音が「うるさい」だけじゃなくて「痛い」!?聴覚過敏ASD兄の日常をラクにした新アイテムと、際立つ共感覚の悩み
ざわざわした場所が苦手なタケル...
我が家の長男タケルは、ASD(8歳で診断を受けたときはアスペルガー症候群)があり、とても音に敏感です。赤ちゃんの頃から、少しの物音で起き、たくさんの人が集まって喋っているような場所では、むずがって泣き出すような子どもでした。
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多くの幼児が好むような音の出るおもちゃも、甲高い音が出ると投げて壊してしまいます。3~4歳ぐらいまではそれがなぜか分からず「おもちゃを投げるなんて乱暴だなあ」と思っていました。言葉にして伝えられるようになってから、「うるさいから遠くにやって!」などというタケルの気持ちがやっと分かったのです。
8歳になってアスペルガー症候群(当時)の診断を受け、療育センターに行くようになってから、そういった音への過敏さがASDの症状の一つだったと知りました。
原因が分かっても対処法がなかった...
しかし、原因が判明したと言ってもこれといった対処方法もなく...うるさい音の出るものは家に置かない、人が大勢集まるところには行かない、学校で音に疲れたときは人のいないところで休ませてもらう、もしくはもう帰宅させてもらう、などといった方法で何とか乗り切っていました。
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小学校時代は学校がうるさいからと登校を渋ることもあったタケルですが、中学高校は山の上の少人数制の進学校で、奇跡のように静かな日々を過ごすことができ、無事に卒業することもできました。
しかし、次は大学。大人として新しい環境の中で、多くの学生たちとともに学校に通わなければなりません。
どうなることかと思っていましたが...
ノイズキャンセリングイヤホンがすごかった!
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解決してくれたのは、技術の進歩でした!
耳の中に装着するノイズキャンセリングイヤホンが、以前よりかなーりお安く手に入るようになっていたのです!お父さん(ADHDがある)が持っていたノイズキャンセリングイヤホンを試着したタケルは、直ちに1か月分のバイト代をつぎ込み、自分用のノイズキャンセリングイヤホンを手に入れました。
耳が痛くなってしまうので、ずっと装着していることはできないのですが、ノイズキャンセリングイヤホンの威力は絶大。ポケットに入れているだけでも安心です。おかげで、今までは固まって動けなくなったら困るということで、行くことができなかった大きな駅に行って電車を乗り換えることなどもできるようになり、行動範囲も広がりました。
タケルがもつ「共感覚」とは...
しかし、日常的な雑音に対処できるようになると、そのぶん際立ってきたこともあります。それは、大きな音を聞いたときのこと。
タケルには大きな音に痛みを感じる「共感覚」もあり、物がぶつかったような音や削れるような音を聞くと、身体が痛いと感じてしまうのです。
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共感覚とは、「ひとつの感覚の刺激によって、別の知覚が不随意的に起こる」現象。音を聴くと色が見えるという「色聴」や、文字を見ると色が見える「色字」など色に関係するものが多いとされていますが、痛みを感じると色が見えるとか、辛さを感じると手の平にちくちくした感覚を感じるというような触覚と関係するものもあるそうです。
思えば、タケルは10歳ぐらいの頃、ヘッドホンをつけて聴いていた音楽を「ぼつぼつしている」「ざらざらしている」と表現していました。そのときは音楽の印象やリズムをそのように例えているのだと思っていましたが、本当にその感覚を身体中で感じていたのでしょう。
共感覚は個人に固有の感覚で、基本的には「治る」といった性格のものではないらしいです。"怪我もしていないのに、痛みを感じている"と思うとかわいそうですが、本人は逆に「え?みんなは痛くないの?じゃあ、なんで大きな音を嫌がるんだい?」と言っているぐらいなのであまり気にしていないよう。
また本当に怪我をしたときに、音のせいだと勘違いするのではないかと聞いてみたのですが「痛い!と思う感覚は一緒だが、一瞬後に"これは本当の怪我の痛みだ"と分かる。
」とのこと。うーん、まだまだ色々と謎が多いです。