3年半も不登校だった僕が、慶應義塾大学に行けた理由〜通信制高校活用のススメ〜
中学不登校だった僕が出会った“通信制高校”。そこは、自分の興味を思いっきり追求できる場所だった
Upload By 吉開拓人
こんにちは、現在大学生で、プログラマーとしても活動している吉開拓人といいます。これまで、ベンチャー企業でのロボットの開発などに携わってきました。
http://gatebox.ai/
開発に携わったロボット「Gatebox」
今でこそ、大学生活にエンジニアの仕事にと充実した毎日を送っている僕ですが、実は中学から約3年半の不登校経験があります。
そんな僕がプログラミングに打ち込み、そして大学進学という目標を持てた理由の一つには、「通信制高校」という選択肢があったことがあると思います。
通っていたのは、長野県にある通信制高校「コードアカデミー」。国語や数学といった通常の高校の授業科目だけでなく、プログラミング教育に力を入れた学校です。2014年に開校されたばかりでまだ歴史は浅く、僕が卒業第一期生です。
コードアカデミーでの日々はとても充実していました。
自分の好きなことや楽しいことに3年間ずっとノンストップで取り組むことができただけでなく、面白い生徒にたくさん出会えましたし、その人たちから普通の高校に通う以上の良い刺激をたくさん受けとることができました。
今回は、僕自身の「コードアカデミー」での高校生活をお話し、不登校であったり、学校に行く理由を見出せないでいる中高生の後輩たちに向けて、通信制高校のポジティブな活用方法をお伝えできればと思います。
「勉強する目的が分からない」ー3年半の引きこもりから、プログラミングという道に出会うまで
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=29921000120
通信制高校へ通うようになったキッカケは中学生のころまでさかのぼります。
僕は中学生1年生の時から、家に引きこもるようになりました。
学校に行かなくなった理由は人間関係などではなく、「勉強する目的が分からない」から。
小学校と違い中学にあがってから大きく変わるのは勉強への姿勢。周りは受験モードに切り替わり、勉強に力を入れる人が増えていきます。
友達が塾に行き始めるのをみて「自分も勉強をがんばらなくては」と焦燥感をかんじ勉強に向かってみたものの、目的を定めずに何かをすることが苦手だった僕は、目的のない受験勉強をし続けることに対しもやもやとした疑問を抱き始めます。
そしてついに中学一年の秋、糸が切れたように通学ができなくなってしまい、そこから3年以上もの間引きこもり生活が続きました。
ですが今振り返ると、この不登校経験は僕の人生のターニングポイントとなったかけがえのない時間だったと思います。
一日中ゲームをしていた僕に、父が「そんなに好きなら、自分でゲームを作ってみれば?」とプログラミングの専門書を買ってくれ、僕がエンジニアになるきっかけを与えてくれたからです。
※詳しくは、以前発達ナビでインタビューしていただいたコラムでお話していますので、こちらも併せてご覧いただけると嬉しいです。
プログラミングに特化した通信制高校がある?ニュースを見てすぐに入学を決意
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28174010387
引きこもり始めて3年の月日が経った頃、「まだ学校に行きたくはない」と中学卒業後も家で過ごしていた時のこと。
ふと目にしたのが“通信制高校「コードアカデミー」開校”のニュースでした。
コードアカデミーは、日本でも稀なプログラミング科目を導入した高校です。
国語や数学、英語といった普通科目とプログラミング科目の授業はネットで受講し、メールで課題を提出。
あとは半年に一度、約5日間長野県にある本校で授業とテストを受けて単位を修得します。
卒業に必要な単位を取れれば高校卒業資格が取得できるので、大学を受験する事が出来ます。
さきほどお話した通り、不登校生活で一番力を入れてたのがプログラミングの勉強だったこともあり、このニュースを見たときは飛び上がるような気持ちになったのを覚えています。
将来のために今以上のプログラミング技術が学べるかも…ここだったら自分のやりたいことに向かって努力できるはず。
高校に通うならここしかない!不登校になる前と違い、勉強することに大きな目的を持てた瞬間でした。
すぐさま資料請求し、願書を提出。入学が認められ、記念すべき第一期生としてコードアカデミーに入ることになりました。
http://www.code.ac.jp/
コードアカデミー高等学校
通信制高校のイメージを変えてくれたのは、魅力的な同級生との出会い
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28144086889
「やりたいことができる!」と入学を決めたものの、正直に言うと僕自身も通信制高校にまったくネガティブなイメージを持っていなかったといえばウソになります。
就職や進学には明らかに不利だし、世間にもあまり良いイメージは持たれていない…全日制の高校には確実に劣ると思っていました。
少し不安な気持ちも残ったまま入学式初日を迎えた僕ですが、そんなイメージを180度変えてくれた出会いがありました。
コードアカデミーの本校は長野県にあり、そこで行われた入学式の日のことです。
同じく第一期生として入学式に参加していたK君と出会いました。
彼は通信制高校に対してとてもポジティブな考え方を持っていたんです。
「通信制高校と普通の高校の違いは、時間を自由に使えること。
好きなように予定を入れて行動できる。やりたいことのために時間を有効活用できるのは大きなメリットだ。」
社会問題やインターネット文化に興味があった彼は、とても好奇心旺盛。
学校外でやりたい事がたくさんあった彼は、昼間の時間を「やりたい事」に使うために通信制高校を選んだのだそうです。
昼間の時間は、気になるビジネスに取り組んだり、旅に出たりとアクティブに過ごしたいと張り切っていました。
彼の考えは僕にとってとても衝撃的で、それでありながら僕の胸にストンと落ちるものでした。
「平日の時間を有効に使えること」をどう活用するか、それが高校生活を有意義なものにするかキーポイントになっているのではないか……
だったら、僕も彼のように通信制高校の環境をポジティブに活かせるように行動すればいい。
この考えに出会ってから、僕の通信制高校に対するイメージは大きく変わり、結果、高校生活も充実したものになっていきました。
自分で目的を持って通信制高校を“活用”してみたところ…
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=29935000022
ここからは、実際に僕が「コードアカデミー」で行動してみて体感した、通信制高校のメリットをご紹介したいと思います。
学校の中の友達や繋がりは大事ですが、それだけに限られてしまうと、思考も限定されてしまいます。
僕はできるだけ外に出ました。
フリーランスのエンジニアの方々に会ったり、カフェで店員さんとおしゃべりしながら作業したり、平日に開催されるイベントに参加したり…
通信制の平日の時間が使えるというメリットをフル活用したのです。
全日制高校と違って単位制で履修の時間を自由に決めることができるからこそできたことです。
また、僕は空いていた平日の時間の大半を「仕事」の時間に使っていました。
働く目的は、遊ぶお金がほしいからではなく、将来に向けてプログラミング技術を磨くこと。むしろお金はおまけのような感覚でした。高校生でもプログラマーとして働ける会社を見つけて勤務していたのですが、そこで学んだことはとても大きかったです。
毎日社会人といっしょに仕事をする機会をもてるのは、まさに通信制高校ならではのメリットだと思います。ほぼ毎日仕事をしていましたが、働くこと自体が楽しくて仕方なかったので、遊ぶ時間は必要ありませんでした。
プログラマーとしての業務に必要なのは「コミュニケーション」と「勉強」です。仕事を通じて、その2つのスキルはどんどん磨かれていきました。
この経験は社会人スキルとして一生活きていくでしょう。
新しい人に会って新しい友達が出来ると、新しい情報を知る事が出来ます。
そして多くの人から自分の知らない世界を教えてもらうことにより、自分のやりたいことが新しく見つかる場合もあります。
もちろん時間はたっぷりあるので、そのやりたいことにすぐさま取り組むこともできます。
やりたいことにフットワーク軽く、自分の満足のいくようにひたすら模索できるのは時間を自由に使える環境があったおかげだと思っています。
今の大学に行くことができたのも、志望大学の先輩方に会って将来の夢を語り、受験の相談に乗っていただけたから。夢の実現のために自由に動ける時間が得られたのは、とても良かったと思っています。
僕の高校時代は自由そのものでした。
そして何も出来ないのび太くんだと思っていた自分でも、時間の使い方を理解し、使いこなす事が出来れば、どんなことでも出来るようになると分かりました。
エンジニアは生涯勉強し続けなければいけない職業です。勉強し続けるには仕事と休みの合間に勉強の時間を作らなければいけません。それは自分の限られた自由をマネジメントするということです。
高校時代、平日いつ・どこに行き、誰と会うのも自由。
全て自分で選択して生活してきたお陰で、自分の自由をマネジメントする癖が付きました。
その能力はこれから先、エンジニアの僕にとって大きく役に立ってくれるはずです。
不安も失敗もあった。でも勇気を持って挑戦すれば、その経験はきっと自分の財産になる
Upload By 吉開拓人
そんな高校生活を経て、僕は今年4月に慶應義塾大学の総合政策学部に入学しました。
「目的のない勉強」が嫌で学校に行かなくなった僕にとって、大学の「目的のある勉強」は楽しくて仕方がないです。興味はテクノロジー以外の分野にも広がっており、今後も高校生活で得られた行動力をもとに活動の幅を広げていきたいと思っています。
僕の高校生活を転換させてくれたKくんは、在学中、自分の興味の赴くまま全国を駆け回り、フィールドワークをしていました。
卒業後は早稲田大学に進学。そんな彼の最近の口癖は「情報は足で稼ぐもの」、まさに有言実行を貫いていました。
Kくんだけでなく、他にも自分の興味のある領域を研究する時間に使い、学問を究めるため大学に進んだ人もいます。
このように、みんな自力で進路切り開いていきました。
大学生、社会人となるにつれて、ますます学習が大切になっていきます。
それを両立させるためにも、僕らが通信制高校で身に付けた「自分の時間を管理」する能力が役に立ってくれるはずです。
通信制高校に入って将来が不利になるのでは……と心配になることもあるでしょう、
でも実は、全日制高校でなければ出来ないことより、通信制高校でなければ出来ないことの方がたくさんあると思っています。もちろん僕も、ただ順風満帆な高校生活を送っていたわけではありません。
たくさん失敗もしました。
でも、その失敗も今の自分には必要不可欠なことだったと思っています。
そのおかげで、最近は失敗するのがそんなに恐くなくなりました。
上手く活用すれば、普通の高校生が見たこと無いような景色を見たり、やれない事をやったり、出会えない人と友達になれます。
時間と場所の制約がなければ自由な発想力が身につきます。
その結果、好きなことを仕事にしたり、好きな分野を研究したり、興味を持ったことは何でも挑戦出来るんです。
この高校生活で得られたモノは、ずっと自分の武器になるはずです。
もし高校の勉強に時間を奪われ、自分のやりたいことが出来ないと感じているなら、通信制高校の入学を検討するのもいいかもしれません。
僕の体験談が、少しでもお子さんやご自身の進学先選びの参考になれば幸いです。