「おしまい」が分からない自閉症息子。スムーズな「切り替え」をどう教える?療育の先生から教わった『魔法の10カウント』とは
好きな物事ほどなかなか「終わり」「切り替え」ができなくて困る日々
自閉症と知的障害のある息子、Pは遊んでいるときや、テレビを見ているときなどに、こちらがそろそろ終わりにさせたいと思っても、終わりの意味を理解していなかったので、まだ自分が納得するタイミングではないのに急に終了されることで癇癪につながるということがよくありました。
例えば集団療育中に、自分の好きなおもちゃで遊んでいるときに、次の設定を行うためにおもちゃは片付けないといけないという場面があります。そんなときに先生やお友達が片付けを始めたとしてもPは「片付けないといけない」という周りの状況や空気が理解できていないので、まだ遊びたいという自分の気持ちの方が勝り、片付けを促すと癇癪が起こってしまいました。
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療育で教えてもらった方法は?
そんなPに有効だったのは「10数えたら終わりにする」という方法でした。
何かを終わりにする前には必ず10数え、最後に「おしまい!」と言うのですが、言葉で指示をするだけではなく指を上に向けて開いた両手をすぼめながら下におろす、「終わり」を意味する手話でのジェスチャーで同時に視覚支援もしていました。最初のほうはそんなことをされても意味が分からなかったPは勿論大泣きしていましたが、泣こうがわめこうがおしまいと言ったらおしまいという形を徹底し、おしまいと言われたら必ず終わらないといけないことを理解するまでスモールステップで何度も繰り返し教え続けました。
ここで重要だったのは、ただ「おしまい」にするのではなく、その前に「10秒数える」ということです。この10カウントがあることで、終わりの予告にもつながり、10秒の猶予があることで突然終わらされるという不安が少し解消されるのです。
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10カウントを積み重ねると…
それを理解し始めてからは、10数えたら「おしまいにされる!」と気づき、数字を読み始めるだけでも泣いたり怒ったりするようにもなって来ましたが、泣きながらもおしまいと言われたらおしまいしないといけないことが少しずつ身についてきたので、自ら終わらせたり片付けたりするようにもなって来ました。このようにおしまいが理解できるようになってからは、かなり切り替えがスムーズにいくようになり、出先でそろそろ帰りたいというときなどにもずいぶんラクになりました。
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今ではもう10数えなくてもおしまいの一言だけでも終われるようになって来ましたが、それはこれまで「終わり」を理解するために何度も行った10カウントの積み重ねがあったからこそだと思っています。
執筆/みん
(監修:鈴木先生より)
今回のような10秒ルールや感情を抑える6秒ルールなど、カウントを利用する方法が多くみられます。
時間のルールはスポーツや将棋などの世界でもみられます。プロレスの場外にいられる時間、テニスのサーブを開始するまでの時間、将棋の指すまでの時間などなどです。人間は時間を決められると何とかやろうと努力できるのです。
秒単位だったり、分単位だったり、日単位だったりとさまざまな時間に私たちは日常において縛られているのです。
今回のお母様の工夫でよかったことは、「視覚支援」・「おしまいという徹底」・「スモールステップ」です。時間というルール以外にこういった工夫を重ねるといいでしょう。