2018年7月4日 11:00
ズレを抱えたままの存在が、愛おしいー『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』公開記念トーク(後編)
どうやって演じるか、監督さんとすごく話しあったんですけど、最後に「思ったことをそのまま表現してください」と言われました。
鈴木押見さんはその撮影現場にいらっしゃったんですよね。
押見南さんの後ろのほうで、スケッチしながら見ていました。肩にすごく力が入って背中が丸くなってて、本気で泣きながら、絞り出すようにして叫んでいましたよね。ああ、本当に志乃になってくれたんだなと思って、嬉しかったです。映画のはじまりから、志乃はずっとうつむいていましたよね。
南うつむいてましたね。
押見最後もうつむきながら叫ぶところがすごくよかった。
鈴木そのあとに来るラストは明かせませんけど、志乃の日常が少しだけ新しいものになったことを予感させるシーンでしたね。
南志乃にもこんなことが起こるんだって、私も嬉しかったです。
押見ラストシーンでも、志乃はちゃんとどもってるんですよね。
鈴木そういえば映画のなかで加代が歌う「魔法」は押見さんの作詞ですよね。
押見マンガで加代が歌っていた詞に曲をつけていただいたんですが、この「魔法」は「普通」に置き換えても意味は同じだと思うんです。
鈴木普通にならなくても、伝えること、つながることはできるんだって、加代から志乃へのメッセージのような歌でしたね。
「魔法」作詞:押見修造作曲:まつきあゆむ
魔法をください魔法をください
みんなと同じに喋れる魔法
みんなと同じに歌える魔法
それさえあれば
それさえあれば
私は外へ出かけてゆくよ
でもどこへ行こう
でもどこへ行こう
私は今すぐ帰りたい
私は今すぐ帰りたい
みんなの知らない秘密の場所に
あのコの座る校舎の裏に
魔法はいらない魔法はいらない
みんなと同じに喋れる魔法
みんなと同じに歌える魔法
魔法はいらない魔法はいらない
みんなと同じに喋れる魔法
みんなと同じに歌える魔法
魔法はいらない魔法はいらない
みんなと同じに喋れる魔法
みんなと同じに歌える魔法
つばを吐き捨ててバスに乗ろう
私は遠くに出かけていくから
映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』より
http://www.bitters.co.jp/shinochan/
押見これは加代が初めて作った曲なんですが、蒔田さんの歌い方にもメロディにも、初めて作った稚拙な感じがほどよくあって、すごくよかったですね。
鈴木映画の中盤で、志乃と加代が初めて街に出て歌うシーンもよかったですね。