効果てきめん!危険回避からお支度まで、家庭内のツールを大公開。視覚支援で育った発達障害の息子の今
視覚支援との出合い
私が初めて視覚支援を学んだのは、発達障害の勉強会でした。目で見て分かるよう、イラストなどを利用して視覚情報を使い子どもに伝えたいことを伝える。今考えてみれば成長途中の子どもは文字の理解や言語のレパートリーが少ないため、視覚情報の方が理解しやすいのは当たり前です。
大人だって「百聞は一見に如かず」ということわざがあるくらいなので、情報は視覚で補助すると理解しやすいというのは当然なのですが、当時の私はそういう視点が全くなかったので、なるほど!と感動したことを覚えています。
おうちでの視覚支援
小さいころ、むっくんはマークが大好きでした。
車のエンブレムやお店のロゴ、交通標識などにも興味を示し、記号の本が好きで色んなマークをよく覚えていました。視覚支援を知った私は、むっくんのこの特技を利用すればいいのだと思いいたり、3歳のころから外出の際はお店のロゴを使って行先を伝える工夫をするようになりました。これは診断のない弟にも有効で、子どもたちのどこへ行くのか分からない不安を和らげる効果がありました。
また、むっくんはおもちゃなどについている注意書きマークにも興味を示したことから、ルールを伝えるのに使える!と導入したのが「さわっちゃダメマーク」です。
家の中の危ない場所にはこの「さわっちゃダメマーク」を貼って理由を伝えておくと。ルールを守りたいタイプのむっくんは触らないように頑張ってくれていました。当時は子どもの行動に困ったな~と感じると、視覚化することで何か伝えられないかな?と考えていたように思います。
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成長と共に、家庭内の視覚支援はどんどん増えていき「朝の準備」「カレンダーでの予定表」「おもちゃ箱に写真」なかなか進まないトイトレでは「トイレにトイレマーク」も貼りました(笑)さらに、一日の出来事を思い出すことが苦手だったむっくんに、保育園での「活動メニュー表」を作って会話のきっかけにしたり。お風呂あがりの「体の拭き方」や運動会での「ダンスのふりつけ」など動作を伝えるイラストを描いて貼ったこともあります。
また、私の伝えたいことはイラストを描きながら説明すると集中して話をきいてくれることもありました。わが家では診断の有無にかかわらず兄弟ともにこういったツールをたくさん使って暮らしています。
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視覚支援に囲まれた子どもたちの今
現在8歳のむっくんは文字や聴覚情報でも十分ものごとが伝わるようになりました。それでも複雑なことや、忘れやすいことは視覚情報で消えないように伝えることが鉄則です。最近では将来を見据えて、デジタル端末を使う視覚支援も増やしています。
例えばスマートスピーカーの残量が表示されるタイマーは時間管理に便利ですし、忘れやすい予定はタブレットのリマインダーで通知、家族共有カレンダーを使い、自分や家族の予定を確認できるようにもしてあります。
また、むっくん自身もタブレットのデジタルふせんやメモ帳を使い、忘れたくないことを自分でメモすることも増えてきました。さらに弟まで忘れないように目印を付けるなど自分から視覚支援を使おうとすることもあり、この子たちは困ったときは工夫で補えることを知っているのだなぁと感心させられています。
二人とも小さいころよりも言葉で伝わりやすくなったため、つい視覚的な提示を忘れがちなのですが。何度か声かけが必要なケースは視覚支援を考えた方がいいことを忘れないように私も気を付けています。
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方法ではなく本質を伝える
最近のむっくんは、自分の伝えたいことを図やイラストを描きながら説明してくれることがあります。これはまさに私がむっくんに対してやってきたことなので「この子は視覚情報と聴覚情報合わせて使う方が自分も伝えやすく、相手にも正しく伝わりやすいということを知っているのだな」と驚かされます。
発達障害と診断されたことをきっかけに学んだ視覚支援。私は暮らしやすさをもとめて取り組んだに過ぎないのですが、それらが子どもたちの中に芽を出し育っているのだなぁと感じています。視覚支援の根っこにある「自分にも相手にも伝わりやすい方法を模索する」という考え方は、私の手を離れた後もきっと彼らを支え続けることになるでしょう。工夫しようとする子どもたちを見ていると、試行錯誤してきた過去の自分のことを私はちょっとだけ誇りに思えるのです。
執筆/ウチノコ
(監修:初川先生より)
むっくんとの視覚支援の歴史のシェアをありがとうございます。視覚的な刺激を得意とするお子さんは多いですし、言葉が苦手なお子さんでもイラストや写真などを用いたものや目印やマークを用いて判断しやすくするものなど、とても有効ですね。
聴覚的な支援は、その瞬間の注意を引くには良いのですが、その記憶の保持が難しいですね(別のことに気が向いたらすぐに忘れてしまうため、声をかけ続けなければならないことも…)。消えてしまわずに残っているという意味でもとても便利です。不注意なお子さん(大人もですが)にもとても有用です。
今日園(や学校)で何があったかを話してもらうきっかけとしての絵や写真もとてもいいですね。話したくないわけではないけれど、呼び水がないと思い出しにくいこともあります。時系列で思い出すのも得意な子と苦手な子といるのではないでしょうか。
ちょっとの間、覚えておくべきことを、忘れないように忘れないようにと思いながら過ごすことは、本来がんばりたいことへ注意集中が削がれている面もあります。学習場面における、机上の整理であったり、毎日の支度における物の管理であったり、そこにいちいちエネルギーをかけるのはややもったいないです。
思い出す・判断するという行為は、なかなかに負担なので、そのあたりをメモやマークなどを用いて負担をショートカットすることはとても理に適っています。
視覚支援のありがたみに気づいてきたお子さんは自らメモを取ったり、写真で残したりと工夫をすることも多いです。保護者の方がされてきたことは、お子さんにも受け継がれてゆく面があります。