小4の娘に表れたチック症状。きっかけは大好きなテレビ番組に…
環境の変化が苦手なアスペルガーの娘。克服できてきたと思ってたけど…
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発達障害を抱える方の特性の一つに「環境や状況の変化が苦手」というものがあります。
スケジュールの変更を受け入れられない、決まった道しか歩けない、白い色の食べ物しか食べられない等々、いつもと違うものや事柄を受け入れるのがとても苦手で、反射的に拒絶し、パニックを起こしてしまうことも多々あります。
自閉症スペクトラム+ADHDの診断が下りているわが家の娘と息子も、環境や状況の変化がとても苦手です。
成長するにつれ「泣き叫んで手が付けられない」「その場を頑として動かない」などのパニック状態に陥ることは減ってきましたが、変化に対する不安がなくなったわけではありません。
さまざまな不安が溜まったり、大きな不安が襲ってくると、チックや足の痛みといった身体症状として表れてくるのです。
娘は小3から学校に行くのをやめ、なるべく穏やかな環境で自由に学んでいます。ストレスも減り、最近は症状も落ち着いていたはずですが、なぜか1月に入って新たなチックが出現しました。一体何に不安を感じているんだろう?と心当たりを娘と話し合ってみましたが、なかなか娘のチックはおさまりません。
そして2月に入り、ようやく判明した原因は「テレビ番組」だったのです。
大好きだったスーパー戦隊のアニメ。卒業するのはちょっと大人になったから…?
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毎年、2月になると今までのスーパー戦隊のアニメが終了し、新たなシリーズが始まります。今年も先日「動物戦隊ジュウオウジャー」シリーズが終わり、新しく「宇宙戦隊キュウレンジャー」というシリーズがスタートしたところです。
我が家では幼稚園に通っていた息子がお友だちとの会話で興味を持ち、「動物戦隊ジュウオウジャー」を見るようになりました。それがきっかけで、娘も毎週「動物戦隊ジュウオウジャー」を心待ちにして見るようになり、テレビの前で踊ったり、息子と一緒に本を眺めたりしていたのです。
小学3年生にしては幼いかな?と思いましたが、発達障害を抱える子どもたちは「精神年齢が年齢より3割ほど幼い」と聞いていましたので、楽しめるものが増えて良かったな~!と軽く考えていたのです。
秋が深まる頃には次のシリーズの情報が少しずつ解禁され、息子は「次は宇宙がテーマだって!」「9人もヒーローがいるらしいよ!」とノリノリで家族と話していました。
しかし一方で娘は「私はジュウオウジャーでスーパー戦隊は卒業しようと思う」とそっけない態度です。
もうすぐ4年生だもんね、少し精神年齢が上がったんだね、と思っていたのですが、娘がそう言う理由は私の予想とは違っていました。
「環境の変化が苦手」な特性から、新しいヒーローを受け入れられずにいた
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「スーパー戦隊はもう卒業する」と言っていたはずの娘ですが、1月の終わりになると、
「ジュウオウジャーが終わってしまうなんて酷い!」「これから日曜日の朝は何を楽しみに生きればいいの?」
と涙を流すようになりました。
息子が買ってきた新しいシリーズ「キュウレンジャー」の本も、ちらっと見ただけで「お姉ちゃんはこんなの好きになれない」「ジュウオウジャーの方がいいに決まってる!」「こんな設定おかしいんじゃないの!?」と声を荒げます。
娘は決して精神年齢が上がってスーパー戦隊を卒業しようとしていたのではなく、大好きなジュウオウジャーを大切に思うがあまり、その終わりを受け入れることができず、新しいヒーローを拒絶していたのです。
環境の変化を受け入れるのが苦手な上に、1つの物に対する思い入れが強すぎるあまり他を拒絶するという娘の特性が重なり、娘自身も気づかない間に、どんどんと不安な気持ちが増大し、チックとして身体症状に表れていたのです。
「キュウレンジャー」シリーズが始まった朝。親子で話し合ってみた
さて、新シリーズが始まった朝。
「お姉ちゃん!キュウレンジャーを見よう!」と元気に誘う息子を睨みつけながら、「金曜日に録画しておいたドラえもんをまだ見てなかったから、そっちを見る」と最後まで抵抗を続けた娘ですが、息子の意気込みに負けて渋々キュウレンジャーを視聴しました。
私は敢えて娘の不安に気づかない振りをしながら、のろのろとテレビに向かう娘を見ていました。
そうして、息子のリクエストで2回番組を見た後には、娘はすっかり新しいヒーローを受け入れました。私に「緑色の子は、〇〇なんだよ!」「それで青色の子が〇〇で・・・」ととめどなく喋りつづけます。
少し落ち着いたところで、娘と今回の出来事について話し合いました。
・ 自分が大切に思うものを守ろうとして、他のものを拒絶すると世界が狭くなること
・ 新しいものを受け入れるかどうかは、一度体験してから考えること
・ 状況の変化が起きる時には不安な気持ちが大きくなってしまうこと
・ 今までの経験を思い返して「今は怖くても大丈夫かも知れないよ」と自分で自分を応援すること
・ なるべく好きなものや知っていることを増やして不安を小さくすること
いろいろ話していると娘も思い当たることがたくさんあったようで、
「そういえばあのときも、初めは無理だって思ってたけど、一度体験したら大好きになったんだった」
「でも、無理って思う気持ちは止められないよね?」
「自分で自分を応援するのか~。ママも一緒に応援してね!」と、少しずつ何かが浸透し始めた様子でした。
どんなときに不安を感じるのか、親子で考える時間をつくってみよう
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「環境の変化に弱い」という特性が本人も気づかない間に不安を蓄積させ、心の健康を損ねてしまうこともあるということを深く考えさせられた出来事でした。
これから春を迎えるにあたって、新しい教室、新しい先生、新しい人間関係、新しい時間割…。子どもたちが不安に思う材料は盛りだくさんです。
お子さんがイライラしたり、気力を失くしたりしてしまった時は、どんなことに不安を感じているのか、どんな風に自分に声をかけてあげれば楽になれるのか、一緒に考える時間を作れるといいですね。
その経験の積み重ねが、親の手を離れて生きていく時の力になると信じて、わが家もこつこつと話し合いを続けていきたいと思います。