2018年7月4日 11:00
ズレを抱えたままの存在が、愛おしいー『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』公開記念トーク(後編)
僕はあそこから泣いてしまいました。
押見2人で歌う、そのキラキラ感がすごい。
南歌うのは好きなんですけど、人前で歌うのは緊張します。むちゃくちゃ練習しました。
押見志乃が歌うとしたらこんな感じだろうな、と思いましたね。
濁っているものを「返す場所」
Upload By 柳瀬徹
押見僕は吃音について親にまったく相談しませんでしたし、誰にも相談しませんでした。でもちょっとした糸口、閉じた世界にちょっとした穴が開けば、考え方が変わるチャンスはあると思うんです。僕自身は学校なんて行きたくなければ行かなくていいと思っている親なんで、あまり参考にはならないかもしれませんが。
僕には小4の娘がいるので、同級生のお母さんたちと接する機会が多いんですけど、子どもについての認識が自分自身にくっつきすぎているんじゃないか、そう映る人が少なくないんです。
子どものつまずきはあくまでも子どものものであって、自分自身の人生のつまずきではないと思うんです。気持ちはわかるんですけど、自分と違う人間として、もう少し切り離したほうがいいんじゃないかな、と。自分とは違う人間なんだから、お互いの違いは否定しないほうがいいんじゃないですか。14歳に戻ったら、自分の親にそう伝えたいですね(笑)。
南『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』をはじめて読んだときに、もちろん考え方が変わったんですけど、これは誰にでもあることだな、自分の中にもあることだな、ってすごく思いました。
自分の中にある白くないものとか、濁っているものとか、真っ黒なものとか。志乃を演じてみて、濁っているものを返す場所があるんだ、って思いました。
どこに戻せばいいかわからなくなるときもあると思うんですけど、自分の濁っている部分も、きっと元のままでいられる場所が、あるんじゃないかって。
押見「返す場所」って、すごい表現ですね。そうか、返してあげればいいんだ。今、すごく腑に落ちました。
映画の志乃は、はたして「返す場所」を見つけることができたのでしょうか。その答えはぜひ劇場で確かめてください。
(完)
文: 柳瀬徹
写真: 鈴木江実子
スタイリング(南さん担当): 道券芳恵
ヘア&メイク(南さん担当): 藤尾明日香(kichi inc.)
Upload By 柳瀬徹
2018年7月14日(土)より、「新宿武蔵野館」ほか全国順次ロードショー。