怒るのは悪いことじゃないんだ!アスペルガーの娘を変えた1冊の本
怒りっぽいアスペルガーの娘が、ある日私に聞いてきたこと
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現在小学3年生の娘は、アスペルガー症候群及びADHDの診断がおりています。
アスペルガーの特徴である「怒りっぽさ・キレやすさ」は娘の中にもしっかりと息づいており、幼稚園の頃からずっと親子でアンガーコントロール(怒りの感情コントロール)に取り組んできました。
ある日、寝る前に騒いでいた息子に、本を読んでいた娘が「もうちょっと静かに楽しんでくれるかな!?」と声をかけました。そして、その後で私に「ママ、今の言い方はどうだった?」と聞いてきました。
私「う~ん、そうねぇ。80点っていうところかな?語尾に『〇〇してくれるかな!?』ってつけると、それが正しいからそうするべきだ!っていう感じが出ちゃうでしょ?そうすると、『なんだよ!』ってムッとする人も多いと思うの。」
娘「でも、集中して本を読みたいから静かにしてほしいんだもん。」
私「『本を読みたいから静かにしてほしい』っていう自分の気持ちを先に伝えたらどう?その後で、『だからこうしてほしいな』ってお願いをするんだよ。相手に『こうするのが正しい』って押し付けると上手くいかないことが多いからね。」
娘「じゃあ、『今本を読んでるけどうるさくて集中できないから、もうちょっと静かにしてくれる?』って言ったらいいの?」
私「そうそう!それだったら、静かにしてほしい理由もちゃんとわかるし、お願いされたら『は~い!』って素直に聞ける気がするよ!」
娘「わかった!じゃあ、今度からそうしてみる!」
どうすれば相手を不快にさせず、自分の思いを伝えられるか。そんな会話がこの半月のあいだに幾度も繰り返されました。
怒りっぱなしだった娘がニコニコしている…なぜ?
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そんなある日、ちょっとはにかみながら、娘が私に問いかけたのです。「ねえママ、最近の私、ちょっと変わってきたと思わない?」
この半月ほどで、確かに娘には変化がありました。
今までは怒りの感情に流されっぱなしで、どうすることもできずに足掻いていた娘が、その都度なんとか怒りと向き合おうとしている。自分の感情によって他人にもたらされる影響を考え、言葉を選ぶようになっている。
娘の人生の中で、とても大きな変化が起ころうとしているようです。
私「もちろん、すごく良い方に変わってきているよ!カチンときても、ムカッときても、一生懸命言葉を選んで、相手に嫌な思いをさせないようにしようって、毎日努力してるよね!」
娘「ママ、わかってくれてたの!?」
私「もちろんだよ!すごいな、すごいな~って、毎日ちゃんと見てるよ。嬉しいなって思いながら、あなたが努力している姿をずっと見てるよ。気付いた時はたくさん褒めるようにしてるよ。」
娘「ちゃんと見ててくれたんだね。
ありがとう!私も嬉しい!」
娘を変えるきっかけとなった、1冊の本との出会い
何が娘を変えてくれるきっかけだったのか?娘に聞いてみました。それは、『怒っていい!?』(ひすいこたろう著)という本との出会いでした。
娘とアンガーコントロールに取り組むようになってから、「怒り」に関するたくさんの本を継続的に図書館で借りては、娘の目の届く場所に置くようにしていました。
本を読むことが大好きな娘がそれを手に取り、たくさんの本の中から、いずれぴったり来る方法を自分で見つけてくれればいいな、と思っていたのです。
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「怒ってもいい!?〈誰にも嫌われない〉〈相手を傷つけない〉怒り方」
その内容は娘にピッタリだったようで…
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タイトルを見た娘は「え?怒ってもいいの?」と言いながら、あっという間に1冊を読み終えました。
何度か気になった部分を読み返した後、「ママも読んでおいてね」とリクエストがあったので、私も目を通してみました。簡単にまとめると・・・
●怒りの感情というのはとても大きなエネルギーを秘めている
●人間が進化する過程で怒りの感情が残されたのは必要な感情だから
●自分と自分にとって大切なものを守ろうとする怒りの感情を責められるのはおかしい
と、怒りを肯定的に捉えようとする内容になっています。娘はまずこの部分を読んで、安心したのだそうです。
今まで怒りの感情に振り回され、「どうして自分はこんなに怒ってしまうんだ」「どうしてみんなは怒らずにいられるんだ」と悩んでいた娘にとって、「怒ってもいいんだよ」という言葉がどれほど救いになったかわかりません。
だからこそ、『悪いのは怒ることではなく、怒りによって人や物を傷つけてしまうこと』『ではどうすれば良いのか』という次のステップへの導きをすんなりと受け入れられたのだと思います。
娘は自分なりにこの本の内容を消化し、なんとか相手を傷つけることなく自分の怒りの原因を伝えようと努力し始めたのでした。
本を活用し、我が家で決めたルール
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この本を読んだきっかけに、娘とこんなルールを設けました。
怒りに火がついてしまった時は、自分が何に怒っているのかをしっかり考え、次の手順で相手に話をする。
① 怒りの原因となった相手の行動を伝える
② その行動で自分がどんな気持ちになったかを伝える
③ どうして欲しいのかを具体的に伝える
初めに紹介したトラブルを例にとると、娘は息子に対してこのように伝えることになります。
① 楽しそうだけど、ちょっと声が大き過ぎるよ
② お姉ちゃんは今本を読んでいるんだけど、騒がしくて集中できなくて困ってるの
③ もう少し小さな声で遊んでもらえると嬉しんだけどな
これを機に、今まで弟に対しては「静かにしなさい!」など、お願いではなく指図をしていた娘の話し方が少しずつ変わってきました。そして、その都度「今の言い方はどうだった?」と私に確かめ、反省しながら次に繋げることができるようになってきたのです。
じゃあ、家の外ではどうする?
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また、正義感の強い娘は信号無視やたばこのポイ捨て、公共の場でのマナー違反を見かけると、自分とは全然関係のない人に対しても強い憤りを覚え、怒ってしまいます。
そんな時は、「あの人は間違っている!」と怒った後で「でも自分はあの人とは違う」「自分はあんな行動をとる人にはならない」と、怒りの原因となった行動から何を学べるかを考えるようにしようと決めました。
疲労が溜まっていてイライラし過ぎているときは、怒鳴り散らしてしまうこともありますが、何よりも「自分で意識ができるようになった」ということが大きな進歩だと思います。
親だけが「もっとこうして欲しい」といくら願っていても、親の目が届く範囲でしか注意ができませんが、自分で意識ができるようになったら、成長するチャンスはとても多くなるからです。
適切な方法も身に着くまでは時間が必要。だからこそ焦らずに
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イイな!と思う方法を見つけ、それが身に付くまでには、年単位の時間が必要です。
上手くいかなかったときは子どもを責めるのではなく、一緒にどこをどうすれば良かったのかを考え、上手くいった時にはハイタッチをしながら一緒に喜ぶ。
そんな時間を過ごすことで、きっと子どもも前向きにチャレンジを続けてくれるのではないでしょうか。
来年、再来年の姿を想像しながら、親も子もゆっくりと成長を続けられるといいですね。