自閉症息子の小学校選び。特別支援学校に進学、小3で特別支援学級への転校も経験。学校連携で活用したツールの紹介も
息子の場合
私の息子は知的障害を伴う自閉症です。現在20歳、療育手帳(愛の手帳)を所持しています。就労移行支援事業所まで一人で電車を乗り換えながら通所することや、簡単な家事手伝いは行うことができます。一方、こだわりが強く、時にはパニックを起こして暴れることもあります。
息子は、小学校入学前、知的障害があること、着替えなどの身辺自立がまだ出来ていなかったこともあり、特別支援学校への進学を選択しました。知的障害があるのに小学校、中学校を通常学級のカリキュラムの中で過ごしてしまうと、出来るようになるであろうことも身につかない恐れがあると考えたからです。息子の障害の程度を考えたとき、教員数と担当児童数の割合にも不安がありました。
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※個別の教育支援計画・個別の指導計画については、通級による指導の対象者も策定義務あり
※自治体の予算により、担任以外に補助員がつく場合もある
※特別支援学校教員免許支持率は全国平均であり、地域によっても異なる
特別支援学校に入学してみると息子のクラスは教員2名に対し児童5名でした。
すぐに個人面談があり、個別の教育支援計画と個別の指導計画が作成されることになりました。
私から「靴ひもを結ぶ練習をさせたいので、蝶結びをマスターさせたい」と伝えると、個別の指導計画の中に“紐結びを習得させる”と記載されました。
担任の先生は息子のために教材を作り、毎日個別学習の時間で練習させてくれ、2週間でできるようになりました。
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特別支援学級のある小学校へ転校
小学2年生のとき、東京都の指導主事の巡回があり「そろそろ特別支援学級に転校させてもいいのではないか」と言われ、近くの公立小学校の特別支援学級に3年時から転校しました。
息子のように特別支援学校に入学をしても、発達の様子に合わせて、途中から特別支援学級のある小学校に転校することもあります。我が子の状態や教員数、支援内容の情報を集めて、子どもに合った環境を選択をするのが良いと思います。
知的障害がない場合
現在の制度では、知的障害を伴わない発達障害児の場合、情緒障害特別支援学級への入級をすすめられることがあります。知的障害がない場合は、知的障害特別支援学級への進級は認められない場合があるので注意が必要です。
通常学級に在籍し、通級や特別支援教室(東京都の制度)を利用している場合、“個別の教育支援計画・個別の指導計画”が立てられます。これらを利用していない場合は個別の教育支援計画の作成は学校側に義務化されていませんが、診断があれば作成していただけるよう学校に申し入れることもできます。また、通級制度の利用を検討することもできます。
サポートブックを活用
学校の先生方は、自閉症についての知識は持っているでしょう。ですが、我が子については0歳から育ててきた親のほうががよく分かっていることも多いと思います。苦手なこと、得意なこと、パニックを起こした時の対処法などを担任に伝えておくとよいと思います。
そこで、サポートブックをつくり、連携してみるのはいかがでしょうか。
サポートブックに記載するのは下記のような内容です。
・成育歴
・子ども本人の特性(どんなことが苦手で、どんなことが得意か)
・子どもが理解しやすい指示の伝え方
・パニックを起こしたときの対処法
・絶対に食べられない給食メニュー
・絶対に避けてほしいこと(急に音楽を鳴らすのではなく事前予告し、小さな音から徐々にボリュームを上げる等)
・保育園・幼稚園からの細かい申し送り
・主治医や療育施設からのアドバイスの共有(発達検査・心理検査の結果を渡す)
・クラスメートとの相性(どのようなタイプの友達が苦手なのか、どんなタイプの子とウマが合うか)
書籍やネットの資料をドーンと渡すことは控え、分かりやすくまとめたものを渡しましょう。
「知られたくない」と思わずに
親は順番的には先に亡くなるので、子どもの人生に伴走し続けることはできません。
ですから、子どもの障害を家族の中だけで隠すのではなく担任、ママ友、地域、クラスメートにカミングアウトし、地域や支援者とつながりをつくっておくことが大切だと思います。
スペシャルな教育
息子が小学校に入学したとき特別支援学校は“養護学校”、特別支援学級は“特殊学級”という名称でした。息子が小2になったとき学校教育法が変わり特別支援学級・学校という名称に変わりました。特殊な子どものための教育という発想ではなく、子ども一人ひとりの状態(教育的ニーズ)に合わせて特別な支援を行うという方針をあらわした名称となったのです。
スクールバスに書かれた「○○特別支援学校」の名前を見て「特別に支援されるなんて、嬉しいな…」私はそんな感覚を持ちました。
私は成人した知的障害者の移動支援の仕事をしているのですが、特別支援学校の卒業生でもある利用者の方が「僕はスペシャルスクールに通っていたんだ」と言っていました。
「なんて素敵な言い方なんだろう」と思いました。
執筆/立石美津子
(監修:井上雅彦先生より)保護者にとって、お子さんの就学先・進学先は子育ての中で大きな悩みになります。
一般的な学校・学級の特徴を知るとともに、お子さんが通う地域の学校を実際に見学したり、いろいろな人の意見を聞いたりすることで情報を集め、最終的にお子さんにとってより良い判断をされることが望ましいです。
また、コラムにあるように、学校・学級を決めても、お子さんの発達によって最適な教育環境を選び直すこともできます。
サポートブックについては、「~してほしい」という要求の文体より「~していただけると、~できることが多いです」という書き方が望ましいでしょう。家庭と学校でお子さんの様子が違うことがあるので、先生が実際に経験されたことをもとにサポートブックを更新していくと良いですね。