「褒めポイントを変えてみて」なぜ指示が通らない?座ってられない?発達が気になる生徒に悩む先生に伝えたい、リフレーミングの大切さ
学校の研修での質問
私は、学校から研修講師を依頼されることがあります。そうした研修時、先生方から「集団行動がとれない生徒にはどう対応すればよいですか」、「椅子に長く座っていられない生徒にはどうすればいいですか」などの質問を受けることがよくあります。
それらの質問を聞いて思うことは
学校の先生方は、
・椅子に座っている。集団行動がとれる。勉強ができるなどの枠組みの中で捉えている
・算数、国語、運動などオールマイティにできる子が評価される世界で生きている
もちろん、そうではない先生もいますが、一定の枠組み内で評価すること以外は想定していない先生方も確かにいます。
リフレーミングしてみる
先生方にも、そして親御さんにも伝えたいこと、それは、リフレーミング(=枠組みを変える)してみるということです。
・集中力がなくて、椅子に座っていられない=さまざまなことに興味関心が行く
・給食で好き嫌いが多い=味がわかる敏感な舌を持っているので、将来料理人になる素質があるかもしれない
「捉え方を変えてみると学校生活の中では問題視されることでも、才能を発揮するかもしれません。だから、学校での評価が低いことは気にしないで、リフレーミングして明るい未来を想像しましょう!」このように親御さんには伝えたいところなのですが…
人生の初めの段階で長く一緒に過ごす大人、特に担任の先生は子どもの人生に大きな影響を及ぼします。
また、学校は日中一番長く過ごす場所です。
そこで、担任の先生からの評価が低く、自信を失くしたり、自己肯定感が低くなったりしたら、卒業後に認めてくれる人が現れたとしても回復はなかなか難しいかもしれません。
褒めポイントを変えてみる
生徒を叱ることが多い先生方に伝えたいことは、「褒めポイントを変えてほしい」ということです。
例えば
・給食をおかわりする
・寝癖がついていない
・誰よりも早く学校に到着している(※忘れ物魔でも)
・蝉とりがうまい
・風邪をあまり引かない
・砂場で泥団子を上手に作れる
ほんの小さなことでも、子どもが頑張っていること、一心に取り組んでいることなどを褒めてほしいと思うのです。
また、支援が必要な児童ばかりに関わっていると、ほかの児童は「えこひいきしている」と感じるかもしれません。そして、大人の注意を引こうとする行動をするかもしれません。中には、「先生、○○君が席を立っています」と「チクリ魔」と化してしまう生徒もいるかもしれません。
ですから、それぞれの生徒に合わせて、褒めポイントを変えてほしいと思います。
生徒は「自分のことをよく見てくれている」と感じ、変わってくると思います。
中高生以上で、自己肯定感が低い場合
先生方から以下の質問も受けました。
「二次障害までは至らないけれど、中高生や大人になって自己肯定感が低い場合どうしたらよいですか?」
中学生にまでなってしまうと、それまでの人生で「自分はできないという経験」を積み重ね過ぎているので、できなくても、それごと受け止めてくれる人に出会うことが大切になるのではないかと思います。
自分の適性に合っていない職場で働いて叱責されることが続くと失敗体験を重ねてしまいます。
例えば、あまり人とのコミュニケーションが得意ではないのに、接客や営業職についたり、野球やサッカーなどのチーム競技の部活に入ったりしないで、一人で黙々と作業ができる仕事に就いたり、個人プレイのスポーツに取り組むのがよいのではないでしょうか。
自己肯定感を壊されてしまうような場に「努力すれば何とかなる」、「気合で乗り越える」と鼻息荒くして、これからは跳びこまない方がいいと思います。
子どもの特性を理解し、「定型発達児に近づけよう」として子どもにとって苦手なことをばかりをしいないことが、その子どもの将来にわたっての生活の質を高めることになるのではないでしょうか。
学校の先生方には、子どもをリフレーミングしてみてほしい、そして小さなことでも褒めてあげてほしい。
叱責ばかりで自信を喪失させ、二次障害をおこさせない関わり方をぜひ意識していただきたいと思っています。
(監修・鈴木先生より)
神経発達症(発達障害)のあるお子さんは、保護者や理解のない担任など周囲の大人たちから叱られる場面が多く、自尊心が低い状態となっている場合がよく見受けられます。ADHDのあるお子さんは6歳から治療ができるので、早期介入によって自尊心を下げないようにしていくことが肝心です。
私の外来では、神経発達症(発達障害)のあるお子さんに対して、部活は一人でもできる、またはシングルスのあるスポーツを勧めています。今は部活の数も少なくなっているので、実際には美術部や吹奏楽部(パーカッション系)に入部しているお子さんが多くみられます。宿題などに関しても特別支援学級に在籍するお子さんに対してはハードルを下げ、交流学級とは異なった独自の宿題を出すことで達成感を味わらせることが重要です。
そのお子さんに何ができるか、「Not unable, but able」の精神が学校を含めたその子を取り巻くコミュニティーの中に根付くことを願っております。
一方、「外れ先生」ももしかしたら被害者と言えるのかもしれません。
今まで神経発達症(発達障害)の研修も受ける機会がなく、相談できる上司にも巡り合わなかったのかもしれません。各市町村の教育委員会が定期的な神経発達症(発達障害)の研修会を“きちんと”やって少しでも理解してくれる先生を増やしていくしかないのではないかといつも考えています。教員ファーストではなく、生徒ファーストの考えをすべての学校の先生方に持っていただきたいと常々思っております。