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自閉症の弟は、遊べない、大事なものを壊す…。「弟じゃなかったら良かったのに」振り回され続けるきょうだい児が流した涙

LITALICO発達ナビ

自閉スペクトラム症のあるPには兄がいます。


長男が3歳のときに弟のPは生まれました。Pが赤ちゃんだったころは、長男は弟が生まれたのが嬉しそうで一緒に遊べるようになることをずっと楽しみにしていました。

でも待てども待てども、弟とはほとんどコミュニケーションが取れないし、関わろうとしても無視され、癇癪につながるからと母親の私から自分の行動を止められることもあって、なかなか弟と一緒に遊べず、長男は「Pはいつしゃべるようになるの?」「Pはずっとこのままなの?」と疑問や不安を感じるようになっていました。

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「弟には障害がある」ということに、長男はどのように理解を進め、どのようなことに悩んでいるのか?


私たち夫婦は長男の前でもPの障害についての話を自然にしていたので、長男は大人の会話を聞いてなんとなく「Pは普通の子とは違うんだ」ということを理解していたようです。

それに自分の友だちの弟や妹はしゃべったり兄姉にくっついてきたりするのにPはそういうことはまったくしないし、自分と同じ幼稚園へは行かずに、家から遠い普通の園とは少し雰囲気の異なる園に通っているということ、病院へ定期的に何回も通院していることなどからも、自閉スペクトラム症のことはまだ詳しく分かっていなくても「弟には何らかの障害がある」ことを長男なりに感じるようになっていました。

そんな長男ですが、Pは自分の物を平気で取ったり壊したりするし、自分は何もしていないのに急にかまれたり引っかかれたりすることもあるし、家族がいつもPを中心に、Pに合わせた行動ばかりしていることに、日頃から不満を感じたり我慢したりしている部分は多々あるのではないかと思います。

そのため、たまに「Pが僕の弟じゃなければ良かった!」「このまま大人になったら心配だよ!」「Pと一緒にいたら恥ずかしい!」と言ってしまうこともあります。私はそんな風に思ってしまうのは自然なことだし仕方がないと思い、長男のそのような発言も言いたいときは言わせていたし、聞いてあげるようにしていました。


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弟の困った行動に振り回される日々…


そんなある日、PがAIアシスタントで音楽を聴きたがっていたのですが、自分ではうまく発音ができないので、長男がPのために音声操作をしてあげていたことがありました。

Pは同じ曲を繰り返し聴きたがるので、長男はAIアシスタントに向かって「リピート再生」「戻って」などと延々と言ってあげなければなりません。長男は止めどきが分からず、ずっとPに付き合うのにも嫌気がさしている様子でしたが、急に止めるとPが癇癪を起こして大変なことになるのも分かっていたので、『どうしたらいいかな?』と私に相談してきました。

私は「次が最後の1回だと予告してから再生して、終わったらおしまいのジェスチャーをしてみたら?」と長男にアドバイスをしました。そのアドバイスを聞いた長男は「本当にそんな風に言うだけで終わることができるのかな?」と半信半疑の様子でした。

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弟の特性に合わせた対応をしたことで、長男は弟の成長を感じることができて…


しかし、実際にそのように言ってみるとPは長男の指示をちゃんと理解し、スッと音楽を聴くことを止めることができたのです。そんなPの様子を見て長男は感動したらしく思わず涙を流していました。

私は長男が泣いて喜んでいる様子に驚き、何で涙が出たのかを聞くと、長男は「Pに言ったってどうせ無理だと思っていたのに、ちゃんと僕の指示を聞いてくれたから感動したんだ!物凄く嬉しかった!」と言いました。


そんな長男の言葉を聞いて私は、親である私がPの小さな成長を感じては喜ぶのと同じで、兄である長男にとっても、弟の成長を感じるとたとえ小さなことだとしても、こんなにも嬉しく感動できるものなんだなと思いました。

きょうだい児は、普通のきょうだいより不安や苦労もいろいろとあるかもしれません。でも普段からきょうだいのことを考える機会も多く、障害のあるきょうだいから学べることも沢山あるのかもしれないなと長男を見て思っています。まだまだ成長過程ですが、長男にとって弟のPの存在は、良くも悪くも影響があることを忘れず、長男とPとの関係も一緒に見守っていきたいと思っています。

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執筆/みん

(監修:井上先生より)
子育てをしていると、つい発達障害のある子の方に手を掛けてしまうことも多くなりがちです。幼いきょうだい児にとっては、自分にかまってもらえないことで感情を爆発させてしまうこともあると思います。

このコラムで素晴らしいのは、この年齢のきょうだい児さんに「〇〇障害とはこういうものなんだよ」と言葉で説明するのではなく、「こうしたら弟が受け入れてくれるんだよ」「こんな声かけをしたら伝わるかもしれないよ」ということを体験的に理解させてあげられたことです。このような工夫すればうまくいく、という体験が、将来的な障害理解にも結びついていくのではないでしょうか。
きょうだい児も成長とともに障害を言葉や概念としても理解できるようになってくると思います。ご家庭で発達障害について、話すことをタブーにしない雰囲気をつくっていくことが重要かと思います。

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