不安症、場面緘黙、強迫性障害などを緩和する「SSRI(フルボキサミン)」って?小児の使用は認められている?効果・効能・副作用なども【医師監修】
SSRIはどんな薬?適応となる症状は?
SSRIとはSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の頭文字をとったもので、こだわり行動、うつ、不安障害、場面緘黙、潔癖症などの症状緩和に使われる薬剤です。
発達障害のある子どもには、「自分が一番にならないと気が済まない」「方法や手順などに自分の中での確固としたルールがあり、状況に合わせて柔軟に変更することができない」「一つのことに集中しすぎて周囲が見えなくなる」と、いった特性が見られることがあります。これが「こだわり行動」といわれるものです。
不安障害は、突然理由もなく激しい不安に襲われ、心臓がドキドキしたり、めまいがしてふらふらしたり、呼吸が苦しくなってしまうといった症状で、パニック障害とも呼ばれます。
場面緘黙とは、家族などとは問題なくおしゃべりできるのに、幼稚園や学校など特定の場所になると話せなくなってしまう症状です。
ただ、一口に「こだわり行動」と言っても、その程度はさまざまです。環境を整えたり、周囲が発達障害の特性を理解して接することで、生活に支障がない程度に改善できることも多いでしょう。
その一方で、こだわり行動や突発的な不安からイライラが募り、自分や他者への暴力的な衝動に駆られたり、外に出られなくなったり、といった問題がある場合には、薬の力を借りて症状を緩和させることも選択肢の一つです。
SSRI(フルボキサミン)の投薬の適応となる症状には、ほかにも強迫性障害、潔癖症などが挙げられます。
強迫性障害は、「十分に洗ったのに、くり返し手を洗い続ける」「持ち物がなくなっていないか、何度も確認してしまう」「服が少しでも汚れると、全部着替えないと気が済まない」といった行動となってあらわれます。
また潔癖症があると、人が使ったものがどうしても触れなかったり、手指が汚れるのが嫌で手づかみで食べることができない、といった困りごとがでてきます。
SSRI(フルボキサミン)の効果・効能は?
SSRIには、脳内の神経間でセロトニンという神経伝達物質の再取り込みを阻害する効果があります。セロトニンには心のバランスを整えてくれる働きがあることから、「幸せホルモン」の異名でも知られています。セロトニンが不足すると、気分が落ち込んだり、不安を感じたりしやすくなると言われています。
SSRIは、セロトニンの再取り込みをしにくくすることで、脳内のセロトニンの量を安定させ、気持ちを穏やかにする働きをします。
SSRIにはいくつかの種類がありますが、本記事ではこだわり行動、うつ、不安障害、強迫性障害などに使われる「フルボキサミン」について見ていきましょう。
SSRI(フルボキサミン)は、日本では「ルボックス」「デプロメール」の商品名で販売されている錠剤です。また、「トーワ」の商品名で、ジェネリック薬も出ています。
いずれも8歳以上の小児の強迫性障害にも使用が認められています。
SSRI(フルボキサミン)の用法・用量は?
SSRI(フルボキサミン)の錠剤には、25mgのもの、50mgのもの、75mgのものの3種があります。
8歳以上の子どもがSSRI(フルボキサミン)を服用する場合は、1日1回、就寝前に25mgの錠剤1錠からスタートします。1週間以上継続したのちに、朝に25mg1錠、就寝前に25mg1錠、合計50mgに増やします。
薬の量は、年齢や症状に応じて医師が判断し、1日合計150mgを超えない範囲で増減します。ただ、増量する場合は、1週間以上の間隔を開け、1回ごとの増量は25mgまでに留めるように推奨されています。
医師は、必要最小限の服用で効果が出るよう、慎重に経過を観察しながら処方量を調節します。自己判断で勝手に薬の量や回数を増やしたり、減らしたりしないことが大事です。
副作用の心配はない?
子どもへのSSRI(フルボキサミン)の投与で最も懸念される副作用は、自殺念慮、自殺企図があらわれる可能性です。24歳以下の患者に投与した場合に、リスクが増加することが報告されています。
子どもがSSRI(フルボキサミン)を使う場合、保護者は自殺念慮や自殺企図があらわれる可能性についてきちんと知っておくことが重要です。そして、担当医と緊密に連絡を取り合いながら、経過を見守ることが大切です。
自殺念慮、自殺企図のほかに、下記のような副作用があらわれることもあります。
・眠気
・吐き気・悪心
・口の渇き
・便秘
・めまい
・ふらつき
また、投薬を急に中止したり、急激に減らしたりすると、頭痛や吐き気、めまい、不安感、不眠、集中力の低下などがあらわれることも報告されています。
服用を止めるときにも、徐々に減量していくなど、医師の指導に基づいて慎重に行いましょう。
親子で抱え込まずに、医師に相談を
ASDなどの発達障害による特性は、個人差も大きいものです。また、成長するにつれて、特性が変化していくことも大いにあります。
ただ、強いこだわりや不安、過度の潔癖症などによって、日常生活に困難を抱えている場合は、薬によって症状を緩和していくことも検討したい選択肢の1つです。困りごとを抱えたままでは、強いストレスにさらされ続けることになったり、失敗や挫折が続くことで自己肯定感が低下たりすることが考えられます。そうした状態が長く続くことで、身体的不調、うつ症状、不登校やひきこもり、暴力といった二次的な問題に発展してしまうこともあります。
笑顔で過ごせる時間を増やしていくためにも、家庭のなかだけで抱え込まずに、医師や専門家に相談することが大切です。 そして、投薬をする場合は、副作用のリスクなどもしっかり理解したうえで、医師と手を取り合いながら適切な服用をしていくことが重要です。
参考:日本薬局方 フルボキサミンマレイン酸塩錠|ニプロ株式会社
医療用医薬品 フルボキサミンマレイン酸塩|KEGG データベース