「きっとまた泣きわめく…」トラウマだった自閉症の長男との散歩が思い出させてくれたこと
つないだ手を振りほどかれる。泣いて駄々をこねる。長男と一緒に歩くのが辛い…
自閉症の長男は幼い頃からこだわりが強かったため、外に連れ出すのが困難でした。車や電車といった乗り物は大好きなのですが、徒歩で出かけると、決まって座り込んで泣き出すのです。
歩くのが疲れた、行きたい方向と違っていた――おそらくそういった理由だったと思います。
つないでいた手を振りほどき、地べたに座って「あー!」と叫ぶ長男…。
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自閉症という診断が下る前だったこともあり、私は泣きわめく長男が理解できませんでした。
次第に散歩するときは長男をベビーカーに乗せ、定型発達の双子の次男とお喋りしながら一緒に歩くようになりました。ベビーカーに乗れなくなってからはできるだけ歩かなくていいように、タクシーを使うようになりました。
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長男に対して申し訳ないとは思ったのですが、いつも座りこまれてはどこにも行けません。
正直、パニックになる長男の姿を見るのは辛く、恥ずかしくもあったのです。
タクシーがつかまらない!不安だけど一緒に歩こうか
それから何年か経った日のことです。長男は8歳になっていました。
持病があるため定期的に病院に通っているのですが、通院日に困ったことが起きたのです。いつも病院へは電車で行き、最寄りの駅まではタクシーを利用しているのですが、その日はタクシーが一向につかまりません。
また座りこんで泣くのではないか――不安を覚えながらも、仕方なく私は長男と駅まで20分の道のりを一緒に歩くことにしました。
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あれ、長男の様子が前と全然違う…?
外に出た途端、長男は自分の小さな手を私の手に絡めてきました。そしてぎゅうっと握りしめたのです。
小さい頃、どんなに手をつなごうとしても振り払っていたのがうそのように、長男は自分から手を握りスタスタと歩いていきました。時折下から私の顔を仰ぎ見てはにこにこと笑顔を向けます。一緒に歩いていることが楽しくて仕方ないことがその表情からよくわかり、私も温かい気持ちになりました。
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突然立ち止まった長男が口にした言葉は
そうして手をつないでしばらく歩いていたのですが、突然長男がぴたりと立ち止まりました。
そして私に向かって大きな声で言ったのです。
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驚きました。長男が魚という言葉を知っていただけでなく、一生懸命私に伝えようとしたことに。
それからも長男は何か見るたびに、見た物をどんどん口にしていきました。
「ケーキ!」「ねこ!」「アジサイ!」
長男の顔には、発見を一緒に共有しようとする喜びがあふれていました。もう、私の手を振り払って泣き叫んだ幼い頃の姿はどこにもありません。
ゆっくり、ゆっくり。5年後に次男と同じ場所にたどりついたんだね
単語を口にする長男を見ながら、ふっとある記憶が蘇りました。それは定型発達の双子の次男が、ものの名前を覚えたての頃、ちょうど3歳頃でしょうか――同じように見た物を片っ端から私に教えてくれていた5年ほど前のことです。
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看板に書かれた文字を読み上げ、道端に咲いた花を見て、名前を教えてくれた次男。四季の移り変わりを感じながら次男と散歩していた頃の記憶。ああ、この子はあの頃の次男に追いついたんだ――
言葉でやりとりできないし、一緒に歩いてたってきっと楽しくなんてないだろう、きっとまたつないだ手を払いのけるんだ――私が長男に対して、そう思い込んでいた長い長い間、彼の心はちゃんと成長していたのです。そして5年前、次男が立っていた地点に、長男も今ようやくたどりついたのです。
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そのことが涙が出るほど嬉しくて、私はしゃがみこんで、小さな長男の頭をしばらく撫で続けていました。