「障害」という表記は変えるべき?残すべき?皆さんはどう思いますか?
障“害”という表記につきまとうネガティブなイメージ
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こんにちは。『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。
「障害児」という言葉を聞いたとき、みなさんはどんなイメージを浮かべますか?私にも、知的な遅れを伴う自閉症の息子がいますが、子どもを表す言葉として“害”という字が当てられると、やっぱりネガティブな印象を受けてしまいます。
元々、「障害」という言葉は「障碍(障礙)」という漢字でした。しかし戦後の国語改革で「碍(礙)」という字が当用漢字に含まれなかったために、「障害」という表記が一般的になったという経緯があります。
碍の本字は元は礙であり、大きな岩を前に人が思案し悩んでいる様を示します。つまり自分の意思が通じない困った状態。意思が通らない、妨げられているという意味だったのでマイナスイメージはそれ自体にはありませんでした。
そのため「障害」の「害」という漢字の負のイメージに対する反対意見から、「碍」という漢字を常用漢字にしてほしいという声が当事者からもあがっています。現在は「障がい」という交ぜ書きの表記を採用している自治体も多いです。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201004050103.html
朝日新聞デジタル: 「障害者」か「障碍者」か 「碍(がい)」を常用漢字に追加求め意見, 2010年4月5日
「障害」「障がい」「障碍」。それぞれの表記についていろいろな考え方がありますが、この議論に違和感を覚えます。
なぜなら「障害」の「害」ではなく「障」の字も、ネガティブな意味を含んでいるからです。
しょう【障】
1. じゃまをする。じゃま。さしさわり。
「障害/故障・罪障・支障・万障・魔障」
2. 隔てさえぎるもの。「障子・障壁」
3. 防ぐ。「保障」
コトバンクより
https://kotobank.jp/word/%E9%9A%9C-78795#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
このような考えから、現在は“チャンレンジド”などまったく違う呼び方をしている団体もあります。運動会でも “障害物競争”の種目名をなくしている学校もあると聞いたことがあります。
「自閉症」という名前がもたらしている誤解・弊害は?
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同じように、言葉のせいでネガティブな印象を与えてるものに「自閉症」があると思います。
自閉症の「閉」には、「閉める」「閉ざす」という印象を受けますが、今もこのまま使われており、この障害名により随分と誤解が生まれています。
自閉症がこれだけ認知されてきているのに、字面だけで判断して“自閉→自分の心を閉ざしている→鬱みたいなもん”と考えてしまう人たちもいるようです。「私は若い頃自閉症だった」とか「あいつは自閉症だから付き合いが悪い」なんて平気で言う人もいます。
私もママ友から息子について「殻に閉じこもっているの?」「鬱病みたいなもの?」「治療すれば治るんでしょ?」「もっと愛情をたっぷりかけて育てたら?」という言葉をかけられたことが何度もありました。
自閉症は後天的にかかってしまった病気でもなく、薬により治癒するわけでもなく、親の育て方が原因でもないのですが…
自閉症の特徴として、興味関心が限定的であり、外界とのコミュニケーションが難しいことがあります。
たとえよく喋っていたとしても相手の気持ちを推し量ることが困難ですので、察したり空気を読むことが苦手でトラブルになることがあります。相手の顔色や声のトーンをキャッチして共感しながら会話する意思疎通はなかなか出来ず、一方的な話し方になってしまうこともあります。
そういった意味で“自分の世界にいる=自分だけの独特の空間にいる”という特徴を表しているのが「自閉症」という言葉であり、その言葉ゆえ誤解を生んでしまっているように感じます。
言葉が変わると、社会の見方も変化する
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一方で、呼び方が変わったことで社会の見方が変化したものもあります。
例えば、今は「看護婦」「保母」という呼び方はしません。「看護師」「保育士」となっています。
職業に対して女性の仕事と決めつけないようにこの言葉が生まれました。実際、男性看護師や男性保育士も今はたくさんいますし、「看護や保育は女性の職業」という社会の偏見も少しずつ緩和されてきたように思います。
他にも、「父兄会」という言葉。現在はあまり使われなくなってきました。「父母会」という呼び名に変わったり、両親ともに居ない子に配慮して「保護者会」と言われることも、全国の保育園、幼稚園、学校で増えてきているようです。
最近では、シングルマザー・シングルファザーの家庭に配慮して、「父の日」「母の日」ではなく「父母の日」、両親ともおらず祖父母の元や児童養護施設で育っている子に配慮して「保護者の日」としている園もあります。
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同じように、学校での学級種別の呼び名にも少しずつ変化が生まれています。
これまで、小学校では、障害のない子のクラスを「普通学級」、障害のある子のクラスを「支援学級」と呼んできました。
また支援学級は、「なかよし学級」「わかば学級」といった風に、各学校でクラス名を決めていることも少なくありません。これも今では、「そもそも何が“普通”と言えるのか?障害のないことを"普通"と考えることはどうなのか?」という議論もあり、「通常学級」と「支援学級」という表記に変わりつつあります。他にも、特別な感じを与えないため通常学級を1組~4組とし、最後の番号、例えば5組を支援学級としているところもあるようです。
こうした事例を考えると、呼び名を変えることに、人々の見方や意識を変えていく意味はあるのかもしれません。
けれども、呼び名を変える"だけ"では、当事者の抱えている現状は変わらない
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上に挙げた事例を考えると、呼び名を変えることに、人々の見方や意識を変えていく意味はあるのかもしれません。
ですが、いくら呼び方や言葉が変わったとしても、それだけでは当事者が直面している状況は変わりません。
いくら「保護者の日」と呼んだところで、親がいない子どもたちにとってその現実が変わることはありません。子どもたちは、「うちにはママがいない」「うちにはパパがいない。
ママ一人で僕を育ててくれている」とちゃんと分かっています。
同じように、「障害」であろうが「障碍」であろうが、その人が何らかの「障害に直面している」という現状も変わりはないのです。それはこの世の中は大多数の定型発達の人が生きやすいようになっているからです。
例えば、合理的配慮が義務化された現在でも、まだまだ学習障害児の子どもも黒板の文字を読み、それを書きとることをさせられている現場は多いのではないでしょうか。音声ソフトやタブレットを使うことなど浸透はまだまだしていません。
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いつの時代も障害者は、社会から見て“障害がある”のではなく、理解や配慮のない社会で生きて行く上で“障害に直面している人達”です。
言葉だけをいじって「ハイ、完了!」としないで、「殻に閉じこもっている人」「心の病」「愛情不足」「治療すれば治る」「人づきあいが悪い人」などの間違った認識がなくなり、それぞれに配慮し、みんなが生きやすい社会になればよいのではないでしょうか。
皆さんはどう思いますか?
https://www.amazon.co.jp/dp/4799105566/
立石美津子/著『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』2016年/すばる舎/刊
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