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アスペルガーの私が、大学生活で手に入れたかけがえのないモノ。

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一人の大人として扱われるのが大学です

アスペルガーの私が、大学生活で手に入れたかけがえのないモノ。

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10161013310

高校までは、子どもたちは生徒という立場で先生たちに守られて過ごします。問題があれば担任の先生が中心となって、解決の糸口を探してくれることもあります。

ですが、大学に入学すると、世話を焼いたり勉強のやり方を指導する先生は基本的にいません。課目によってはクラスはあるけれど、「ここが私のクラスだ」と毎日通うクラスは存在しません。

大学は学生を一人の大人として扱います。高校までのようにいちいち管理されない分、大人としての責任を求められます。それはとても開放的で自由な環境ですが、型にはまるのが得意ともいえるアスペルガー症候群の人には、なじむまでが大変かもしれません。

大学という新しい環境に飛び込んだアスペルガーと注意欠陥症を持つ私が、どんなことにつまづいたのか、そして何を得たかを書いていきたいと思います。


最初は友達をどう作っていいかわからず…。

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晴れて大学に入学したものの、私には話し相手が一人もいませんでした。学科の人数は約400人。授業も語学以外は大教室で行われます。周りを見ると笑顔で会話しているグループもいるのに、私はどうやって友達を作ればいいのかわかりませんでした。そのことを気にするあまり一時は「この大学は合わないから入試を受け直して別の大学に行こうか」と思ったほどです。

でも、しばらくすると語学で一緒になった子と話すようになり、一緒にクラブ見学に行くことになりました。

そのクラブ見学で、強いインパクトを受けたのが軽音楽部でした。軽音楽部の部室の前に机とイスがあって、そこに座るアフロヘアの先輩が「ああ、入部希望?」と言ったのを鮮明に覚えています。
部室の中にいる先輩たちはなんというか個性が強烈で、「何て自由な人たちなんだ」と私は心底びっくりしました。結局私はその軽音楽部に入部することになりました。最初はどうふるまっていいのかわからず小さくなっていましたが、先輩たちに「バンド一緒に組もうよ」と誘われてからはどんどんなじんでいくように。

バンドをやろうという人たちはけっこうアクが強い人が多いのですが、それでも堂々と過ごしている姿に「ああ、変わっていてもいいんだな」とホッとしたのを覚えています。

大学というところは、基本的にサークルやクラブ単位で人間関係が深められていく傾向があります。なので適当に顔を出しておけばいいようなサークルでもいいので、どこかのクラブ・サークルに所属することを私は強くおすすめします。

ちなみに、そういうところで知り合った先輩は、「楽勝で単位をとれる講義」「出席が甘い先生」などを教えてくれたりもします。学業に励むのもいいけれど、そういう情報も知っていて損はありませんよね。


初めて気づいた、自分のコミュニケーションの特徴

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私は大学に入るまで、私は基本的に誰かと群れるということが苦手でした。

また当時の私は、難しい言葉を多用するしゃべり方をしたり、本音をオブラートに包まず相手に投げつけたりしていました。さらに、きつく聞こえる方言が、それに拍車をかけていたのです。

ある日、そんな私にクラブの先輩が言いました。

「ヨーコちゃん、あなたのしゃべり方って怖い」
「偉そうに聞こえるし、怒っているようにも見える」
「もっとしゃべり方を直した方がいいよ」

はっとしました。そのとき初めて、自分の話し方とまわりの人の話し方の違いに気付いたのです。
みんなの話し方はトーンが優しく、相手に非があってもいったん受け入れて「だけど自分はこう思うよ」と相手を傷つけないように気遣っていたのです。私は初めてそのことに気づくことができました。


また、そのことを私に伝える時にも、先輩は攻撃的な態度ではなく、本音で心配な気持ちを伝えてくれました。
私にはそれがうれしく、素直に「そうか、そう思われるようなしゃべり方だったんだな」と納得し、みんなが不快にならないようなしゃべり方を身につけようと思いました。そこで私は、周りの人たちがしゃべっている様子をよく聞いて真似することから始めました。自分の方言を封印することはありませんでしたが、きつい言葉は別の言葉に言い換えました。相手より優位に立とうとする態度もやめるように心がけていったのです。

すると周りの人の態度も変わってきて、先輩たちも「ずいぶんマイルドになったね」とほめてくれるように。どんどん肩の力を抜いて過ごせるようになり、大学で過ごすのがますます楽しくなりました。

「できない=バカにされる」だと思っていた私を変えた出来事

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私の親は大学教授でした。
言いふらすつもりはありませんでしたが、聞かれたら正直に答えていたので知る人は昔から多かったです。ですが親の立派な職業が肩にのしかかり、「できる子じゃなくちゃいけない」と思い詰めていたように思います。

高校までは人に弱いところを見せると負けだと思っていましたし、無駄にプライドが高く人より劣っているということは認めることができませんでした。もともと負けず嫌いということもありましたが、勉強ができないと「親は大学教授なのに…」と周りの人や学校の先生から心ない言葉を投げつけられましたし、もちろん親にも「どうしてこんなにバカなんだ」といわれてきました。そのせいで同級生にも「本当は勉強が分からなくて困っているけど、知られたらバカにされる」と思って虚勢を張り続けていました。

ところが、大学の語学の授業でのことです。マルクス(Marx)を「マークス」と読み違えた私にクラス中が爆笑し、「ヨーコちゃんがいるからこの授業は癒しの時間になるわ」と言われたのです。そして、あまりに英語ができない私のことをクラスの人はかわいがってくれ、いろいろと助けてくれました。


年度の終わりが近くになると、先生も私が単位を落とさないように気を遣って、こんなことを言ってくれました。「君はお父さんが大学教授らしいね。もう、お父さんに頼んでこの問題を日本語に訳してもらってきなさい。そうじゃないと単位があげられないんだよ。」

勉強はできない私でしたが、先生やクラスのみんなは、私を愛してくれました。それはおそらく、めちゃくちゃな読み方で大爆笑されても、必死に読み続けたこと、まじめに講義を受けて頑張っているのにどうしてもできない事実がみんなに理解されたこと、親の職業を知っていてもヨーコはヨーコとみんなが見てくれたことがあったからだと思うのです。

できないからといって誰のこともバカにしない。できないのなら助けてあげる。そういう空気が教室にあふれていて、ハリネズミみたいになっていた私の心を溶かしてくれました。


私はそれまで「できない=バカにされる」だと思っていました。しかし、必ずしもそうではなく、努力する姿を愛してくれる人もいるということをこの時学んだのです。この経験があったからこそ、この先の辛い社会人生活でも人として腐らずに生きてこれたのだと思っています。

大学生活を振り返って

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大学生活がスタートした時は、友達の作り方がわからず、大学をやめようかとも思った私ですが、人との関わり方が未熟だったことに気づくことができ、自分の態度を改めることができました。

さらには、今でも付き合いのある一生モノの友人を得ることができ、「できない」ということで、必ずしもバカにされるわけではないということを学ぶことができました。

ただ、すべてがうまくいったわけではありません。4年で卒業するための授業の選択がうまくできなかったり、就職活動のタイミングや方法が分からなかったり、課題もあった大学生活でした。

それでも、主にクラブの仲間のおかげで、大学生活は私にとって一生忘れられない楽しいひとときとなりました。大人同士の付き合いができて、打算も何もない関係の中で友人を作ることができるのは大学ならではです。発達障害の私にとって、「相手が大人になっている」ということは何よりも助かるポイントでした。

また、最近では発達障害の学生を支援してくれる大学も増えています。あらかじめそういう支援の充実した大学を調べて、支援を受けながらキャンパスライフを過ごすのもいい方法だと思います。

高校までとは違い、大学から広がる世界はとても広いです。大学に行きたいと願う人にはぜひあの自由な世界を味わってほしいなと思います。http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/shien_network/soudanshitu/soudansitsu10.html
発達障害学生への就学支援方法について(富山大学)

http://www.kaien-lab.com/gakupro/univ/
ガクプロ発達障害のある大学生支援プログラム

http://www.en-c.jp/student.html
「働くチカラPROJECT」

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