学習障害の息子の中学校選び。配慮をお願いするも、現実は厳しく…
授業の内容は理解できるけど、文字を書きたがらなかった息子
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1年ほど前に発達障害の診断を受けた息子は、現在13歳です。
小5から不登校となった息子ですが、小学校の学校生活、主に学習面の道のりは平坦なものではありませんでした。
担任の先生方に「授業中に質問するとしっかり答えて内容は理解しているようなのですが、テストに何も書かないので点数がつけられません」と、毎年のように言われていました。
また、先生の説明を聞きながら板書をするのが苦手だったのでノートをまったくとらず、息子は先生に何度も注意を受けたそうです。
他にも息子は直線がうまくひけなかったり、コンパスで正確な丸が描けなかったりしてイライラしていることもよくありました。
私自身は、息子は少し不器用で意地っ張りなところがあるからしょうがないなあ…という程度にしか思っていませんでした。
息子の学習面での困難さは本人の性格の問題だと思っていたのです。
発達障害の診断をきっかけに、息子が苦しんでいた本当の理由が分かった
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学校での困難を解消できないまま、息子は小学5年生から全く学校に通えなくなりました。
そしてその後、専門家に相談し、息子は発達障害と診断されました。息子が12歳のときのことです。
診断をきっかけに、小学校での困りごとや学習上の困難さを明確に認識した私は、診断をしてくれた発達障害専門の児童精神科で「視覚認知」の検査をしてもらいました。
視覚認知とは、目で見たものを正しく理解する力のこと。視覚認知に障害があると、文字を読んだり書いたりするのがうまくできない、図形の理解がしづらい、手先の細かい作業が苦手、距離感がわからない…などの困りごとがあります。
学校生活の中では、漢字の形がなかなか覚えられない、うまく字を書けない、図形が正確に理解できない、ボールなどの道具を使う競技が苦手…などの困りごとが起こりやすくなります。検査の結果、息子にはこの視覚認知に障害があることが分かりました。
あとで息子に聞いてみたところ、
「漢字の練習をしてみたけど何回やっても形が覚えられなかった」
「自分がイメージしたところに線を描こうとしても、どうしても描けないから腹が立つ」
「書きたいことはいっぱいあるけど、字がうまく書けないから進まない。
書かないでいると先生に怒られる」
と話してくれました。本人の努力が足りないせいではなかったのに、息子の困難を性格のせいだと思い込んでいたことをとても申し訳なく思いました。
そして始まった、息子の進学先探し
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医師は「この年齢だと療育で治していくのはもう難しいので、板書にICT機器を使えるとよいのですが」という提案をしてくれました。
そこで私は、不登校であり、かつICT機器の使用が必要な息子を受け入れてくれる中学校を探すことにしました。
「自由な校風」「少人数制」「個性を大切にしてくれる」「面倒見がよい」といったキーワードで、いくつかの私立中学をピックアップし、説明会に行ったり電話やメールで問い合わせをします。
そしてまずは「そちらでは不登校の子どもを受け入れていただけますか」と聞いてみて、「今、不登校でも中学から頑張ってくれればいい」と言ってくれる学校を絞り込んでいきました。
不登校でも受け入れてくれるという中学校をピックアップしたら、それぞれの学校に実際足を運んで個別相談で詳しく話をする、という段階になります。
入学した後に学校と息子との間でお互い「こんなはずじゃなかった」となることを避けるため、学校へ
●小5から全く学校に行けていないこと
●視覚認知に障害があるので板書用のICT機器を使わせてほしいこと
を話しました。
私の説明がいけないの?ルールや協調性を重んじる学校の方針に私は…
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ところが、候補にあげていたすべての私立中学でICT機器を使うことは認められない、という返事が返ってきました。
理由として出たのが以下です。
・みんなが手書きでノートをとっている中、1人だけ機械を使わせるわけにはいかない
・他の子との間に不平等感が生まれる
・テストのときに機械を持ち込まれては困る…
中には「入学するまでに字の練習をして、書けるようにしておいてください」という学校までありました。
この言葉を聞いたとき、教育の現場には障害への理解がこんなにないんだ…と、本当にがっかりしてしまいました。
それでも気持ちを立て直して、「目の悪い子がめがねをかけたり、足の不自由な子が車いすに乗ったりするのと同じで、字が書けないのは障害であって練習してできることではありません」と、食い下がりました。
しかし学校には「めがねや車いすとは違います」と、けんもほろろに言われ、全く相手にしてもらえませんでした。
今思えば、理解のない相手にいきなりICT機器の話をした私のやり方は間違っていたのかもしれません。
でもその時の私は、障害による苦労をわかってもらえないやりきれなさとともに、母親として、息子のために何もできない自分が悔しくて仕方ありませんでした。
障害を理解してもらうことは難しい。しかし、希望はゼロではなかった
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しかしその一方で中には、
「機械を使うのは無理ですが、本人ができるだけ過ごしやすいようお母さんと協力しながら工夫していきましょう」
「授業時間内に課題が終わらなかったら、配慮するようにしましょう」
と言ってくれた中学もありました。もし合格していたなら、こんな中学校に行かせたかったと思います。
現在息子は、地元の公立中学に在籍してフリースクールにお世話になっています。
中学・高校は、「書く」という作業がとりわけ多い年代です。最近、公立の大学では受験の際に視覚認知障害への配慮をしてくれるところもあると聞きますが、一般的な理解はまだまだと感じています。
「字を書くことが苦手」というだけで子どもの可能性が狭められてしまうのは、子どもにとっても社会にとっても、とてももったいないことだと感じています。異質なものを排除するだけでなく、その中には大きな可能性があるのだと、学校や社会にも気づいてもらえるよう、私にもできることをしていきたいと思います。