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「完璧な世界」が崩れるのが我慢できない!憤る娘と交わしたシンプルな約束とは

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穏やかな時間が一変!娘の顔色が変わった瞬間

「完璧な世界」が崩れるのが我慢できない!憤る娘と交わしたシンプルな約束とは

出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10154000777

先日、知人から間違い探しの雑誌をいただきました。
この本の回答形式は、間違いを探したうえで、絵の中の間違いのないエリアを選択していくものでした。

1つの問題に、間違いのないエリアは1つだけ。そのエリアを探して、アルファベットで回答しましょう!そんな問題が100個ほど入った雑誌です。

ある夜、共に発達障害のある娘と息子が「ママ、一緒に間違い探しの続きをやろう!」と雑誌を持ってきました。娘と息子は間違いを見つけやすいように2人で並んで座り、その正面に私が座って楽しく取り組んでいました。

娘がペンを持って、みんなが見つけた間違い部分に〇を入れていく、和やかな時間が流れていたのです。

しばらくすると、ページの構成が変わり、息子が座っている側に書き込みをする箇所が移動しました。


私が「今度は息子が座っている方に問題があるから、〇を付けるのは息子にやってもらおうか」と声をかけると、娘の顔色がさっと変わったのです。

心底嫌そうに「えっ」と一言だけ発して眉間にしわを寄せてうつむき、荒い息を吐きながら自分の怒りと向き合っている様子が見てとれます。

今までであれば、瞬時に怒りの感情を爆発させペンを机に叩きつけていた娘が、一生懸命自分の感情と向き合っている。すごい進歩です。

とはいえ、余計な口出しはしない方がいいと思い、私は娘の苛立ちに気づかないふりをして、息子にペンを譲る様子を見守っていました。

しぶしぶ不機嫌そうな顔で参加しながら、息子がペンで〇を付けるたびに「ちょっと!そんなに大きく〇を書かないで!」「ペンが乾かないうちに手でこするから汚れたじゃない!」と注文を付けながら、娘の怒りはどんどん大きくなっていきます。

最終的には、息子が回答として書いたアルファベットの書き順に難癖をつけ、机に突っ伏してしまいました。

「みんなで楽しむ」から「完璧に記入する」に目的が入れ替わっていた

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どうして娘が怒っているのか理解できず、「ごめんね。
怒らないで、お願い」と謝っている息子に、「これはあなたの問題ではなく、お姉ちゃんの問題だから謝らなくてもいいの。でも、ちょっとだけ待ってくれる?」と前置きをして娘と話をすることにしました。

私「どうして怒りの感情が湧いてきたかわかる?」
娘「う~ん、よくわからない」

私「じゃ、最初に感じた気持ち、第一感情を探してみよう。ママが弟に〇付けをお願いしたことで、自分が信頼されてないと思って傷ついた?」
娘「それもあるけど、それだけじゃない気がする」

私「じゃあ、自分が書き込んでいた雑誌に人の手が加わるのがすごくイヤだった?」
娘「それ!ママ、それ!弟はきれいに〇が書けないし、おまけに字だって上手じゃないし!せっかくきれいに書いてたのに、すごくイヤ!」

娘の怒りの第一感情はここにありました。自分が思い通りに積み上げてきた世界を壊される“苦痛”が第一感情で、それが怒りに結びついたのです。私はこう続けました。

私「気持ちはよくわかるよ。でもよく考えてみて?なんのために一緒に間違い探しをしていると思う?
娘「みんなで楽しむため?」

私「そうだよ。
みんなで楽しい夜を共有するために間違い探しをしていたの。目的はみんなで楽しく過ごすこと。それなのに、いつの間にかあなたの目的は『完璧に記入して思い通りの誌面にすること』になってしまっていて、権利をはく奪されたと思って悲しんだり、誌面が汚されたと苦痛を感じて怒ってしまったんだと思う。ママもそういうところがあるからよくわかるけど、でもどうかな?みんなで楽しむどころか、弟はおびえているし、何よりあなたが一番苦しんでいるんじゃないかな?」

娘「私もこんなつもりじゃなかったの。一緒に遊べて楽しかったのに・・・・・・。ママ、お願いがあるんだけど、今度からは、今みたいに失敗しちゃった時に指摘するんじゃなくて、遊ぶ前に目的を伝えてもらえる?それだったら、自分でも意識できるし我慢もできると思うの。失敗した後に言われると、どうしても自分がダメな人間だって思って悲しくなるの」

私「わかった。いつかは自分で『今の場の目的はなんだろう?』って考えられるのがいいんだけど、最初は一緒に繰り返しやっていこう!いつか自分で考えられる日が来たら、きっとあなたの人生に役立つと思うよ」

少しずつ「完璧」を求める場面を判断できるように

「完璧な世界」が崩れるのが我慢できない!憤る娘と交わしたシンプルな約束とは

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こうして、家族でゲームをしたり、お友だちと遊んだりする時には「その場にいる全員で楽しむことが目的だよ」と声掛けをしておくことになりました。


すると娘もその場の目的を意識することができるようになり、いろいろな葛藤をしながら自分なりにその目的を達成しようとあれこれ工夫するようになりました。

アスペルガー症候群の娘は、その特性が"完璧主義"として表出することがあります。それ自体は、何かを成し遂げるときにはとても良い方向に作用します。ところが、他人にも完璧さを要求してトラブルを起こしたり、自分自身の苦手な部分にまで完璧さを求め、自分で自分の首まで絞めてしまうことも少なくないのです。

目的さえきちんと把握できれば、今度はそれに向かって真摯に向き合う真面目さも持ち合わせている娘。今から場の目的を意識し、他人を追い込まず、自分自身も苦しまずに過ごす経験を重ねていけば、きっと穏やかな人生に繋がるはずです。

そして、完璧さを求められる場面では、いかんなくその実力が発揮できるようになればいいなと願っています。

発達障害を抱える方が持つ特性というのは、押さえつけようとして抑えられるものではありません。
しかし、その特性をきちんと認識した上で、いかに本人や周囲が楽しく過ごせるか、その方法を丁寧に探していくことで、ステキな個性として捉えられる日が来るかもしれません。

将来のことを考えると大きな不安が襲ってきて、いたたまれなくなってしまう方もいらっしゃると思います。もちろん私もその一人です。でも、今目の前にいる子どもたちに寄り添っていくことが、きっと子どもたちの力になってくれると信じてがんばっていきましょう。

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