が外れることを許さない。練習をしているうちに合唱は、雑音ではなくなっていった」と笑顔で話してくれました。
これは先生の、ブレずに首尾一貫した指導方針が、導いて下さったからだと理解し、感謝しています。
先生のわかりやすい伝達方法、コミュニケーションの方法が息子の感性と呼応して、良い結果が生まれました。
この成功体験は息子の成長のために、大変意味がありましたし、私自身も気付かされる部分の多い出来事でした。
雑音を減らすのは簡単じゃないけれど、できることはある
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11038021190
それでも、わかりやすく話すのはまだ難しく、残念ながら未だに私の小言の半分は雑音のようです。感情的にならず、少ない言葉で伝えればよいのですが、これがなかなか難しいのです。
私の話は時々「わかりにくい」と知ってから取組んでいるのは、感情のまま、言葉のシャワーで押しきろうとはせず、まずは親子でクールダウンを心がけることです。
落ち着いたら、こちらから素直に謝り、息子の中に、わだかまりが残らないようにしています。
ゆっくり話すと、大人側に「これは別にガミガミ言うほどのことじゃなかった」という気付きがあります。
冷静であれば、大切なことだけを端的に話す事ができますし、何よりも「この子は受信より発信が得意だった」と、こちらも聞く態勢へ、シフトする余裕が生まれます。
息子とのやり取りで、「聞き上手は話し上手」だと、私自身が気付かされました。とはいえ親だって人間!
雑音を無くすことは難しいけれど、ひと手間かけて「わかりやすく」する工夫はできる。このひと手間、意外と親子の絆を深めてくれるかもしれませんよ。