家族でぷよぷよ!?目指すはプロゲーマー!? e-sportsに見えた多様な参加の可能性とはーーePARA大会を取材
障害の有無にかかわらず競える場としてスタート!
「ePARA 2019」は午前10時からスタート。メインMC岸大河さんを中心にバラエティー番組のようなスタイルで進行、YouTubeでも会場の様子を配信しました。まずはゲストの紹介から。ePARA 2019アンバサダーとなった乙武洋匡さん、車いすユーチューバーの寺田ユースケさんが挨拶しました。
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ePARA 2019アンバサダー乙武洋匡さん
「車いすユーザーとして生活する中では、ほかの人ができるのに自分ができないことが多くて、ストレスをためることも多少あると思うんですが、きょうは、障害の有無に関係なくプレイできるという状況を作っていただいたので、ぞんぶんに楽しみたいです!」
車いすユーチューバー寺田ユースケさん
「足が悪い中、昔から野球をやってきました。(子ども時代に)eスポーツがあれば、もしかしたら人生の選択肢がもっとたくさん広がっていたのかもしれないと感じています。今日も車いすの子どもたちがいっぱい来てくれているので、ゲームで活躍できる姿を見せて、選択肢を増やしてもらえたらと思います!」
メインMCによる「このePARAという大会が障害者雇用につながり、社会的課題の解決や、eスポーツの更なる発展、障害がある人・ない人にとって初の共通種目として戦える、唯一のユニバーサル競技となることを目標に、ePARA 2019をここに開催いたします」という宣言のあと、大会が始まりました。
「ぷよぷよ」が、チームスポーツに進化する!?
午前中は「ぷよぷよ大会」エキシビションマッチ。
第一回戦は、寺田ユースケさんVS 乙武さん。2人とも車いすユーザーですが、ゲームにおいては不利と見えた乙武さんの圧勝となりました。
次に、鳥越勝さんVS吉成健太朗さん(国立八雲病院からのオンライン参加)の対戦ののち、ePARA主催者加藤大貴さんの「戸田市加藤家」VS夫婦で参加の「武蔵野市加藤家」と続きます。
加藤家対戦では、それぞれ家族が1組になってゲームを展開。家族で1人のプレーヤーとなるスタイルは、操作ボタンをそれぞれが担当するということ。この試合は、戸田市加藤家、主催者の加藤さんの勝利となりました。加藤さんは、「私たちは4人家族なので、4つのボタンをそれぞれ担当して練習したんです。ぼくは左ボタン、ママは回転ボタン、上の子は右ボタンというように。
3才の子どもはよくわからないけど、『僕もやりたい!』っていう参加したい気持ちをくんで、落下ボタン(笑)。ひたすらボタンを押し続ける役です。
実は、家族とこんなふうに、ひとつの目標に向かったのって、初めてのことだったと思います。練習中、6才、3才の子どもと、妻も一緒になって『ほら右!右!』とか、『そんなこと言ってない!』とか、わいわい言いながら、家族で盛り上がるのが楽しかったんです」と話してくれました。
格闘技対決!キャラクターの闘いの中に公平性が見えた!
昼の休憩をはさんで、午後のゲームは「鉄拳7」。3人一組のグループが4組参加、トーナメント方式で優勝争いが繰り広げられました。
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激しい闘いを大画面で見ているうちに、画面上のキャラクターたちには、プレイヤー自身が乗り移っているような気分になります。パワーとスピード、展開の速い攻防の中でビシッとKOが決まっていく様子を見ていると、リアルな格闘技中継を見ているときと同じ感覚になります。
バーチャルなものとはいえ、この動きを生み出すこと自体がすごい!と感じるのです。
この大会では、プレイヤーに障害があってもなくても、それはハンデにはならない、一緒の土俵に上がって対戦することができるということに価値がある、と実感しました。
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チーム「Whereabouts」(発達障害などがある選手で結成)は、チーム全員、日ごろからゲームを楽しんでいるけれど、格闘技ゲームは初めての経験だったといいます。(実際にプレイしたのは3人、1人は控え選手)。
「すぐ負けちゃってくやしかった!でも、練習いっぱいして、コマンドも覚えて、来年も参加したいです!」(カホさん)、「格ゲー以外にも、パズル系、リズム系とか参加できるゲームのバリエーションが選べたらいいなと思いました。でも、楽しかったです!」(まやさん)という感想で、次回もあったら、参加したい!と意気込んでいました。
元公務員・成年後見の専門家が企画!障害があっても参加できるeスポーツ大会への思いとは?
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大会終了後、主催の加藤大貴さんにお話を伺いました。加藤さんは元裁判所書記官 。
たくさんの判例を見ているうちに、高齢者の成年後見人問題に着目。「高齢者とその家族が安心して暮らせる社会を創る」手伝いをということから、「認知症等で判断能力が不十分な人を地域社会が支える仕組みづくり」を目指して、NPO市民後見支援協会理事・品川成年後見センター職員に転身しました。
ePARAを企画したそもそものきっかけは?
「私はふだん、障害のある人と高齢者の法律上のサポートをする、成年後見人に関する仕事をしています。そのなかで関わる高齢者、障害のある人を見ていて、みんなテレビやゲームを楽しんでいると知ったんです。何か一緒の楽しみを共有できる空間はないものかなと考えました。
障害のあるなし関係なく、誰でも参加して楽しめる、そんな場をつくりたいと思って、『ePARA』というスポーツ大会を開催する運びになりました。開催できて、実際に選手同士の公平性というか、ほんとうに誰でも参加できるし、ゲームの中で対等に戦えることがうれしかったですね」
ゲームは社会的コミュニケーションツールになるはず!
ゲームというと、なんとなく孤独に部屋にこもってするもの、というイメージがつきまといますが、使い方・やり方次第で変わるものだった、とも加藤さんは言います。
「ゲームは、デバイスやルールを工夫することで、楽しみが増すんですよね。
私が家族で『ぷよぷよ』をしたように、誰かと分担して1個のプレイヤーになるということも可能。ふだんはチームスポーツじゃないゲームでも、工夫することでチームスポーツになるんです。
複数人で1個のプレイヤーになる、という発想にはきっかけがありました。この大会に招待した右半身まひの女性から、「『ぷよぷよ』をやりたいんだけど、体が半分動かないから、障害のない人をサポートにつけていいですか?」と言われて、すごく悩んだんです。それって公平なの?と。じゃあ、どうしたら公平なスポーツとして成り立つのかと考えたら、そもそも複数人で分担するルールにしちゃえばいいんじゃないか、と考えました。こんなふうに、ゲームはもっと、社会的なコミュニケーションツールになるはずです。eスポーツは、コミュニケーションのスポーツだという手ごたえを、実際にやってみて感じました。」
どんな人でも、「参加したい」「何かボタンを押したい」という気持ちがあれば、参加できるということを、ePARAは実証してくれたようです。
さまざまな特性に合わせたケアは必要。でもそれはクリアできる問題
運営上で大変だったことは、どんなことだったのでしょうか。
「まずは会場選びでした。eスポーツの専門の会場は都内にいくつかあるんですが、車いすの人も入れる会場がなくて。発想を変えて、人がたくさん集まれて車いすも対応の場所として、カラオケパーティールームを会場に選びました。機材はこちらで運び込むことにして、エレベーターがあり、トイレも車いす対応というところにしたわけです。
今回は、会場の広さやスタッフの人数のこともあって参加いただけるチーム数が限られていました。初めて実施して分かったことが多くあるので、ルールなども整えてもっと大きな規模で第2回を開催したいと思います。
初の「ePARA」開催、そのホームページには、こんな記述があります。
大会やイベントを通して世の中の人に、”困難や限界を超える精神や力”を発信し、気づきを与えより良い社会の実現を目指します。
https://2019.epara.jp/
障害者雇用の場では、まだまだ働く側の「できること」を、雇う側が正しく理解していないという現実があります。でも、ePARAを見ていると、障害がある人・ない人、異なる障害がある中でも、ゲームの中では公平に競い合えることがよく分かります。また、デバイスやルールを変えたら、公平性が増すことも、加藤家対戦となった「ぷよぷよ」の例からも分かりました。
障害がある人・ない人にどうしたら公平な機会を与えられるかに、ゲームの中で「気づく」ことが、障害者雇用の偏見もなくしていくことにつながっていく、ということを実感できる大会でした。第2回開催にも期待がかかります!
ぷよぷよ:(販売元)株式会社セガゲームス
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