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【専門家が解説】「いじめ」60万件。今、子ども達はその事実をどう捉えているのだろう

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日本全国で、今この瞬間も60万件を超えるいじめが存在している

【専門家が解説】「いじめ」60万件。今、子ども達はその事実をどう捉えているのだろう

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「いじめから子どもを守ろうネットワーク」東京代表の栗岡まゆみです。

私は、いじめで苦しむ子どもたちの心と命と未来を守るために、長らくいじめ問題の解決に関わっています。

「昔のいじめと、今のいじめは違います」と大人たちにいじめの実態を語り、「いじめって何?」「将来の夢は何?」と子供たちに問いかける『いじめ防止授業』を行うようになり、8年が過ぎました。

その中で、「いじめは本当に解決できるの?」というお声を多くいただきます。
私の答えは「必ず、解決できる」。

そのためには大人が現代のいじめの実態を知り、身の回りでの早期発見の仕方、いじめの解決方法を学び、予防策を知ることが必要です。

今回からシリーズで「いじめ」について皆さまと一緒に学び、予防と解決策を考えていけたらと思います。

現代のいじめは、大人が知っているものと違う

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講演では、「今のいじめは、昔のいじめとは全く違う」ということを保護者の方々にお話しています。


「え、どんなふうに?」と思われる方も多いのではないでしょうか。

例えば、昔よく見ていたテレビ「ドラえもん」に登場するいじめっ子のジャイアンは、力が強くて、体格もいい。
のんびり屋ののび太君を、遊び場でからかったり力づくで言う事を聞かせていじめます。

けれど話しの終わりには、仲直りをして一緒に野球をする。そんなシーンが印象的ですよね。とても分かりやすい、いじめっ子といじめられっ子の描かれ方です。

ですが、現代の子ども達の間で起こるいじめは、こんなシーンとは全く違います。

ある日突然、些細な事でいじめが始まり、1対集団で、ターゲットを変えながら、大人の見えないところでの、無視・暴言・ネットいじめ等が繰り広げられます。
陰湿で表に現れにくいのが特徴です。

いじめ防止推進法が2013年に施行されたが、現状は変わらない

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子ども達に無限に宿る可能性を伸ばすのが、教育の力であり、反対にそれを阻む悪しき果実の1つが、いじめ問題だと考えています。

大津のいじめ事件を契機に、2013年に「いじめ防止対策推進法」が制定されました。
これは、国をあげていじめ防止の歴史が大きく動いたように見える出来事でした。

(いじめの禁止)
第四条児童等は、いじめを行ってはならない。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1337278.htm
けれども、いじめ認知件数は減ることはなく、私が学校で出会ったのは大津事件とさして変わらないような、想像を超える犯罪レベルのいじめに苦しむ子どもたちの姿でした。

5000人を超える子ども達への出張授業、必ず聞く2つの質問

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今年も、児童館・学校でのいじめ防止授業を行いました。これまで、約5000人を超える子ども達といじめ防止授業を行ってきました。


その授業で、私は必ず次の2つの質問をしています。

「いじめって何?」
「将来の夢は何?」

東京のある学校の小学1年生の女の子が、手を挙げてこう答えてくれました。
「はーい。いじめって、汚いゴミ箱に入れること」

別の学校の小学5年生の男の子はこう話してくれました。
「はい。今僕はいじめられています。死ね。うざい、と毎日言われています。
このクラスの皆からです」

この発言に生徒たちはシーンと静まり返りました。その様子を担任の先生は驚いて見ているだけでした。

ある東京の中学で、1年から3年まで500人に、学校のご協力のもと、事前アンケートを取っていただきました。子ども達の答えをここでご紹介しましょう。

「いじめって何?」

・命に関わること
・心も体もダメージをもたらすもの
・学校に一番あってはならないもの
・一対多での暴力・暴言・無視
・いじめている本人には楽しいゲーム
・いじめられている本人には最悪のゲーム
・何の価値もない、何も生み出さない、ちっぽけなもの
・人の無関心な心が生み出す残酷なもの
・人から幸せを奪うもの
・嫌がらせ
・孤立させる
・一人ぼっちでまわりが信じられない
・自殺につながる
・見ていても何も言わない人も、いじめている人と同じ
・弱い人間がする事。最低な行い。人権を侵害する事
・集団VS圧倒的少数

このリアルな答えに、私は驚きました。
これは中学生だからでしょうか?いいえ、そんなことはありません。
小学生に聞いても同じような答えが返ってきます。

毎年8月に都内の児童館で小学1年~6年まで、いじめ防止学習会を開催していますが、この時も無邪気な表情で話すシビアな現実に驚かされました。

「はーい。人の心を傷つけることです」
「うざい。キモい。死ね、とか言います」
「仲間に入れない事です」

文部科学省の調査では、教育委員会から文部科学省に報告があがる、いじめ認知件数は、8万件を超えています。

ですが、その水面下で起きている報告にあがらないいじめは、その数十倍、約60万人にものぼるといわれています。

まるで、その一端を垣間見るような教室でした。


夢を描く力は人間が持つ才能。心を傷つけたら夢は描けなくなる

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子ども達に、「いじめって何?」と聞いた次は「将来の夢は?」と問いかけます。

そして十人十色の様々な夢を教えてもらった後に、『13歳からの道徳教科書』(育鵬社)と言う本にある大リーガーのイチロー選手の“子供の頃の夢”の部分を朗読しています。

最初はイチローという名前は出さずに「ここで、皆と同じ小学生の時に、ある生徒が描いた作文を読みますね。…さて、誰だかわかるかな?」と問いかけます。
「はーい!イチロー!」とすぐに答えが。
「えー!イチロー!?」と他のみんなからはどよめきが起こります。

そして、私は続けます。

「あのね、“夢”を描けるというのは、人間だけが持っている才能なんだよ。

夢を描いて、その夢に向かって一生懸命勉強する、努力をする。それは人として一番尊敬される行為なんだよ。
夢を諦めないで努力すれば、必ずいつか実現する。今、語った夢を諦めないで。自分の夢だけでなく、お友達の夢も忘れないでね。」

「なぜ、夢が描けるかわかるかな?それは、人間に一番大切な“心”があるから。
心があるから、夢を描く力や夢に向かう力が生まれるんだよ。」

そして、最後にこう伝えるのです。

「なぜ、いじめがよくないか、わかるかな?
いじめられて心が傷ついたら、夢を描く力がなくなるんだよ。自分の夢が大切なように、お友達の夢も大切。
だから、夢を壊すいじめは、絶対にいけないんだよ。わかった?」

私は、「教育が人間を創る」という言葉を心から信じています。

そして子ども達は本当に、目をこちらに向けて一直線に聞いています。真剣に聞いてくれます。

子ども達の夢の向こうには、一人一人の無限の可能性が広がっています。それは一人の夢ではなく、国家の夢であり、世界の夢でもあります。

夢に向き合う時は、未来は明るいと確信できる時でもあると考えています。

夢を見る力を無限に伸ばすものが教育の力であり、それを阻むものが、いじめ問題であると思います。

小学校に入り半年で子ども達はいじめを実感する。大人は何ができるのか

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桜が咲く4月に、幼稚園を卒業したばかりの子ども達が、夢と希望を持って、自分の体より大きなランドセルを背負い、真新しい教科書や文房具を入れて、小学校へ入学します。

それからたった半年しか経っていなくても、何かを訴えるような凛とした目で、いじめとは「汚いゴミ箱に入れられること」と答える子どもがいる、それが現在の教育現場の実態です。

そんな場面に出会うと、この人生すべてをかけて教育をつくり変えたい!いじめから子どもの心と未来を守りたい!という魂からの疼きがおきるのは、きっと私だけではないはずです。

もちろん、その子の保護者も、担任の先生方も、そして、これを今お読みになっている大人の皆さんも同じだと思います。

いじめに向き合うことは、“今”という時を生きる大人の“未来”への責任の表れではないでしょうか。

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