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身体への自傷から言葉による自傷へ、自閉症の息子の自傷行為は形を変えて――心の安定のためにできること

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21歳になった息子の様子


現在、自閉症(自閉スペクトラム症)のある息子は21歳になりました。

以前は多かった腕を噛むなどの自傷や、パソコンのマウスを思い切り叩きつけるなど物に当たり散らすこともたまにありますが、そうしたことは減ってきました。

身体への自傷から言葉による自傷へ、自閉症の息子の自傷行為は形を変えて――心の安定のためにできること

Upload By 立石美津子

自分自身を傷つけるという行為は、形を変えながらも今も続いているのではないかと感じています。

幼児、小学生のころの自傷


身体への自傷が最も激しかったのは幼児期です。息子は6歳になるまで言葉が出なかったので、思い通りにならないとき自分の身体を傷つけるしか、方法を知らなかったのではないかと思います。

身体への自傷から言葉による自傷へ、自閉症の息子の自傷行為は形を変えて――心の安定のためにできること

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例えば

・自分の頭を叩く
・腕を思い切り噛む
・(普段は適切な量を口に入れることができるのにもかかわらず)入りきらない量の食べ物を口に押し込む
・壁に頭を打ちつける
・顔を叩く

ただ、「これ以上やると痛いぞ」のギリギリのところまでのラインでやっているように見えました。ですから、大けがをするようなことはありませんでした。

言葉で自分を傷つけている?


言葉がでるようになってからは、自分の身体を傷つけるだけでなく、言葉によって自分を傷つけるようになってきました。


例えば、気持ちと反対のことを叫び、そして癇癪をおこすのです。

「もう、帰る!」と家に居ながら叫ぶ。(←どこに帰る?)
「入院する」(←入院したくない)
「注射する」(←注射したくない)
「家出してやる」(←家出したくない)
「死んでやる」(←死にたくない)
「9時58分に寝る!」(←毎日必ず10時に寝るこだわりがあるのに、僅かに時間をずらして叫ぶ)

心にもない言葉を言うときの対応法


これらの言葉は、実は息子の心にもないこと、望んでいないことだろうとわかるので、息子の言った言葉をオウム返ししながら、共感の形をとるようにしています。

息子「もう、帰る!」と家に居ながら叫ぶ。
私「もう、帰りたくなっちゃたんだね」
息子「入院する」
私「入院したくなっちゃったんだね」

息子「注射する」
私「注射したくなっちゃったんだね」

息子「家出してやる」
私「家出したくなっちゃったんだね」

息子「死んでやる」
私「死にたい気持ちになっちゃったんだね」

息子「9時58分に寝る!」
私「9時58分に寝たくなったんだね」

火に油を注がないように


もし、「家出する!」と言ったとき、「気をつけていってらっしゃい」と家出を推奨するような言葉をかけたとしたら、特性のある息子は字面通り受け止めて、出て行ってしまうかもしれません。ですので、そのような言い方はしないようにしています。

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また、以前、次のように言ったことがあるのですが…

「なんでそんなこと言うの!」
「いい加減にしなさい!」

これらは、火に油を注ぐ結果になってしまい、息子は激しい癇癪を起こしてしまいました。

切り替えの手段を探す


私は、身体への自傷も言葉での自傷も、自分の混乱した心の安定を図るためにやっているような気がしています。
そんなとき親が止めようとすればするほど、混乱して自傷が続くことがあります。

先に述べたように、癇癪をおこし自傷までするときは、共感する言葉をかけるのも一つの方法ではありますが、状況によっては、その言葉がけ自体が刺激になることもあるかもしれません。そんなときは時間経過によりクールダウンするのを待つしか方法がありません。

わが家は共感の言葉でも息子が落ち着かないときは、黙って見守りながら、ぬるめの湯加減のお風呂を用意し、入浴を促します。息子の場合は、風呂につかり気分が変わると、気持ちの切り替えがしやすくなるようです。

お子さんによって、切り替えられるきっかけはそれぞれだと思います。それを一緒に探してあげるのも大切なことだと感じています。

執筆:立石美津子

(監修者・鈴木先生より)

思い通りにならないときの癇癪は自閉スペクトラム症の易刺激性からきていると考えられます。

マンションの壁を蹴って穴をあけたり、ドアを壊したりするケースも多いです。
自傷や他傷は抗精神病薬で調整することも可能です。爪をかむお子さんには、「爪はばい菌がたくさんついていてきたないよ」と説明したりしますが、それでも難しい場合は、逆に透明なマニュキアを塗ってきれいにして「噛まないでおきたい」と思わせるようにしてみるのも一つの手です。
いい景色を見て散歩したり、何か運動したり、音楽を聴いたりするのもいいですね。
また、リズムが乱れると癇癪をおこしやすくなるので、サーカディアンリズム(睡眠覚醒リズム)を規則的にすることも重要です。

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