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頭ごなしの「ダメでしょ!」ではなく!接客のプロの神対応に学ぶ、自閉症息子への伝え方の極意

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息子からの私へのクレーム


『発達障害に生まれて』(松永正訓著/中央公論新社)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子です。

あるとき、息子がパニックを起こし自傷しました。腕にはひどい歯型がついていました。原因は私の対応の仕方でした。

息子はとても耳がいいです。よく電車の走る音を聞いて「○○電車の○○系、各駅停車だ」とあてられる子がいますが、息子はトイレに流れる水の音を聞いて、型番を言いあてることができます。

ただ、耳がよすぎるためか聴覚の過敏があり、耐えられない音は徹底的にダメなのです。ちなみに、今NGな音は“食器洗い洗浄機”と“人の咳”です。


私が風邪をひくと…


私が風邪を引くと、当然咳が出ます。そんなとき「お母さん、大丈夫?」という私の体調を思いやった態度をとることはありません。なぜなら、咳の音が息子にとっては耐え難いものだからです。だから、ものすご~く嫌な顔をします。

そして、インフルエンザに罹ったときも、病気の私に向かって…

「うるさい!」
「あっち行け!」
「出て行け!」
「何月何日に治るのか?」

というひどい言いっぷり。

私は、体調も悪かったせいで、つい…

「病気の人になんてこと言うの!」
「どうしてお母さんに優しくできないの!」
と言い返してしまいました。

さらに
「そんな酷いことばかり言うんだったら、お母さんは出て行くからね!」
「咳をする人と一緒にいられないんだったら、一人暮らししたら?」
とまで言ってしまいました(私も言い過ぎですね)。

ただでさえ咳の音でイライラしているところに不安まであおってしまったようで、ワーワー泣き叫びながら自分の腕を噛みつき自傷。
壁やドアを蹴り、パソコンのマウスを投げ、早々、ふて寝してしまいました。

接客のプロの仕事ぶりを思い浮かべる


次に風邪をひいたときは、別の対応ができました。そしてこのとき、息子はパニックになりませんでした。

私「咳の音が嫌なんだね。すごく辛いよね。お母さんも咳をすると苦しいから辛いんだ。早く治すように頑張るから、もう少し我慢してね」

私はこのとき、ホテルやお店の人たちの、お客さまへの対応を思い浮かべていました。息子からの要求が無理難題、理不尽なことに思えても…、「まず相手の立場に立って共感すること」。
そのうえで、できない事は丁寧に説明すること。神対応ができる接客のプロは、この「共感」と「説明」ができています。

頭から否定したり非難したりするのではなく、まず最初に「もし、私がお客様の立場だったら同じように感じると思います」の気持ちを示すか示さないかで、相手が抱く感情はまったく変わってくるからです。

ホテルのフロント対応に学ぶ


例えば、夜、突然ホテルにやってきて「宿泊したい」と言ってきたお客さんがいたとします。当日の飛び込み客ですので、例えば会社の緊急事態で遠くからやってきた人かもしれません。乗ろうと思っていた電車が突然の運休になってしまったのかもしれません。きっと何かどうしようもない事情があるはずです。

そんな心理状態のとき、フロントで「本日は満室でございます」とそっけなく言われたらどう感じるでしょうか。


でも、「せっかく、お越し下さったのに本当に申し訳ございません。あいにく今日は満室でお部屋をお取りすることができないのです」と言い、途方に暮れた客が語る”ホテルに飛び込んだ事情”に耳を傾け、「今回はあいにくお部屋が空いておらずお泊りいただくことができませんでしたが、またぜひお越しください」と伝え、併設のラウンジのコーヒーを振る舞うなどしたら、相手の気持ちはまったく違ってくるでしょう。

スーパーで、子どもがこんなことをしていたら…?

頭ごなしの「ダメでしょ!」ではなく!接客のプロの神対応に学ぶ、自閉症息子への伝え方の極意

Upload By 立石美津子

以前、スーパーの売り物の精肉のパックを触っている子に、頭ごなしに「コラ!」「ダメ!」「いい加減にしなさい!」と親御さんが怒っている場面に出あいました。この叱り方だと子どもは「コラ!ダメ!」に条件反射するだけで、また保護者がいなければ同じことを繰り返すかもしれません。では、子ども自身が納得して触らないようになるためにはどうしたらいいのでしょう…。

こんなときでもまず共感です。商品に触りそうになる手をパッと止めつつ…
「お肉のパックって、プニョプニョしていて触りたくなるよね。」

そして説得です。
「でも、これはまだお金を払っていないからあなたのものではないの。
あなただって誰かが触った指跡のついたお肉は食べたくないよね。だから、売り物は見ているだけにしようね。」

わが子からの無理難題に、ガミガミ対応してはお互いにツラくなる…。そんなときは、共感・説明を心に対応できれば、子どもこちらの話に耳を傾けられ、お互いに詰まらず暮らせるのではないかなと思います。

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