臨床発達心理士とは?臨床心理士との違いは?役割や資格取得の流れ、支援・サービスまとめ
臨床発達心理士とは?
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臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学等の専門的な知識を生かして健やかな育ちを支援する専門家です。
また、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちを支援対象としていて、人の生涯発達に関する臨床に携わる幅広い専門家に開かれた民間資格です。
人は年齢を重ねていくなかで、自分自身や家族関係、友人関係、学校生活や就職などさまざまな悩みや問題に直面します。それらの問題は環境や時間の経過、またその時々の支援の在り方によっても変化していきます。
したがって、生涯発達の中で出会うさまざまな問題の解決にあたっては、まず問題を正しく理解し、それに基づいて適切な支援を行う専門家が求められます。そこで誕生したのが「臨床発達心理士」の資格です。
現在、「~心理士」「~カウンセラー」などの名がついた心理士の関連資格は70以上にものぼると言われています。そのうち「臨床」という名称を持つ資格はいくつかありますが、「発達」という名前が付いているのは臨床発達心理士だけです。
つまり、さまざまな心理職のうち発達を専門とする資格ともいえるでしょう。
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参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編] 臨床発達心理士わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/24/4/24_417/_pdf
参考:本郷一夫「臨床発達心理士の専門性と果たすべき役割」
臨床発達心理士になるには?
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「臨床発達心理士」資格は、学会連合資格「臨床発達心理士」認定運営機構が認定している民間資格です。臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで年に1度、9~12月にかけて行われる資格審査に合格しなければいけません。資格取得までの流れとしては、申請書類の購入、申請手続き、一次審査(書類/筆記/業績等)、二次審査(口述審査)、資格認定といったステップがあります。
1. 発達心理学を中心とした心理学諸分野の科学的・理論的な知識
2. 人間が実際に発達する場に関する社会的・実践的な知識
3. 人間の発達をアセスメントし支援する臨床的な知識・技能
これらを習得するための基礎となる学問領域は「発達心理学」または「発達心理学隣接諸科学」です。
具体的には発達心理学、その他心理学、教育学、保育学、福祉学、小児科学、医学、看護学、リハビリテーション学、発達障害学、保健体育学、体育心理学、スポーツ健康科学、人間社会学、人間学、児童学、応用人間科学、コミュニケーション学、児童教育学社会学などです。
2017年度から資格申請制度が新しくなり、申請タイプが5つにまとめられました。
1. 発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程在学中または終了後3年未満
2. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の大学院を修了している
3. 臨床経験が3年以上あり、かつ発達心理学隣接諸科学の学部を卒業している
4. 大学や研究機関で研究職をしている
5. 公認心理師を取得している
変更点としては以下の2つがあげられます。
・国家資格である「公認心理師」資格取得者が申請できること。
・「公認心理師」資格が心理学系大学卒業以上を前提としていることから、発達心理学諸科学の大学や、短期大学や専門学校を卒業した人が申請できるタイプを廃したこと。
ただし、公認心理師資格は2018年度以降習得可能であるため、経過措置として2019年度までは旧制度での申請も受け付けています。
資格申請をするにあたって、自分の受けた教育歴と臨床発達支援に関する実践の経験年数に合わせて、以下に示す申請タイプの中から最も自分にあったタイプを適切に選びましょう。
また、資格を取得すると、「日本臨床発達心理士会」に入会するとともに全国に20ある支部のどこかに所属することが義務づけられます。さらに、資格の有効期間は5年で資格更新をすることも義務付けられています。資格更新は、試験ではなく資格取得後に十分な研修を積んだか、高い専門性を保持することに努めたかがポイントに換算され審査されます。http://www.jocdp.jp/license/flow/
出典:資格取得までの流れ|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構
http://www.jocdp.jp/wp-production/wp-content/uploads/2017/03/20160901171002-2.pdf
出典:資格申請新制度のご案内|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構
http://www.jocdp.jp/wp-production/wp-content/uploads/2017/03/2fe4ef625d9c7dfeb62355dfd0a3897b.pdf
出典:資格更新ガイドライン|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構
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参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内(金子書房.2017)p18~41
臨床発達心理士スーパーバイザーとは、臨床発達心理士になろうとしている人や臨床発達心理士になった人(スーパーバイジー)に対して、スーパービジョン(指導者から教育を受ける過程)を通して支援し、育成する役割を担う人のことです。
申請要件は以下の3つになります。
1. 臨床発達心理士の有資格者
2. 臨床発達心理士資格取得後、5年以上関連する業務・活動を継続
3. 臨床発達心理士資格を1回以上更新している
http://www.jocdp.jp/qualifier/supervisor/
出典:臨床発達心理士スーパーバイザーとは|一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構
臨床発達心理士はどのような人を支援するの?
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臨床発達心理士は赤ちゃんから高齢者までの年代の人を対象として発達を支援する人の資格です。そのため、支援の対象はとても幅広いです。具体的に以下のようなケースが支援の対象となることが多いです。
・新生児、乳幼児と保護者
・自閉症スペクトラム、知的障害、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害・知的障害の診断を受けた人
・育児不安、虐待、不登校、引きこもりなどの現代的問題を抱える人
・「気になる子」、障害の有無/グレーゾーンかの判断に対して悩みを持つ人
・社会適応や成人期・老年期の悩みを持つ人
臨床発達心理士の活躍の場と具体的な支援
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「臨床発達心理士」資格のある人が特定の職場にいるわけではありません。赤ちゃんから高齢者を対象として発達を支援する人のための資格であることから、資格を持つ人の活躍する場は多岐にわたります。
以下では、支援対象の年代別に具体的な職場やどのような仕事をしているのかを紹介していきます。
・新生児医療の場:育児不安の解消、愛着形成への援助など
・保育所/幼稚園:保育者、保育カウンセラー、特別支援教育コーディネーターとしての業務など
・家庭支援センター:親子広場スタッフ、子育て講座の講師、家庭相談スタッフなど
・保育巡回相談:主に行政からの委託で保育所、幼稚園を巡回
・乳児院/児童養護施設:カウンセリング、セラピーの実施など
・保健所/保健センター:妊娠中に両親学級の講師やグループワークのスタッフ、乳幼児健診および発達が気になる子どものフォローなど
・小中学校/高校/大学:教師として特別支援教育コーディネーターの業務など
・スクールカウンセラー:校内相談業務、保護者支援、校内研修会講師など
・教育委員会:教育相談、就職相談等の相談業務、心理検査の実施など
・発達支援センター:障害児童やグレーゾーンの子どものアセスメント、相談、療育など
・放課後デイサービス:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など
・学童保育所:指導員へのコンサルテーション、保護者支援など
・学童相談室:大学等での学生相談室でのアセスメント
・児童相談所:心理判定、相談、指導業務など
・特別支援学校:教育のアセスメント、指導評価の実施、保護者支援、教育機関への巡回相談など
・特別支援学級/通級指導教室/言葉の教室:教育のアセスメント、教育支援計画作成、校内特別支援コーディネーター業務など
・障害者施設/作業所:セラピー、カウンセリング、家族支援など
・高齢者施設:カウンセリング、セラピー、心理検査の実施など
・企業:企業内相談業務、心理調査など
・病院・クリニック(小児科・精神科・診療内科等):患者・保護者へのカウンセリング、患者へのセラピー、心理検査の実施など
上記の職種以外に、臨床発達心理士以外の資格を保持しているひとは、職種の幅にも広がりがあります。
臨床発達心理士の中には、他の資格や免許も有しながら職務に就いている場合も多いので、純粋に心理職として働いているケースばかりではありません。
例えば、家庭裁判所で調査官として仕事をする人、震災時に現場に赴いて支援をする人、研究者として働く人の中にも、臨床発達心理士の資格を生かして仕事をしている人が多くいます。臨床発達心理士の視点を持って、両者の領域で培われた専門性を活かして活動しているのです。
しかし、医師免許を有している場合でない限り、臨床発達心理士は医療行為全般(薬を用いた治療や障害かどうかの確定診断をすること)はできません。また医師にかかる場合は、健康保険が適用されますが、臨床心理士に相談する場合は基本的には健康保険が適用されません。
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参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p89.90
臨床発達心理士による発達障害に対するアセスメント
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有効な支援を行うためには、その問題を解決するために情報を集め、それをもとにその人にあった支援の方法を計画していく必要があります。これをアセスメントと言います。
ここでは、一つの例として発達障害の支援計画を立てるための代表的なアセスメントについて具体的に説明していきます。
◇対象の支援ニーズに関する情報収集
聞き取りや観察によって生育歴や育児についての情報や、発達の経過、現在の行動や状況など日常生活に関する情報を集め、支援ニーズを知ることから始まります。これは、保護者や保育者、家族などと共同で行うことが望ましいです。
◇対象を取り巻く環境に関する情報収集
園や施設に通っている場合は、それらの環境に関する情報を収集する必要があります。また、家庭環境や地域環境についての情報の収集も、支援を考える際に重要になっていきます。これらの情報をもとに問題の暫定的な把握をしたうえで、発達状態の情報を収集します。
◇知能検査
知能検査ではおもにIQ(知能指数)の値を指標とすることが多いです。従来は、精神年齢と生活年齢をもとにもとめる比例IQを用いることが多かったですが、最近では、同年代の平均との隔たりをもとにもとめる偏差IQが中心になってきています。
知能検査を行う目的は認知発達の水準を科学的・客観的に評価することで、その人の得意分野、不得意分野を分析することです。
知能検査の結果からわかるその人の得意、不得意分野から療法の方向性を決定するために使われます。
代表的な知能検査に以下のようなものがあります。
・ウェクスラー式知能検査
・田中ビネー知能検査
◇発達検査
発達検査では日常生活や対人関係などにおける子どもの発達基準を数値で表したDQ(発達指数)を算出します。子どもが成長していくには、発達段階に適したアプローチが必要になります。そのため、発達段階を客観的に知るための手段として発達検査は使われます。
ただし、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。
代表的な発達検査には以下のようなものがあります。
・新版K式発達検査
・乳幼児精神発達診断法
◇スクリーニング検査
発達障害に関するスクリーニング検査は、どの精密検査を行うべきかの判断や潜在的な発達遅れや発達障害の可能性を検査するために行われます。スクリーニング検査は、たくさんある発達障害のうち、その子どもに当てはまる可能性がある障害を絞り込むためのものです。スクリーニング検査には網羅性が重要視されるため、正確性はそれほど高くはありません。
仮に検査で陽性が出たとしても精密検査するかどうかの判断基準になるだけで、発達障害であることが確定するわけではないということに注意が必要です。スクリーニング検査は乳児健康診査、1歳6ヶ月健康診査、3歳児健康診査などの場でも活用されています。
代表的なスクリーニング検査には以下のようなものがあります。
・STRAW
・M-チャート
・ADHD-RS
・LDI-R
・PARS
◇行動観察
臨床発達心理士は言葉をかけた時の子どもの反応や、話し方、質問を正しく理解しているのかなどのさまざまな反応をできるだけ詳細に観察して、子どもの特徴やくせを見つけようとします。日常場面における観察だけでなく、臨床発達心理士が状況設定した場面における観察も行うこともあります。
上記の生活情報と発達状態の情報をふまえて、それぞれの特徴にあった支援計画を立てていきます。本人に対する支援や保護者への支援だけでなく、施設との連携体制を確立させたり、担当保育者などへの支援計画を立てたりすることもあります。
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参考:藤崎 真知代「育児・保育現場での発達とその支援 (シリーズ臨床発達心理学) 」(ミネルヴァ書房.2002)p66-70
臨床発達心理士と臨床心理士との違いは?
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これまでの説明にあるとおり、「臨床発達心理士」とは、赤ちゃんからお年寄り、子育て中の保護者や障害のある人など、幅広い世代、状況の人たちの発達・成長・加齢に寄り添い、人の健やかな育ちを支援する専門家です。
それに対して、「臨床心理士」とは、同じ心理系の民間資格ですが、不登校や二次障害、精神障害などのこころの問題をかかえた人に対する心理療法や、こころの問題を予防するための研究にもとづいて、人のこころにアプローチする専門家です。
つまり、得意とする支援対象やケースに違いがあります。しかし、どちらの資格も、医療・教育・保健・福祉分野においては活躍の場が同じこともあり、両方の資格を取得することでより広い視点でより広い職域において活躍することができます。
支援を受ける人は、一人ひとりの発達の特徴に寄り添った支援をしてくれる専門家を見つけることが大切になってきます。
http://fjcbcp.or.jp/about/
出典:臨床心理士とは|日本臨床心理士資格認定協会
臨床発達心理士と公認心理師
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いままでは、心理学系の国家資格はありませんでした。そのため近年、心理学系の国家資格をつくろうとする動きがありました。
その結果、公認心理師法という法律が平成27年9月9日に成立して、9月16日に公布されました。公認心理師法は、公認心理師という国家資格を定めるとともに、国民の心の健康を増進させていくことを目的にした法律です。
公認心理師法の大部分は公布の日から2年以内に施行されることになっています。厚生労働省によれば、平成29年9月15日までに施行される予定になっています。また、第1回国家試験は、平成30年までに実施する予定と発表されています。
公認心理師はさまざまな分野にまたがる領域横断的な汎用性のある資格です。それに対して、臨床発達心理士は、臨床発達心理学・発達臨床支援の専門性を有する資格です。
公認心理師の資格取得には以下のいずれかに該当する必要があります。
1. 「公認心理師になるために必要な科目」を心理学関係の大学と大学院を出て修了する
2. 大学で公認心理師になるために必要な科目を修めて卒業し、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設で、規定の期間以上心理関係の仕事に従事する
また、公認心理師の職域としては、保健医療、福祉、教育、司法・法務・警察、産業・労働の5領域があげられています。この資格は、医師免許や法曹資格同様に、国家試験に合格し一度取得してしまえば終身その身分が保障されるという考えも多く、臨床発達心理士をはじめとした心理系の取得と併せて資格を取得する人が多くなることが予想されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html
参考:公認心理師について|厚生労働省
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参考:一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構[編]わかりやすい資格案内[第3版](金子書房.2017)p10-15
まとめ
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10417000423
臨床発達心理士とは、人の発達・成長・加齢に寄り添い、発達心理学などの専門的な知識を生かして幅広い年代、状況の人たちの健やかな育ちを支援する専門家です。
発達支援を必要としている方の困りごとにあった相談先や、サポートを受けられる場の選択肢のひとつとして、臨床発達心理士があるということを知っていただき、よりよい支援を受けられるきっかけになれば幸いです。
また、資格制度の変更があったり、新しく公認心理師という国家資格が認定されたりと、手続きや選択が複雑に感じられますが、だからこそ今後より一層発達領域の専門資格として、臨床発達心理士の技能がとても重要な役割を担います。発達支援の仕事をしたいと考えている方が、その専門性の高さを活かしてご活躍されることを願います。