【発達ナビの読書週間】精神科医・斎藤環先生のオススメ本
斎藤環先生に聞いた、発達ナビユーザーにおすすめしたい本!
ひきこもりを長年支援してこられた精神科医の斎藤環先生。先日発達ナビが行った『ひきこもり新聞』木村ナオヒロさんとのトークショーも盛況でした。
そんな斎藤先生は批評本も書かれているほど、まんがやアニメにも造詣が深いのです。今回は専門書から話題のマンガまで、バリエーションもゆたかな本を教えてくれました!
『発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい』
「自分が自分の先生なのだ。」(斎藤環先生)
アスペルガー症候群当事者の綾屋紗月氏と小児科医・熊谷晋一郎氏による当事者研究。
発達障害のない人からは「感覚過敏」「こだわり」などの言葉でくくられてしまう特性。発達障害のある人がどのように感じているのか、その世界が綾屋さんの目を通して丁寧に語られます。
保護者や支援者など、発達障害のない人が、発達障害のある人の世界を想像し、理解しようとすることが、彼らとつながるために重要だと気づかせてくれる本です。
『夜廻り猫』
「猫は、寄り添って人を癒やす。」(斎藤環先生)
育児に疲れた時にパパ・ママに読んでほしい本は?とうかがったところ、斎藤先生が教えてくれたのは、ツイッターで話題となった8コママンガ。
第21回手塚治文化賞短編賞受賞作の『夜廻り猫』です。
「泣く子はいねが~」と夜更けの街を見まわるのは、なんと猫の遠藤平蔵!涙のにおいをたどって悩んでいる人を見つけ、話を聞きます。ただ寄り添うだけで解決はしないその距離感はまさに猫。ちょっと疲れた時や悲しい時にちょうどいいあたたかさで読めるマンガです。
『ジェーン・エア』
「子どもたちよ、これが”物語”だ。」(斎藤環先生)
「子どもに読んでほしい本」として斎藤先生が挙げてくれたのが、イギリス文学の名作『ジェーン・エア』。
幼くして孤児となった家庭教師のジェーンと裕福な主人ロチェスターは次第に惹かれあいます。身分の差やロチェスターの過去など、様々な困難が二人の前に立ちはだかり、一度は彼のもとを去ったジェーンでしたが…。
全てを失っても、大きな障害も、愛の前には障害ではなくなるという、ジェーンの想いに心打たれる恋愛物語です。
『治療文化論―精神医学的再構築の試み』
「わたしの、たった一人の“師”。」(斎藤環先生)
斎藤環先生の座右の書が、本書。日本の精神病理学を代表する医学者・中井久夫氏の代表作です。
統合失調症やPTSDの研究者として知られる中井氏ですが、歴史にも精通し、詩の翻訳やエッセイの名手としても活躍していました。『治療文化論』では精神医学と文化の両面から「病気とは何か」「何をもって治療と言うのか」を探ります。
斎藤環先生プロフィール
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斎藤環
(さいとうたまき)
1961年、岩手県生まれ。
1990年、筑波大学医学専門学群環境生態学卒業。医学博士。
爽風会佐々木病院精神科診療部長(1987年より勤務)を経て、2013年より筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。
また,青少年健康センターで「実践的ひきこもり講座」ならびに「ひきこもり家族会」を主宰。
専門は思春期・青年期の精神病理、および病跡学。
著書に 『文脈病(青土社)』『社会的ひきこもり(PHP研究所)』
『ひきこもり救出マニュアル(PHP研究所)』『ひきこもり文化論(紀伊國屋書店)」
『生き延びるためのラカン(バジリコ)」『ひきこもりはなぜ『治る』のか?(中央法規出版)』, 『ひきこもりのライフプラン』(共著: 畠中雅子, 岩波書店), 『オープンダイアローグとは何か』(医学書院)