子どもの難病、小児慢性特定疾病とは?医療費の助成制度と自己負担金額の仕組みや福祉サポートを解説!
小児慢性特定疾病とは?
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10272001964
小児慢性特定疾病とは、18歳未満の子どもの病気のうち、以下の4つの項目を満たしていると厚生労働大臣が認定した子どもの病気のことを指します。
・慢性に経過する疾病であること
・生命を長期に脅かす疾病であること
・症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること
・長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病であること
平成29年4月1日現在、722の疾病が対象となっています。代表的な病気は、Ⅰ型/Ⅱ型糖尿病や小児ぜんそく、ダウン症などがあげられます。幼少期から発症し、継続的な治療や療育が必要になるものがほとんどです。認定されている病気は以下のリンクからご覧ください。
https://www.shouman.jp/search/group/
小児慢性特定疾病情報センター|疾患群別検索
なぜ特定の病気を「小児慢性特定疾病」として認定しているのでしょうか?その目的は大きく分けて2つあります。
ひとつめは、患者のためにより良い治療方法の研究や新薬の研究などを進めるという医学的な目的です。もうひとつは、重い病気を治療するために必要になる高額な医療費を軽減するためです。
まずは、医療費助成制度についてまとめました。
小児慢性特定疾病の医療費助成制度
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小児慢性特定疾病の医療費助成制度とは、小児慢性特定疾病に関する治療を受けた場合にかかる医療費を、一定金額の自己負担金額以外は国が助成してくれる制度です。医療費助成制度における自己負担額の上限は所得によって決められています。
ある一定の金額を超えたら、助成金を受けることになります。具体的な年収と患者の自己負担額は以下の図表をご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken05/dl/110804_01.pdf
出典:ご存じですか?小児慢性特定疾患対策|厚生労働省発行
例外として、同じ世帯に小児慢性特定疾病や指定難病の患者がいる場合は、金額が異なります。個人単位の自己負担金額ではなく、世帯単位での負担金額の上限が決められます。世帯内にいる患者の自己負担額を比べた時に、自己負担額が高い金額で計算される仕組みです。
基本的には、18歳未満の児童等が対象です。18歳を超えた場合でも、医師が引き続き治療が必要だと判断した場合は、20歳未満まで延長されます。
成人を迎えた後の治療に関しては、指定難病に対しての難病医療費助成制度や高額療養費と医療費控除などを利用して、医療費の負担を軽くすることができます。それぞれの制度の利用に関しては以下の記事をご覧ください。
医療費の助成を受けるためには、申請が必要になります。申請を行う窓口は、都道府県、もしくは一部の政令指定都市などの地方自治体です。具体的な支援やサポートのガイドラインは国が定めているので、医療費助成について調べる際は、国が運営している「小児慢性特定疾病情報センター」のHPを見ることで、まとまった情報を手に入れることができます。
https://www.shouman.jp/
出典:小児慢性特定疾病情報センター
地域ごとに、実際の支援やサポートが違うことがあるので、自分の住んでいる地域に関しての情報は、各自治体の相談窓口でご確認ください。
https://www.shouman.jp/counseling/prefecture/
出典:小児慢性特定疾病情報センター|各自治体担当窓口
小児慢性特定疾病の医療費助成の申請については以下のとおりです。
1. まず、指定医療機関を受診して、診断を受けます。
2. その診断に基づき、医師に「医療意見書」を作成してもらいます。
3. 「医療意見書」と申請書類を国から指定されている地方自治体の窓口に提出します。
4. 小児慢性特定疾病審査会によって、書類や病気の症状に対して審査が入ります。
5. 審査を終えると、申請した地方自治体より結果が届きます。
上記の申請により、医療費助成が受けられる医療費受給者証が手に入ります。窓口への申請で必要になる書類は、各地方自治体の保健福祉局のホームページなどでダウンロードすることができます。
医療意見書は、各病気のカテゴリごとに違うので、自分の病気がどのカテゴリなのかを調べた上で、ダウンロードすることになります。下記のページにはカテゴリごとにまとまっているので、自分の病気名を探した上で、書類を手に入れることができます。自分で記入する個所もあるので、分からない場合は診断を受ける医師に相談しましょう。
https://www.shouman.jp/medical/
小児慢性特定疾病情報センター |医療意見書の一括ダウンロード
小児慢性特定疾病の医療費助成制度には、重症患者を認定する仕組みがあります。小児慢性特定疾患の中でも、特に高額な医療費が長期間にかけて必要になる病気や、同じ病気でも症状が重い患者に対して、負担金額を下げるものです。
各病気ごとに基準がつくられており、重症患者の認定をもらうためには、医師の診断が必要になります。詳しい診断基準等は、以下のページをご覧ください。
https://www.shouman.jp/assist/accreditation
小児慢性特定疾病情報センター - 小児慢性特定疾病 重症患者認定基準
小児慢性特定疾病の医療受給者証は更新が必要です
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医療費助成制度をうけるために、必要になる医療受給者証。
この書類の有効期限は、申請日からの1年間となっています。
医療費の助成を継続して受ける場合は、更新手続きが必要になります。指定された医師からの診断を受け、医療意見書を申請書類として提出することが求められます。各都道府県ごとに多少違いはありますが、更新が必要な方に対して期限が切れる3~4か月前に更新のお知らせが届きます。
更新の手続きには2~3か月かかるので、受給者証の期限が切れてしまった場合は、一時的に立て替えた上で、払い戻しを受けることになります。
前述した通り、18歳になっても引き続き治療が必要だと認められる場合は、20歳未満まで期間が延長されます。このときに、期限が切れてからの更新手続きは認められないので注意が必要です。また、18歳以降に使用できる医療費助成制度は他にもいくつかあり、相談は、かかりつけの医師や市区町村の窓口で行うことができます。
小児慢性特定疾病における福祉サポート
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医療費助成以外にも、小児慢性特定疾病をかかえる子どものための福祉サポートがあります。生活していく中での悩みの相談や、生活用具の給付など様々です。
子どもとその家族が抱える悩みの相談窓口を用意したり、困りごとを解決するために関係機関を紹介する取り組みは「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」と呼ばれています。これらの取り組みは、都道府県や地区町村で行うように「児童福祉法」によって定められています。
小児慢性特定疾病に関する子育ての相談はもちろん、同じ経験をした方に相談できるピアカウンセリングや家庭内で療育をされている方を対象にした巡回相談指導などをうけることができます。地域ごとに詳細なサポート内容は異なりますので、お住まいの地域の窓口にご相談ください。
https://www.shouman.jp/counseling/prefecture/
小児慢性特定疾病情報センター|各自治体窓口
病気の症状によっては車いすや、入浴の補助に使う器具など必要になる生活用具があります。それらの生活用具を支給するのが「小児慢性特定疾患児日常生活用具給付事業」です。
この申請も、お住まいの自治体の窓口で行います。医師と相談しながら申請する生活用具の支給を受けられるようになります。
小児慢性特定疾病に関する相談はどうしたらいいの?
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かかりつけの医師や各自治体の窓口を通して行う相談もありますが、それ以外にも、生活の中での困りごとを相談する場があります。
小児慢性特定疾病のある子どもと家族にとって、小中学校での集団生活の中でどのように病気のことを説明して、クラスメイトからの理解を得るのかは重要なポイントになります。給食での食事制限や運動制限など、少なからず配慮が必要な場面も生まれてくるはずです。
やはり、担任の先生や養護教諭などの学校と相談し、連携を密にすることは必要不可欠です。クラスメイトの病気への理解を深めることで、例えば糖尿病などでみられる低血糖の症状が出た時などに早期発見につながるなどのメリットもあります。
周りの人に病気の説明を行う際に、医師の診断書はもちろん、各自治体で配布している「小児慢性特定疾病児童手帳」を使うことで子どもの集団生活をサポートすることができます。
https://www.mcfh.co.jp/material/detail/70
教材詳細 株式会社母子保健事業団|小児慢性特定疾病児童手帳
上記のような学校生活での悩みについては、国立成育医療センターが運営している「慢性疾患を抱えているお子さまの学校生活相談窓口」でも相談できます。ホームページには、生活の中でのQ&Aやガイドブックがまとめられていますので、ぜひご覧ください。
http://kango-net.luke.ac.jp/kodomocare/information/index.html
相談窓口のご案内|国立成育医療センター
http://kango-net.luke.ac.jp/kodomocare/index.html
出典:こどものケアドットコム小児慢性特定疾患患者や子どもの健康を考えたポータルサイト
まとめ
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10230001574
小児慢性疾患のある子どもたちの自立を考え、周りの環境をどのように整えるのかは子育ての中でも大きな課題となります。医療費助成制度や福祉サポートをうまく活用しながら、継続的な治療と上手に付き合っていくためにも相談できる環境を用意しておくことは大きな意味を持つはずです。
病気に対しての理解も含め、学校現場や病気をもたない子どもたちには、まだまだ知られていないことが多いので、理解を得るのは難しいことかもしれません。学校や医師などつながりを持って子育てにのぞむことは一つの鍵となることでしょう。