「自分も障害になったのかな」インフルエンザの高熱で暴れたきょうだい児の小6息子が、不安げに発したその一言にドキッとして...
息子が小学6年生の時の出来事
小学校6年の冬、息子は季節性のインフルエンザにかかりました。病院で処方された抗ウイルス薬を服用した後も高熱は暫く続きました。
夜、私と娘が話をしていると、隣の部屋で寝ていた息子が何か訴えてきました。
「どうした?しんどいの?話し声がうるさかった?」
娘との話を中断し息子の部屋に向かうと、息子がドアの前に立っていました。
何やら不穏な様子
息子はこちらの問いに答えず、唸り声を上げていました。
「吐き気がするの?トイレに行く?」
私は息子をトイレに誘導しましたが、背中をさすっても息子は上手く吐くことができないようでした。
唸り声は徐々に大きくなっていき、息子は便器に顔を突っ込んだまま便座の蓋の開閉を始めました。
「ちょっと⁉頭、挟まってるよ!危ないって!」
私が制止しても息子はやめる気配がありません。
唸る息子が自ら“便器怪獣に食べられてるような仕草”を繰り返すのを見て私は思いました。
「これは熱せん妄かも…」
知識はあったけれど
1~10才台の子どもが発熱に伴って異常な行動をとる『熱せん妄(もう)』は、ニュースなどで見て知ってはいました。
実際、娘が小さいときに、インフルエンザの高熱でうなされながら布団の中で足をバタバタさせていたのを(私も横で寝込みながら)目にしたことがありました。
2才の幼児が布団の中で足をバタバタするぐらいなら「熱でうなされているのかな?怖い夢でも見たのかな?寝ぼけているのかな?」と思う程度ですが、11才の男子が立ち歩いて大声を上げる様子を目の当たりにすると、知識はあってもやはり動揺します。
救急外来を受診
幸いそのときは家に主人がいたので、叫び声を発しながら便器に頭を突っ込んで便座の蓋を開閉する息子を主人に押さえてもらい、その間に私は救急に電話をしました。
救急隊の人に支えられ救急車に乗り込む頃に息子は落ち着き始め、受け答えもできるようになっていました。病院に着いて医師の診察を受けたときには日時や名前、自分がいる場所なども言えていました。
医師によるとインフルエンザの流行時期だったこともあり、その日は息子と同じような症状の子どもが10人ほど救急外来を訪れ、そのうち何人かは経過観察の為そのまま入院になったそうです。
息子は会話もできるようになっていたので、解熱剤を処方され帰宅することになりました。ただ、今後も同じような症状が起こり得るので、暫くは大人が傍で様子を見ているように言われました。
熱が高い間は要注意
熱が続いた数日間は、医師に言われた通りできるだけ私か主人が息子の傍にいるようにしました。玄関や窓はダブルロックをし、台所のコンロもロックを掛けました。
熱せん妄と思われる症状はその後2回ありました(いずれも寝起きの時)。
目は開いているのですが、やはりこちらの呼び掛けには応じることはありません。2度目以降は“便器の蓋パカパカ”はありませんでしたが、トイレの前で叫んだり、廊下で頭を抱えてうずくまったりしました。私は息子が落ち着くまで背中をさすりしました。
落ち着くと息子は再び布団に戻り眠りました。
私は息子の様子から、「身体は起きているけど脳は眠っていて夢を見ている状態なんだろうな」と思いました。
熱せん妄よりも私が驚いたこと
息子が回復した後、私は息子と熱せん妄を起こしたときの話をしました。本人にはその時の記憶ほとんどありませんでした。
息子「最初の時だけ少し覚えてる。多分夢だと思うんだけど、部屋の中に何人か人がいて、その人の頭の上にしずくの形をした魂みたいのが見えたんだ。」
私「そりゃ怖いね。逃げ出したくもなるね。」
息子「でもその後は記憶ないな。俺、どんな様子だったの?ホントに大声出したりしたの?」
私はそのときの様子を絵に描いて息子に見せました。
すると...
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息子「・・・。俺、障害になっちゃったのかな?」
私「!?」
息子「だって姉さん、暴れてた時あったじゃん。」
私は息子のこの言葉にとても驚きました。
暴れる=障害!?
数年前、娘が高校生のとき、家で暴れていた時期がありました。
息子はそのとき、小学校の低学年でした。
それまでの姉からは想像できないほどの豹変ぶりを彼は目の当たりにしていました。
そのときの様子がよほど印象深かったのでしょう。息子は今回自分が暴れた原因が、姉と同じように障害由来ではないかと心配したようです。それは“きょうだい児ならでは”の発想なのでしょう。
私は息子に熱せん妄の説明をし、姉が暴れた原因とは違うことを伝えました。
思春期の息子に対し
今年中学生になった息子は、
「親に自分の部屋に入って欲しくない」
「友達に姉の障害の事を知られたくない」と思うようになってきています。
親を疎ましく思い、友達に大きく左右されるといった典型的な思春期を迎えています。
また、精神的にも知的にも息子は姉を追い越し始めてきています。
息子が私に「姉さんに対してどう接したら良いかわからないときがある」と言ったこともあります。
小学生の時とは明らかに違ってきています。
今まで事あるごとに娘や主人に対して障害の特性について対話を重ねてきたのと同様に、これからはきょうだい児である息子に対しても、娘の障害について丁寧に話をしていく必要があると感じています。
おまけ
息子が回復するまで同じ部屋で寝たり、日中そばでずっと見守ったり、熱せん妄をおこした際には抱きしめたり体をさすったり、と濃厚接触をしていたにも関わらず他の家族にインフルエンザは感染りませんでした。
マスク、消毒、手洗い、うがい、換気などの対策をすれば、家庭内感染の予防はできるんだなぁ、と実感できたできごとでもありました。
おしまい