おさまっていた癇癪が突然ぶりかえす。大声は自閉症の長男のSOSのサインだった!?
おしゃべりできるようになって癇癪がおさまってきた長男に安堵
自閉症の長男は7歳まで話すことができませんでした。思いをうまく伝えられないためでしょうか。長男は癇癪をおこして床に頭を打ち付けたり、絵本を破ったりといった行為を繰り返していました。
そんな長男も、7歳の誕生日を過ぎたころから単語が出始めました。簡単なやり取りができるようになってくると癇癪が少しずつ減っていったのです。
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今年の4月、特別支援学校の3年生に進級した頃まで長男の機嫌の良さは続いていました。大きくなったんだなと落ち着いた長男の姿を見ながら私はホッとしていました。
せっかく落ち着いていたのに、再び不安定になった長男
ところが夏休みが終わったころのことです。
家での長男の様子が変わっていったのです。突然「あ~!」と鼓膜が破れるほどの大声を出したり、手当たり次第に物を投げつけたり…明らかに気持ちが不安定になっているのが分かります。
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「大きな声を出さないで!」
なだめてもすかしても長男は叫びやみません。いったい何が原因なのか…私はわけがわからず不安と苛立ちが募っていきました。長男が通う病院の主治医の先生に相談して漢方薬を試してみたりしましたが、叫ぶ、投げるといった行動に変化は見られませんでした。
学校でも大声を出していた!?でも順応性の高い長男に限って…
ちょうどその頃長男の学校で個別面談がありました。
長男のクラスは担任の先生が二人いるのですが、一人の先生が産休に入られたというお話がありました。
「学校でも大声をあげることがありますね。
その声に驚いた他のお子さんも耳を塞いでしまうんです」
先生は言葉を選びながら言いにくそうに話されました。
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「また落ち着いてくれるといいんですが」先生は申し訳なさそうにぺこりと頭を下げられました。
やはり学校でも…思わずため息がでました。けれど長男は今まで、クラスメイトや担任が代わったからといって態度や行動に大きな変化はありませんでした。自閉症という診断にも関わらず、人が好きで順応性がある方でした。先生がいなくなってショックだからといって大声で叫ぶことに繋がるだろうか?そもそも、先生がいなくなったからといって大声で叫ぶほどショックを受けるなんてことがあるのだろうか?
長男の気持ちがわからないまま、私は学校を後にしました。
秋の終わり頃。大声が減り、すこしずつ元に戻った長男
それからしばらくの間は大声に悩まされていたのですが、少しずつ秋が深まっていくにつれ長男の大声を出す回数が減っていったのです。
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徐々に徐々に落ちついていく長男を見ながら不思議に思いました。
どうして元に戻ったのか…私は主治医の先生に再度相談してみました。
何が原因だったのか?主治医の先生に相談してみたら…
「担任が代わることで情緒不安定になることがあるでしょうか?」
私がそう訊ねると先生は大きくうなずきます。
「ありますね」というお返事でした。
「でも今までは、進級してクラスメイトや担任が代わってもすぐ慣れていたんですよ。家での様子も普通でしたし…」私がそう言うと先生は穏やかな笑顔で言いました。
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「今回は急に担任の先生が代わられたんですよね?たぶんシュウちゃんは環境の変化についていけずに苦しかったんでしょう。今はやっと慣れてきたんじゃないかな」
先生はそう言うと椅子に腰掛けた長男を見ながら、よかったねと言って頭をなでてくださいました。
子どもはいろんな形でSOSを出している
帰り際、先生はこんな話をされました。
「自閉症はね。100人いれば100通り症状が違います。進学や進級、環境が変わった瞬間泣いて登校拒否になるお子さんもいます。シュウくんのように叫んだり物を投げたりして別の形で発散する子もいる。でもみんな心のバランスを取ろうと一生懸命なんですよ」
その話を聞いてはっとしました。
私自身、長男はどこでもすぐ馴染む子だから大丈夫だと安易に考えていたからです。
でもそれは、表に見えないだけで長男は長男なりに必死に頑張っていたんじゃないか、あれは長男のSOSだったんじゃないか――気付いてやれなかったことを申し訳なく思いました。
何より、担任の先生がいなくなって淋しい思いをしていないだろうか――そう長男を心配することもなかった自分に腹が立ちました。
もちろん気付いてやったからといってどうしようもないことだけれど、せめて子どものサインを見逃さず寄り添ってあげられる親でありたい、そんな風に思いました。
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