【新連載!】え!?そこなの?自閉スペクトラム症の息子・ヒルマの「カッコいい」基準
進級準備で息子が選んだ筆箱は
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お母さんになって10年になりますが、わたしは息子(ヒルマ)のことがよくわかりません。それはきっとヒルマが赤ちゃんの頃から、何かと予想通りに行かず、途方に暮れてきた実績があるからだと思います。
だから息子が選んだ真っ黒なだけの筆箱の、カッコよさがわからなかったときも、特に気にしなかったのです。
その筆箱がカッコいい意外な理由
「カッコいい理由」がわかったのは、筆箱についている帯を外して、名前を書こうとしたときでした。あわててヒルマが言ったのです。
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おどろきました。ヒルマは筆箱についていた、紙製の帯が気に入っていたのです。
「いや、これね、フツーは外して使うやつだから~」そう言って笑い飛ばせたらどんなに楽でしょう。
発達凸凹さんのヒルマにとって、こんな風に思っていたのと違うってことが、ひどく受け入れ難いことのようなのです。
思っていたのとちがう!そのとき母は…
こんなとき、わたしの頭はフル回転します。ヒルマの地雷を踏まないように、動揺を悟られないように、慎重に考えます。
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ヒルマがシールと思っている帯は、実際には紙を巻き付けてあるだけなので、すぐに外れてしまいます。透明なフィルムで、筆箱ごと包んでしまおうかとも考えました。
でも…。と、そのときふいに思ったのです。
それってやっぱり違うかも。
とにかく説明してみよう
冷静に思い直したわたしは、とにかく説明してみることにしました。
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筆箱の帯は、お店で目立つために付いていること。このまま使ってもいいけれど、すぐにやぶれてしまうこと。そしてこれからは買う前に、「この部分は外して使うよ」って教えるねと約束しました。すると──
思いがけない息子の反応
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説明を聞いたヒルマは、「はずしていいよ」とすんなり納得。「はずしてもカッコいいから」と笑顔です。
その反応にわたしはビックリ!だって筆箱を買い替える覚悟でしたから。
その夜、さっそく夫に報告しました。
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ゆずれない困りごとが減っていく。出来なかったことが、出来るようになる。
小さな一歩がこんなにもたくさんあるから、これってラッキーだなあって、今ではおだやかにそう思えます。
進級準備もあと少し
さて、進級準備も残すは赤白帽に名前を書くだけというときのことです。帽子から値札を取ろうとすると、すかさずヒルマが言いました。
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え!値札も!?
いやいやいや、赤白帽に値札つけたままかぶっている子、見たことないから!
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「¥700」と印字されただけのシールのどこが、息子を魅了するのでしょう。
筆箱のときと同じ説明をくりかえしながら、わたしはやっぱり息子のことが、さっぱりわからないと思うのです。
生後から小学校入学までの葛藤の日々と、実体験を通して学んだ、親子が笑顔でいられる習慣や暮らしの工夫を伝えるエッセイ。
発達障害、グレーのお子さまを持つママはもちろん、すべてのママにすぐに役立つヒントが満載。