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発達障害の娘、幼稚園探しは居場所を見つける道でもあった――慣れない土地、「プレ幼稚園」での出会いから

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未就園児の子育て。居場所を求めて


私は結婚してすぐに夫の転勤で生まれ育った地域から遠方に引っ越しました。
そのため、初めての子育ては、周りに知り合いがいない中でのスタートでした。

同世代の子どもを持つ友達が欲しくて、私は自治体主催の赤ちゃん広場に行ったり、歩いて行ける範囲の公園を一日に何ヶ所もはしごしたりしました。

娘がほかの子とうまく遊ぶことができず、落ち込んだり悩んだりすることはしょっちゅうでしたが、それでも通い続けるうちに顔なじみのママ友もできました。

土地勘がなかった私にとってそこで得る情報はとても貴重なものでした。

ママ友に誘われ


私は公園で知合ったママ友に誘われて近隣の幼稚園主催の2歳児を対象とした「プレ幼稚園」に参加することにしました。

それまでもママ友に誘われて幼児サークルや音楽教室などを体験したことはあったのですが、どれも娘には“早すぎた”ようで、楽しむことはできませんでした。

月二回療育センターでの親子教室にも通っていましたが、それでも未就園児と二人きりの時間を持て余していた私は“ダメもと”でプレ幼稚園に参加してみることにしたのです。


プレ幼稚園とは


プレ幼稚園の活動内容はさまざまで、日数や時間、費用も園によって異なります(無料のところもあります)。
同年齢の子どもを持つ親同士が知り合いになり、育児の不安や悩みをお互いに話したり、情報交換ができたりするので地域の子育て支援の一環として開催しているところもあります。

参加したからといってその幼稚園に入園しなければならないという決まりはありませんが、優先的に入園できるケースもあります。

幼稚園にそれぞれ特色があるように、プレ幼稚園にもさまざまなタイプがあります。
手あそびや体操、絵本の読み聞かせなどをするところや、在園児と一緒に季節の行事に参加するところ。親子同伴型もあれば、子どもとは別の場所で保護者が交流する場合もあります。

私は娘と一緒に楽しく過ごしたかったので、親子同伴型で自由度が高いところに申し込みをしました。

情報通のママ友(笑)いわく、そのプレ幼稚園は「子どもを別の幼稚園に通わせる予定の親も、プレだけはそこに行きたがる」「順番待ちが出るほど人気がある」とのことでした。
確かに申し込みをしたときは順番待ちでしたが、しばらくすると空きが出て、私たち親子は想定よりも早く参加ができました。

実際参加してみると


そのプレクラスは月二回、幼稚園敷地内の別棟で行われていました。

二時間の保育時間の多くが自由遊びの時間で、子どもたちは保育室内で自分の好きなおもちゃで遊ぶことができました。おもちゃはおままごとセット、ブロック、絵本、ミニカーなど2歳児が喜びそうなものがそろっていました。同じおもちゃが複数あるので子ども同士で取り合いになることもほとんどありません。娘は大きなキッチンのおもちゃがお気に入りでした。

夏は外にビニールプールも用意されていました。娘はおままごとセットに夢中だったので参加しませんでしたが、自由遊び時間中ずっとプールに入っているお子さんもいました。


保育の後半は親子で楽しめる集団遊びで
・子どもの手形のうちわづくり
・乾燥パスタを使ったフォトフレーム工作
・親子で新聞ビリビリ遊び
・大きな鍋でポップコーンづくり
・子が踏んだうどんづくり
など季節を感じることができる内容が多くありました。

発達障害の娘、幼稚園探しは居場所を見つける道でもあった――慣れない土地、「プレ幼稚園」での出会いから

Upload By 荒木まち子

プレ幼稚園に通っている子どもたちは、自由遊びから集団遊びへの切り替えもスムーズでした(意外!)。

これは

・子どもたちが思う存分自分が好きな遊びができていた
・次にも何か楽しいことがあるという期待感がある
・親も一緒におもちゃを片付ける

というのが、理由としてあるのではないかと思いました。

プレ幼稚園の先生


プレ幼稚園担当のM先生は、私たちと同じ“子育て中のお母さん”で、気さくな人でした。
M先生は子どもの自由遊びの間、孤立しているお母さんがいるとさりげなく話しかけたり、子育ての相談に乗ってくれたりしていました。

実は私はこのとき、ある悩みを抱えていました。
翌年一年間、夫が単身赴任することが決まっていたのです。

近くに頼れる親戚もいない中、コミュニケーションが上手くとれない自閉傾向がある娘と一年間二人きりで過ごすことに私は不安を感じていました。


私はM先生に事情を話し「単身赴任先に一緒についていくこともできるみたいなんだけど、一年間だし、どうなかなぁ…」と相談しました。先生は少し考えてから言いました。

「私だったらご主人の単身赴任にはついていかないかな…」

私たち親子を見て、考えてくれている人がいる


それはM先生が娘のこと(環境の変化に弱いなど)を理解しているからこその言葉だったのだと思います。

慣れない土地での初めての障害児育児…不安なことばかりだけど、こうして見守ってくれる人がいるなら大丈夫かもしれない…。

私の気持ちは決まりつつありました。

次に会ったとき


私はM先生に「夫の単身赴任の間、私と娘はこのままここで暮らすことにしました」と告げました。

先生は私に「そうですか。実はこの前『私ならついていかないと思う』と言ったことが無責任な発言だったかもしれないとずっと気になっていたの」と言いました。
M先生が私たちのことをそんな風にずっと気にかけてくれたことに、私は胸が熱くなりました。

私は先生に「大丈夫です。自分で考えて決めたので」と伝えました。

先に述べた通りプレ幼稚園に参加したからといって必ずしもその幼稚園に入園する必要はありません。実際私はこの幼稚園のほかにもいくつか幼稚園を見学していました。

それでも私はM先生の「もし荒木さんがこちらの幼稚園に入園したら、今までの経緯も含めて園全体で情報を共有していくので安心してくださいね!」という言葉をとても心強く感じたのでした。

最初の集団生活に向けて


小学校は住んでいる地域で学区が決められている場合が多いですが、幼稚園は親が選べる分、悩む方も多いと思います。
今はまだコロナの影響もありプレ幼稚園の体験や活動にもいろいろと制限があるかと思いますが、一回の見学だけでは分からない幼稚園の実際の雰囲気や、子どもとの相性を知るためにもぜひプレ幼稚園の体験をしてみることをおすすめします。


もちろん無理のない範囲で!

執筆/荒木まち子

(監修:井上先生より)
いきなり幼稚園にはいるのは不安が大きいと思いますがプレ幼稚園で環境に慣れたり、先生たちと話をする機会があるのはとてもよいと思います。特に父親が単身赴任で不安な中で、しっかり話を聞いてくれる先生がおられる園はとても安心できたのではないでしょうか。お子さんも自由遊びから徐々に集団活動に移行するといったゆるやかなステップがあることで、無理なくなじめたのではないかと思います。プレ幼稚園でどんなことがされているかは口コミなどで知れることが多いので、同じ療育に通われている親御さん、地域のペアレント・メンターさん(障害のある子どもを育てた経験のある先輩の親)などに聞いてみられるとよいかもしれません。

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