発達障害の診断は必ず受けるべき?医療でもできること、医療でしかできないこと―児童精神科医吉川徹(2)
発達障害のある人のため、医療機関ができること
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2016年現在、多くの地域で、発達障害の診療に携わっている医療機関は著しく不足しています。医療従事者、それを利用する他領域の支援者、時には本人やご家族も、限られた地域の医療資源をできるだけ効率よく活用することを考える必要があります。
発達障害のある本人や家族には様々なサポートが必要です。その中には医療機関が提供できる、提供しているものもたくさんあります。その代表的なものを挙げてみます。
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けれどもこの中で、どうしても医療機関でなければ提供できない支援というのは、実はあまり多くありません。
そして、医療以外でも提供できる支援は、実は他の領域の支援者の方が、有利であったり、得意であったりすることも多いのです。
医療でなければできない発達障害支援は何か
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医療でなければ提供できない支援の一つは「診断」です。一方で、広く診断といったときに、その人に発達障害の特性があるのかどうか、発達障害の特性を考慮に入れた支援が有効であるのかどうかという「見立て」は、必ずしも医療機関のみでなされているわけではありません。
むしろ本来はこうした見立ては、保健、教育、福祉などの領域でも必要になってきますし、仮に医学的診断を後に受けるとしても、それより前から見たての作業が始まっていることが望まれます。
また、「見立て」に限られた時間しか充てられない医療機関に比べて、生活を共にする時間が長い人は、そもそもとても有利でもあるのです。ここは医師の間でも見解が分かれるところなのですが、自分は発達障害のある人すべてが、医療による診断を受ける必要は必ずしもないと考えています。
ただし見立てや診断において、どうしても医療機関が必要になる場面があります。
それは、
・患者の困りごとが、発達障害以外の他の疾患から起こっている可能性を見極め、排除する必要がある場合
・患者の困りごとの背景にある疾患を診断する必要がある場合
上記の2点です。特に生物学的な検査が必要である場合、医療抜きにこれを行うことはほぼ不可能です。