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吃音がある少女の夢から誕生。「注文に時間がかかるカフェ」が目指す未来

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1日限定の「注文に時間がかかるカフェ」で、吃音のある若者の夢を応援しませんか?

吃音がある少女の夢から誕生。「注文に時間がかかるカフェ」が目指す未来

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「注文に時間がかかるカフェ」は、接客業に挑戦したいけれど一歩踏み出せない若者に自信を、吃音を知らない人にはスタッフとの交流を通して理解を、をコンセプトに活動が始まった1日限定のカフェです。吃音を抱えながらも接客業に挑戦したいと願う若者たちの夢を叶え、吃音についての理解を広げるために活動しています。

カフェに入るとまず、お客さんは吃音について説明を受けてから、吃音のあるスタッフとの交流を行います。この1日限定のカフェは全国へと活動の幅を広げていて、7月3日には川崎市での開催が決まりました。

https://peraichi.com/landing_pages/view/kitsuoncafe/
注文に時間がかかるカフェ

今回は「注文に時間がかかるカフェ」発起人であり、ご自身も吃音のある奥村安莉沙さんに活動の背景にある想いを伺いしました。

発達ナビ編集部(以下、ーー)「注文に時間がかかるカフェ」を始めた背景には、どのような想いがあったのでしょうか。

吃音がある少女の夢から誕生。「注文に時間がかかるカフェ」が目指す未来

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奥村安莉沙:私が20代前半のころに実家の机の引き出しの奥から、クシャクシャになったある一枚の手紙を見つけました。

「20歳のありさへ。
カフェで働く夢を叶えていますか?」

その手紙は、当時カフェ店員に憧れていた10歳の私が、未来の私に宛てた手紙でした。自分の名前さえ言えないほどの重い吃音があった私は、いつしかその夢をあきらめて大人になっていたんです。

25歳のころ、カフェ文化で有名なオーストラリアの街メルボルンのカフェで働きはじめた私は、障害がある人、家のない人、英語がまったく話せない人などが理解し合っている環境に衝撃を受けました。そして「日本に帰国したらこんなカフェを始めたい」と思ったのが「注文に時間がかかるカフェ」をつくった理由です。

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ーー活動の中で、理解が得られないなど困難なこともあったかと思います。どのように乗り越えて来られたのでしょうか。

奥村安莉沙:「吃音」と一口に言っても、症状や必要なサポートは人それぞれです。ある方にとって快適な環境でも、ある方にはそうでない場合もあります。
そのため、みんなが働きやすい環境にするにはどうしたらよいかを凄く悩みました。今取り組んでいることは2つあります。

1つ目は、マスクに各々のニーズを書いて表現するということです。
例えば、話の途中で吃音が出ても最後まで話し終えたい方や、周りの人に助け舟を出してほしい方など、求めていることは人それぞれ違います。それぞれがしてほしいことをお客さまに伝えるために、マスクに各々のニーズを記入するようにしています。

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2つ目は、スタッフの意見を取り入れるということです。
スタッフの中には、接客のアルバイトをしているときに固有名詞が言えなくてつらくてやめてしまったという人がいました。固有名詞の中に苦手な音があると話しにくい吃音者は案外多いのです。
それならば接客のセリフは一切マニュアルに入れないようにしよう、ということになりました。

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ーー実際に参加された吃音のある方の変化や感想を教えてください。

奥村安莉沙:カフェが終わったあと、スタッフから一番多く聞く感想は「自信がついた」ということです。今まで叶えられないと思っていた接客の夢が、吃音に理解がある安全な場で実現できた、自分はできるんだと感じたのだと思います。

OBのなかには学校で吃音啓発活動を始めたり、自分より下の世代の吃音者のために交流イベントを開催したり積極的に活動している人もいるようです。

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「注文に時間がかかるカフェ」が1日限定で川崎市にオープン!


ーー7月3日の「注文に時間がかかるカフェ」では、どのような企画をされてますか?

奥村安莉沙:今回は高校1年生のスタッフほか4人の若者たちがスタッフとして参加し、現在はオリジナルドリンクの開発を行っています。スタッフたちは学生が多いので商品企画・開発の経験は一切ありませんが、「吃音」や「夏」をテーマにしたドリンクの企画を0から行うことに挑戦しています。

若者が挑戦を通して自信をつけてもらいたいと思っているので、大人がお膳立てして完璧を目指すことはしていません。
若者たちが試行錯誤して取り組んだ「達成感」を大切にしているからです。私が自分の殻を破ることができたオーストラリアのカフェでの経験のように、見守りながら安心して挑戦できる場づくりに徹したいと思っています。

吃音がある少女の夢から誕生。「注文に時間がかかるカフェ」が目指す未来

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また、今回はひょんなことから今回の挑戦の様子を記録した長編ドキュメンタリー映画をスタッフ総出でつくることになりました。通常、映画のナレーションは1人で話すと思いますが、2人で声を揃えると吃音があっても話しやすいということから、相談の末に高校1年生と高校3年生のスタッフ2人体制でナレーションに挑戦しています。

監督、撮影者、出演者すべてが「映画製作未経験の吃音者」という風変わりなプロジェクトですが、同じように病気や障害でやりたいことに一歩踏み出せない若者に力を与えられる映画にできたらいいね、と話しています。

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ーー活動を継続させた先のこれからの未来に、「注文に時間がかかるカフェ」はどのような世界をつくっていきたいと考えているのでしょうか。

奥村安莉沙:注文に時間がかかるカフェの活動を通して、かつてやりたいことをあきらめて生きてきたスタッフたちは「ほんの少しの理解があれば、私たちは何だってできる」ということに少しずつ気づき始めています。全国各地から集ったスタッフが故郷に戻り、その地域で注文に時間がかかるカフェの開催を手伝ってくれることで、また新たな若者が自信を得るきっかけをつくることができると思います。


「理解があり、やりたいことに安心して挑戦できる環境」は吃音者だけではなく、どんな病気や障害を持つ子どもたちにとても大切なことだと私は考えています。私はそんな社会をつくるために、当事者の若者たちと力を合わせて啓発活動を続けていきたいと思います。

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当日のイベントはすでに満席となり、申し込みが締め切られています。同日に予定されているライブイベントはまだ申し込み受付中とのこと。まずはぜひ、「注文に時間がかかるカフェ」を知ることから始めてみてください。

https://www.kokuchpro.com/event/dbc681a33b134512f646ffa365473c82/
星空音楽祭~吃音をもつアーティスト、若者のミニライブ~@神奈川県川崎市

※クリックすると発達ナビから「注文に時間がかかるカフェ」のサイトに遷移します

※記事内の写真は、2022年3月に世田谷で開催したときのものです

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