角砂糖でカロリー補給をする息子、我が家の偏食との向き合い方
楽しいはずの食卓が…息子の偏食で
長男はADHDを伴うアスペルガー症候群です。
私を悩ませた息子の特性のひとつに、偏食があります。子どもの好き嫌いは少なからずあるものですが、味覚が過敏な発達障害児の偏食は一筋縄では行きません。
息子の偏食の兆しは離乳食が始まった直後から。食べるのは某メーカーの瓶詰めのみで、私が時間をかけて作った離乳食は食べないというこだわりがありました。瓶詰めだと食欲は旺盛で二瓶くらいぺろりと食べてしまうのに、私の作ったものだと食べるのは軟飯くらい。
離乳期間が終わり、レトルトに頼らない食事になると食欲は激減。息子の食へのこだわりはますますはっきりしてきて、アンパンマンのようにまるまる太っていた息子はみるみるやせていきました。
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食べられるものは、米、蕎麦、根菜、かぼちゃ、青魚、卵、納豆や豆腐などの大豆の加工品……以上です。
どんなに工夫して調理してもそれ以外のものは食べません。
さらに、環境が変わると普段食べているものも食べられなくなるし、調理法が変わっても食べられません。
学校給食では牛乳しか飲まない。
実家を含め、よそのお宅でご飯が食べられない。
外食は蕎麦屋しか行けない。しかも生蕎麦で茹でたてでないと食べません。
空腹に耐えられなくなると、食事を採る努力はせずに角砂糖をなめてカロリーを補給する。
さらにダラダラと長い食事も私にとっては悩みの種で、楽しいはずの食卓は親子でイライラして辛い時間でした。
子供の偏食が不安で仕方がない
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子どもの偏食を私が必要以上に大きな悩みにしてしまったのは、「健康に影響が出るのではないか?」「このままだと一生食べられないのではないか?」という、ふたつの不安があったからでした。
だから私は一生懸命工夫して、なんとか食べさせようと躍起になりますが、結果が全く伴わなかったためイライラを増幅させて、息子にとっても食事をさらに辛いものにしてしまったのだと思います。息子には食べられないと分かっていても、食べられない食材を使い、食べられないものを作り、食べてくれないとイライラする。
「食べなさい」「イヤだ」の押し問答の挙句、私はひとつも手をつけない息子の食事を取り上げて、シンクにバーンと捨てて、自己嫌悪するなんてこともありました。
偏食は気にしなくて良い???
そんな私の偏食に対する考えが変わったのは、児童精神科医の佐々木正美先生の言葉です。
「子どもの健康に影響が出ていないのなら、偏食は気にしなくていい。
無理強いしないで食べられるものを作ってあげなさい。
無理強いしなければそのうち食べられるようになる。」
と先生の著書にありました。
先生のお子さんも偏食があったこと、給食を無理に食べさせないで欲しいと学校にお願いに言ったこと、佐々木先生の家ではビュッフェスタイルで自分で食べたいものを取り分けていたこと、成長と共に偏食は自然に改善したこと……
本に書かれていた先生の実体験にずいぶん励まされました。
早速我が家でもトライ!
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それからの私は息子の偏食を治そうとやっきになることはやめ、息子が食べられる食材で食べられるメニューを考えるようになりました。
こうして向き合ってみると、食べられる食材は少ないですが、意外とバランスが取れた「偏食」だと気づきました。
佐々木先生の家のビュッフェスタイルをアレンジし、お皿に全てのおかずを少量ずつ盛り、全部食べることが出来たら、魚や豆など好きなものをお代わりできるルールとしたのです。
その結果、限られた食材なのでメニューは工夫してもマンネリになってはしまいますが、イライラは激減しました。
給食も食べることを無理強いせず、帰宅後におにぎりなどの軽食を用意し対応しました。
また実家に帰るときは今も息子が食べられるものを作って持っていくようにしています。
外食も「蕎麦屋しか行けない」と考えず、「蕎麦屋だけでも行けるところがある」と考えるようになりました。
息子の偏食に変化が…
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息子に変化が現れたのは小学校3年生の時。
それまで学校給食は仕出し弁当だったのですが、学校に給食室が出来て学校調理に変わり、温かい給食が提供されるようになりました。
そして学校での周囲の友達の「美味しい」という反応が後押ししたのか、自然といろんな物を口にするようになったのです。
5年生のとき、から揚げをしのぐ給食人気メニューの「洋風かき玉汁」を家でも食べたいと言われ、どんな食材が入っているのか?どんな味付けなのか?と息子に聞き取りをしながら家で作ったことは今でも忘れられません。
息子は「学校はもう少し野菜が少ないよ」と言いつつ完食してくれました。「洋風かき玉汁」は今も我が家の定番です。
味覚だって、その子のペースでゆっくりと発達していく
息子の偏食は、人並み・・・とまでは行きませんが、食事に苦労しない程度には徐々に改善していきました。
今では、ポトフなんてゴロゴロ野菜が入ったスープを喜ぶほどの変貌ぶりです。外食の際の選択肢も広がりました。
いろんな物をゆっくりと食べられるようになっていく息子の姿を見て、思ったことがあります。
それは、「発達障害児は味覚の発達もゆっくりなのかもしれない」ということです。
佐々木先生の言葉は、「ゆっくり、でもちゃんと発達はしていくのだから待ってあげなさい」というメッセージが含まれていたのかもしれないと思います。
それに食事は、ただカロリーや栄養素を補給すれば良いわけではありませんよね?
体だけではなく心にも栄養を補給する大切な時間だと思います。それは、子どもだけでなく親にとっても同じなのかもしれません。
子供の偏食を治そうとしないで、子供が食べられる食材で食べられるメニューを家族で楽しみながら、味覚の発達を待ってみませんか?
笑顔のある、穏やかな食卓で。