心身症とは?定義・種類・原因・診断・治療方法、自律神経失調症などの類似した疾患との違いまでまとめ
心身症とは?定義をご紹介します
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心身症は特定の疾患を指す疾患名ではなく、身体疾患のなかでもこころの状態と身体の状態が相互に影響を及ぼしている状態を指す言葉です。
例えば、胃潰瘍(いかいよう)とは胃の粘膜がただれて深く傷ついてしまう疾患です。この発症には様々な要因がありますが、仕事がつらい、プレッシャーがあるといった過剰なストレスを受けたことが要因となって関わる場合があります。このような時に心身症であると言えるのです。
胃潰瘍であっても心理的な影響がない場合は心身症とはいいません。
また、あくまでも心身症は心理的な要因が関わる身体疾患であり、精神疾患ではありません。
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参考:日本心身医学会用語委員会/編 『心身医学用語事典第2版』2009年 三輪書店/刊
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参考:筒井末春ら/著『心身医学 (心身健康科学シリーズ)』2008年人間総合科学大学/刊
日本心身医学会の定義による心身症の定義は以下のとおりです。
「心身症とは身体疾患の中で,その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。
ただし神経症やうつ病など,他の精神障害に伴う身体症状は除外する」
(引用:日本心身医学会用語委員会/編 『心身医学』1991年10月第31巻 第7号 日本心身医学会 /刊)
http://www.shinshin-igaku.com/intro/jpm_1997_1987.html
心身症の種類・分類・症状
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心身症には現実心身症と性格心身症という2つの種類があります。
◇現実心身症
現実の生活における強いストレス環境に影響されるものです。この場合は大方、環境を改善すれば身体の症状も改善されることが多いとされています。◇性格心身症
本人のストレスの受け止め方やストレス対処の仕方に問題があるものです。この場合、身体面からの薬物療法だけでなく、認知行動療法などの心理療法により本人の思考パターンや行動パターンの偏りの改善が必要になることもあります。
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参考:心身症|Kumano’s Information Base HP
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参考文献: 筒井末春/著 『心身医学的ケアとその実践』 1989年南山堂/刊
心身症の症状は胃潰瘍なら上腹部の痛みや吐き気、片頭痛なら激しい頭痛といったように、疾患ごと、そして患者ごとにそれぞれ異なる症状を持ちます。
症状が現れる身体の部分ごとに、以下のように分類されます。
心身医学的配慮が必要な代表的疾患
◇呼吸器系
気管支喘息、過換気症候群など
◇循環器系
本態性高血圧症、本態性低血圧症、起立性低血圧症、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)など
◇消化器系
過敏性腸症候群、胃・十二指腸潰瘍、機能性胆道障害、潰瘍性大腸炎など
◇内分泌・代謝系
糖尿病、甲状腺機能亢進(こうしん)症、神経性食欲不振症、神経性過食症など
◇神経・筋肉系
筋緊張性頭痛、片頭痛、慢性疼痛(とうつう)性障害、チック、痙性斜頸(けいせいしゃけい)、筋痛症、吃音など
◇皮膚科領域
アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、円形脱毛症、皮膚瘙痒(そうよう)症など
◇外科領域
頻回手術症、腹部手術後愁訴(いわゆる腸管癒着症、ダンピング症候群ほか)など
◇整形外科領域
関節リウマチ、腰痛症、多発関節痛など
◇泌尿・生殖器領域
過敏性膀胱(神経性頻尿)、夜尿症、インポテンス、遺尿症など
◇産婦人科領域
更年期障害、月経前症候群、続発性無月経、月経痛、不妊症など
◇耳鼻咽頭科領域
メニエール症候群、アレルギー性鼻炎、嗄声(させい)、失語、慢性副鼻腔炎、心因性難聴、咽喉頭部(いんこうとうぶ)異常感など
◇眼科領域
視野狭窄(しやきょうさく)、視力低下、眼瞼痙攣、眼瞼下垂など
◇歯科・口腔外科領域
口内炎(アフタ性)、顎関節症など
心身症は、一般的にライフステージごとに現れる症状の性質が異なるとされています。
小児期の心身症の傾向としては、特定の器官に限定されず全身に症状がでるとされています。思春期、青年期には、偏頭痛や過敏性腸症候群などの身体の機能の障害が、成人期、初老期、老年期になるにつれて消化性潰瘍などに代表される身体の臓器(構造)の障害としての心身症になりやすい傾向があります。
子どもがかかりやすい心身症については以下のページで詳しく解説されています。
http://www.jisinsin.jp/detail/
参考:小児の心身症-各論|小児心身医学会HP
心身症になりやすい方の特徴
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心身症になりやすい方には特徴があると言われています。
性格面では、生真面目、頑張り屋、人からの頼まれごとを断れない、自己犠牲的、模範的な方がなりやすいです。
また、空腹感・疲労感などの身体の感覚への気付きが鈍かったり、自分の内的な感情への気づきや、それを言葉で表現することが難しい方も心身症にかかりやすいとされています。
ただし、これはあくまで傾向であり、全ての心身症にかかる方がこのような傾向があるわけではありません。
http://www.shinshin-igaku.com/intro/jpm_1997_1987.html
参考文献:日本心身医学会用語委員会/編 『心身医学』1991年10月第31巻 第7号 日本心身医学会 /刊
心身症の原因はストレスなの?
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心身症は、強い心理的ストレスが過剰に、長期間持続することが原因になりやすいです。
長期にわたり同じストレスが繰り返されることで、身体の弱いところに症状が現れてしまうとされています。
ストレスには家庭や職場、学校における人間関係だけでなく、妊娠、出産、災害、親族の死などがありますが、個人により何にどの程度ストレスを感じるかは大きく異なります。
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参考文献: 筒井末春/著 『心身医学的ケアとその実践』 1989年南山堂/刊
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参考文献: 小牧元ら/編 『心身症診断・治療ガイドライン〈2006〉2006年協和企画/刊
心身症と似ている病気は?仮面うつ病、自律神経失調症との違い
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ここでは、心身症と類似する代表的な病気である仮面うつ病と自律神経失調症を紹介いたします。似ている病気と間違えると、適切な治療方法が受けられず、症状が長引いてしまう場合もあるので注意が必要です。
仮面うつ病とは、「他の症状という仮面によって、うつ病本来の症状が見えにくくなっている」うつ病のことで、患者本人が身体的な症状を強く訴えているが、実は抑うつ症状が隠れているタイプのことです。
心身症と非常に類似している概念ではありますが、仮面うつ病の中心的な治療は薬物療法としても抗うつ薬の使用が中心であるのに対し、心身症は身体とこころの両面からの治療が重視されます。
症状の相違点としては、仮面うつ病は倦怠感や食欲不振、頭痛や肩こりなどの多種多様な症状が全身にみられるのに対し、心身症は胃潰瘍にみられるように身体のある箇所に症状が限定されることが挙げられます。
自律神経失調症とは、検査しても明らかな異常がみられないのに、肩こりやめまい、不安感等の様々な不快な症状が現れる状態のことです。
心理的な問題やストレスが原因である点は自律神経失調症と類似していますが、実際に身体の臓器もしくはその機能に明らかな異常がみられる点において自律神経失調症とは異なります。
詳しくは以下の記事を御覧ください。
http://ci.nii.ac.jp/ncid/BN05931143
参考文献: 筒井末春,中野弘一/著 『心身医学入門』 1989年 南山堂/刊
心身症の診断はどのように行われるの?
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心身症の診断は、いままで罹った病気や現在の症状、検査の結果に基づく身体面からの資料と面接や心理テストなどの心理・社会面からの資料を総合して病気の様子全体を把握します。
重大な身体の病気を見逃さないために、まずは十分な身体面の検査が行われます。どのような身体の病気なのか把握したあとは、その症状にこころと身体の相互影響があるかを確かめ、治療の目的や方針が設定されます。
こころと身体の相互影響を確かめるため、面接に加え心身両面の全般的健康状態を把握することを目的として行われるCMI(コーネル・メディカル・インデックス)検査、パーソナリティの特性やタイプを把握することを目的とした矢田部・ギルフォード性格検査(Y-G性格検査)などの心理・社会面の検査が行われることがあります。
また、心理的ストレスに由来する身体生理反応を調べるために心電図、脳波、マイクロバイブレーションなどの検査が行われることもあります。
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参考文献:日本心身医学会用語委員会/編 『心身医学』1991年10月第31巻 第7号 日本心身医学会 /刊)
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参考文献:小牧 元ら/編 『心身症診断・治療ガイドライン〈2006〉 』2006年 協和企画/刊)
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参考文献: 筒井末春/著 『心身医学的ケアとその実践』 1989年南山堂/刊
心身症に心当たりがあるときの診療科は?
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心身症を対象としている診療科は心療内科です。
とはいえ、心療内科と標榜していても実際は心身症ではなく精神疾患を専門としている場合もあるので、もし通いたい心療内科がある場合は、事前に電話して、自分が抱える悩みが対象かどうか調べることをおすすめいたします。
心身症の治療
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身体の症状に合わせた治療とともに、薬物療法や各種心理療法などを組み合わせて行われます。
治療の期間は一般的には2~3ヶ月から半年、長い場合には1~2年くらいかかるとされています。
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参考:日本心身医学会用語委員会/編 『心身医学』1991年10月第31巻 第7号 日本心身医学会 /刊
胃潰瘍や喘息などの本人が抱えている症状にあわせて、一般内科や各診療科で行われるような身体面からの治療が行われます。
食生活や運動、睡眠などにおける生活習慣の歪みも、症状と密接に関連します。生活療法では、規則正しい生活に正すために諸々の生活習慣や症状の経過などの記録を参考にしながら指導がおこなわれます。
薬物療法には、身体症状に対応する薬を用いた治療と、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などの向精神薬、漢方を用いた治療などがあります。
心身症を対象とする心身医学的治療法にはさまざまな理論・アプローチがあります。
身体からこころに働きかける自律訓練法やバイオフィードバックなどの行動療法、交流分析などが代表的です。その他にも音楽療法や森田療法などが行われることもあります。
まとめ
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心身症がある方は、胃の痛みや頭痛などの身体症状が前面に出ていることがほとんどのため、心理的アプローチを受けることに抵抗がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
心理的アプローチの必要性があるのに放っておくと症状が長引いてしまう可能性もあります。まずは医師に相談してみましょう。
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参考文献: 矢吹弘子/著筒井末春/監 『心身症臨床のまなざし』 2004年 新興医学出版社/刊
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参考文献:石津 宏/編『精神科領域からみた心身症 (専門医のための精神科臨床リュミエール)』2011年中山書店/刊