スーパーに行くと“音”にやられる!?ぐったりする息子の脳内で起こっていたことは…
子どもたちの困りごとの理解に…と見始めたNHKスペシャルの発達障害特集
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5月21日(日)に放送されたNHKスペシャルでの特集第1弾「発達障害 ~解明される未知の世界~」。放送からしばらく時間が経ってしまいましたが、以前録画したままになっていたものを、やっと見ることができました。
我が家には、9歳の娘、7歳の息子がおり、ともに自閉症スペクトラム障害と診断されています。
この番組を見ることで、子供たちへの困りごとの理解に繋がれば…と思い、再生ボタンを押したのですが、見えてきたのはそれだけではありませんでした。
スーパーに行くと必ずぐったりとしてしまう息子
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今回の番組の中で私たち家族にとても役に立ったのが、聴覚過敏の方がスーパーやカフェを訪れて、音の聞こえ方を説明してくださっている部分でした。
実は、小学1年生の息子も、幼いころからスーパーがとても苦手だったのです。
息子と一緒にスーパーに行く機会はとても少ないのですが、何かの折に連れて行くと、数分も経たないうちに疲れ果て、「もう帰りたい」と言い出します。
その疲れ方は尋常ではなく、立っているのもやっと。
せがまれて抱っこをすると、私の肩に顔を埋め、高熱を出した時のようにぐったりとしているのです。
スーパーを出た後も回復するには時間がかかり、その間はじっと顔を伏せて自分の世界に閉じこもってしまいます。以前まで、これは視覚優位の特性から、スーパーの情景や照明が負担になっているものだと、なんとなく考えていました。
しかし、番組の中で当事者の方が語ってくれた音の聞こえ方を知り、息子も聴覚過敏の特性から音の情報に圧倒され、苦しんでいたことがわかったのです。
番組に出演していらした方と息子がまったく同じように感じているかどうかはわかりません。ですが、ドライヤーや掃除機の音にも耳を塞いでしまうほどの聴覚の過敏性を持つ息子。
普通は聞き流してしまうような小さな音であっても、耳に突き刺さるように飛び込んでくることを想像すると、スーパーから帰るときの息子の疲れようにも納得がいくのです。
怒りの原因は「脳が上手く指令を出せていない」ことだった!?
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そしてもう一つの驚きは、私自身も聴覚過敏を持ち合わせていたことに気づいたことです。
本来、脳にはさまざまな音のボリュームをつかさどる司令塔のようなところがあって、その場に応じて必要な音と不要な音を判断し、不要な音に関してはボリュームを下げ、必要な音を聞こえやすくする働きがあるそうです。
ところが、自閉症スペクトラムのある人の中には、この司令塔がうまく働かず、自分に向かって目の前で話している相手の声も、後ろのお客さんの話し声も、食器がぶつかる音も、BGMも、すべて同じボリュームで耳に入ってきてしまう人がいるということでした。
実際に当事者の方が再現していた喫茶店での音の感じ方は、目の前の席に座って話しかけている人の声でも途切れ途切れにしか聞き取れず、会話を行うことが困難な様子でした。
思い返せば、私にも同じような体験がたくさんあったのです。小さなカフェでは集中すれば相手の話が聞き取れるのですが、それ以上の規模の場所になると他の音が耳を覆い尽くしてしまって、ところどころしか聞きたい話を拾えなくなってしまうのです。
その“ところどころの話”を拾うのにも結構な労力を費やす必要があり、結果きちんとした会話をするのが難しくなってしまいます。
特に子どもの声は笑い声であっても泣き声であっても、大音量で耳に突き刺さってくる感覚があるので、小学生や幼稚園などの集団に遭遇してしまうと、あらゆる方向からあらゆる声がキンキンと耳に攻め込んできて、ただその場にいるだけでもずいぶん我慢をしている状態になっていたのです。
そしてその状態で、子どもがふざけて飛び出してきたり、押し合いをしてこちらにぶつかってきたりすると、大人気もなく怒りの感情が湧いてきてしまっていました。
自分でも「小さい人間だな......」と思っていたのですが、聴覚過敏で音をコントロールする司令部が弱いのだと分かった今では、とにかくその場から離れることを心がけるようにしました。
楽しく盛り上がっている小学生や園児が悪いのではなく、それに怒りを覚えてしまう私が人としておかしいわけでもない。相手を責める必要も、自分を責める必要もない。
事実として、自分に関係のない音のボリュームを下げることができないという特性が自らにあることを理解できれば、それに対して工夫をして対策を考えることもできます。そうすれば、余計な怒りを感じる機会がまた一つ減り、穏やかに過ごせる時間が増えるということに気づくことができたのです。
「よくわからない」部分を考えることで楽になれることも
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わが家はたくさんの特性を持った人間の集まりですので、家族で出かけると全員が「よくわからないけどイライラしている」という状態によく陥ります。家に戻ると、それぞれが自分の殻に閉じこもってしまい、1時間以上誰も口を開かない、ということもよくあります。
しかし、発達障害特集を見て以来、この「よくわからないけど」という部分に疲労を回避するためのヒントが隠されているのではないかと思うようになりました。
自分では当たり前だと思っている聞こえ方が、実は脳を疲れさせていたり、よくよく考えてみるとこの場所に行くといつもイライラが募るという場所があったり。その原因を突き止めることができれば、疲れ方も大幅に変わってくると思うのです。
なので最近では、子どもたちと一緒に「どうしてイライラしたんだろうね?」「どこまでは平気でどの当たりから疲れた?」「あの音がダメだった?」「床が白すぎてまぶしかったかな?」などと原因について具体的に話し合うようにしました。
まだ「なんでだろう?」という回答の方が多いですが、「もう一度あのお店に行って疲れるかどうか、疲れるなら原因はなにか確認してみたらどう?」という感じに次のアクションを見据えた返事がかえってくることも増えてきました。
「よくわからない」をわからないままにしておくと、いつまでも対処のしようがありません。お子さまがぐったりと疲れてしまったとき、一度ゆっくりとその「わからない」部分を整理してみませんか?
そうして、1つずつ原因を突き止め無理なく出かけられる場所が増えれば、子どもたちは必要以上に消耗することなく、いろんなことにチャレンジできる機会が増えるかもしれません。
日頃からそう問いかけながら暮らしていくことで、お子さま自身が自分の得手不得手を把握し、快適に過ごせる手段を考える練習にもなるかも知れませんね。