2018年7月30日 10:00
コントロールを外れて暴れる体と、終わりのない追いかけっこー『どもる体』伊藤亜紗さん×発達ナビ編集長
鈴木: 傷だらけ(笑)。
伊藤: 自分が当事者であることについて研究するのってこんなに難しいんだなって思いました。
運動は、「相手からもらうもの」でもある
鈴木: 本を読んでいて印象的だったのが、「連発」型の吃音があった人が、「難発」型の吃音を後天的に獲得するというお話です。周囲の人からのフィードバックなどを通して、自分の吃音が特殊であるという価値判断を内面化し、相手からの見られ方を意識して一言目が発しにくくなる、という…。
伊藤: 運動って人からもらうものでもあるんですよ。自分の体ではあるんですが、周りのフィードバックを受けるなかでいろいろ調整がかかって、今この状態が成り立っているんだと思うんです。
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私、1年間フランスに住んでいたんですが、帰ってきてこういうポーズをよくするようになっていたんです。フランス人、よくこのポーズしますよね。
それがうつっちゃって(笑)考えることとか、しゃべることの一部になっちゃってるんですね。
周囲からのフィードバックを、自分の中に組み込んでいくなかで、どんどん運動が変化していく…もちろん、難発の場合には、周囲のネガティブな反応が引き金になることが多いので、単に「うつる」のとは違いますし、本人を傷つけるような関わりは言語道断ですが、本質的に、運動というのは他者との関係のなかで形作られていくものなんですよね。
鈴木: その感覚、わかります。海外の大学院に留学していたときに仲良くなった日系アメリカ人の友人がいるのですが、彼と2人で話しているときは、英語と日本語のチャンポンなんですね。で、日本語を使うときは彼の日本語のたどたどしさに合わせて、僕のボキャブラリーも減るという(笑)相手の影響って知らず知らずのうちに受けているなあって。伊藤: ありますね。特に会話は共同作業なので相手に合わせるというのがある。それも単に相手と同一になるというよりカップリングしてうまくなるようにしますよね。
新しい環境への変化に、「体が暴れる」ということ
鈴木: 今回のテーマで取材をしていくころには、もう伊藤さんご自身の症状は「隠れ吃音」と言えるぐらいには目立たなくなっていたとのことですが、より症状が大きかった頃の吃音経験をお聞きしてもいいですか。
伊藤: 子どもの頃から吃音はありましたが、あまり悩んだりはしなかったんですよね。