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不登校の私を連れてキャンプへ――。父の不器用な優しさが、私を少しずつ変えてくれた~父の日に寄せて~

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兄弟を両肩に乗せてくれる、力持ちな父

不登校の私を連れてキャンプへ――。父の不器用な優しさが、私を少しずつ変えてくれた~父の日に寄せて~

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父は若いころ漁師をやっていたため、がっしりとした体格でした。私と兄が小さい頃は、右肩に兄、左肩に私を乗せて遊んでくれたものです。

サングラスをかけるとなかなかの強面。駐車場でトラブルになりかけたとき、相手の車の人が勢いよく車から出てきたと思ったら、父の顔を見るなり回れ右をしてすぐ車に戻り走り去って行ったというような逸話があるほどです。

知らない人から見たら、一見怖そうな父ですが、私たち兄弟に手をあげたことはありません。しかし、たった1度だけ叩かれた記憶があります。

優しかった父が、1度だけ私を叩いた理由

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私が小学校に入る少し前のこと。当時の私は気に入らないことがあると、すぐ他の子どもを叩いてしまいました。
そのことで、幼稚園から連絡があったのでしょう。ある日、父は私を居間に呼び出して目の前に座らせ、バシッ!と私の頭を叩きました。いつも優しい父に突然叩かれ、私は痛さとショックで動けませんでした。

そんな私に、父は「叩かれると嫌な気持ちになるだろう?だから他の人の頭を叩いちゃだめなんだ」と言ったのです。

父に叩かれた時の衝撃は、とても嫌なものでした。そしてまた、他の人にとっても叩かれることはとても嫌だと気づきました。それ以来私は誰かを叩くということはなくなりました。

不登校になった私は、だんまりを決め込んだ

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小学校高学年になったころ、私は不登校になりました。


そのころ父は出張が多く、ほとんど家にいませんでした。ふだん私の対応をするのはもっぱら母でした。父はたまに帰って来ては「今のうちからこんなに休んで、将来どうやって食っていくつもりなんだ?」と言ってきました。そんな言葉をかけられた私は下を向きじっとしていたり、いたたまれなくなって自分の部屋に逃げ込んだりしていました。

それが面白くないのか、父の私に対する言い方が徐々に厳しくなっていき、「本当にそれで生きていけると思ってるのか?」「考えが甘い」「世の中が見えてない」と言われるようになっていきました。私は反論する気力もなく、だんまりを決め込むようになりました。

このころは、父とほとんど話をしていなかったと思います。

アウトドア派の父が、私を外に連れ出すようになって

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「父親の言い方がきついのはあなたにもっと反発して欲しいからだ」と母親に言われるも"ガス欠状態"だった私。
そのことが伝わったのか、少しずつ父の態度も変わってきました。

それまでは私にプレッシャーをかけ、責めるような言い方が多かったのですが、「休むのはいいけれども、将来どうやって生きていくのかは考えておかなきゃいけないよ」と優しい口調になったのです。

たまに職場に連れていってくれて、父が働いている姿を見せてくれることもありました。当時の私は「家でゆっくりしていたいなぁ」なんて思っていましたが、今考えてみると働くことがどういうことなのかを父なりに私に見せたかったんだろうと思います。

他にも父の趣味である釣りに連れ出してくれたり、いつの間にかテントを手に入れてキャンプにも行くようになりました。当時、同級生から「学校休んでるのになんで外で遊んでるの?」と言われるのが嫌でほとんど外に出ない生活をしていました。さらに、かなりのインドア派であまりアウトドアは好きではないのが正直なところです。しかし、父が外に連れ出してくれて、過ごした時間はいい気分転換になっていました。


父の買ってくれた1冊の技術書が、今の自分につながる

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中学校になり不登校も落ち着いてきたころ、父も出張ばかりだった仕事が一段落して、よく家にいるようになりました。

そのころに、口を酸っぱくして言われたのが、「とにかく手に職をつけろ」ということでした。「プログラマーになりたい」と思いはじめていた私にとって、父の言葉は心に自然に刻まれました。

高専に入学したばかりのころだったでしょうか、父親と本屋に行く機会がありました。書店で、私がとある技術書をじーっと見ていたところ、父はその本を手に取り「しっかり勉強しろよ」と言って買ってくれました。わが家は裕福ではなかったし、技術書はそれなりの値段がしました。父が使えたお小遣いの結構な割合を占める買い物だったと思います。そして、それは私にとって初めて手にした技術書でした。


その本に書いてあったことをみっちり勉強するところから、私の技術者人生は始まりました。今でこそ数十冊の技術書を持っていますが、この時父に買ってもらった1冊は大切に本棚にしまってあります。

大人になった今、困ったことを相談できる人生の先輩に

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一時は気まずい雰囲気もあった私たち親子ですが、社会人になってから、困ったことがあったりすると父に相談していました。

うつでつらい状況になった時も「そんな会社辞めて少し休め」と言ってくれました。その一言に背中を押され、当時勤めていた会社を辞める決心をしたことを覚えています。その言葉のおかげで、ゆっくり休め、現在の会社で希望の職に就き、働けるようになったとも感じています。

たまに帰省すると、仕事の近況を話したり、アドバイスをもらったり、時には父の政治についての愚痴を聞いたりして過ごします。

保護者の皆さんの中にも、不登校の子どもとどう接していいのか困惑している方がいるかもしれません。
父が私にしてくれたことすべてが「正解例」というわけではありませんが、外へ積極的に連れ出してくれたこと、将来のために本を買い与えてくれた父の不器用な優しさがあったからこそ、今の私につながっているということを伝えたいと思います。

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