自閉症息子のコントロールできない「奇声」と「独語」、どうしたら?ーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!
奇声で周囲の人を驚かせてしまうほぺろう。どうしたらいいですか?
わが家の息子ほぺろうは特別支援学校の一年生。最近になってようやく発語が出ましたが、今は拙い単語程度。コミュニケーションとして言葉を使うという認識はまだまだで、好き勝手に声を出しています。
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ぼさ子(以降ーー): ほぺろうは暇さえあればゴチョゴチョと宇宙語を呟いていたり、覚えたての単語だったり、会話ではない何かを常に発声しています。その声がとにかく大きくて…。外出先でも突然大声を出したりするので周囲の人をビックリさせてしまうことがあって困っています。
三木先生:そうですねぇ…。通常だと、内言語って自分の頭の中で処理して発する言葉を取捨選択していくものなんですけど、自閉スペクトラム症のあるお子さんは内面と外面の境目があいまいなことが多くて頭の中の言葉がだだ漏れになってしまいがちなんですよね。
呼びかけで収まるのであれば問題ないかなと思うんですけど、ほぺろう君は対応してくれそうですか?
ーー全然です。「シーッだよ」「黙ってようね」と言ってもほぺろうは理解していないように見えます。
奇声は抑えてほしい。でも本人が理解していない場合は?
ーー絵カードなどで視覚的に音量の訓練をするという話も聞いたことはあるのですが、絵カードでの説明を理解するのもほぺろうにはまだ難しそうで…。
三木先生:シーンが理解できないとボリュームの使い分けも分からないかなと思います。なので本人にコントロールしてもらうのが難しいとなると、「防音対策する」または「発声しても大丈夫な場所を選ぶ」ということを大人が外部的に働きかけるといいと思います。自宅ではどんな風に過ごしているんですか?
ーーもう自宅では喋りたいまま自由に喋らせています。他人様に迷惑をかけなければ発声する分には構わないといった感じで。
三木先生:「この場所ではダメだよ」っていう理解もまだ難しいですかね?
ーー場所で使い分けることも ボリューム調整することもまだ難しいです。
三木先生:人前で口を塞ぐなどはやっぱり現実的には無理なので、周囲が気になるというのであれば、可能な限りで今は「場所を選ぶ」という方法がいいのかも知れませんね。
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理解が難しいほぺろう。今できることはありますか?
三木先生:ボリューム調整の訓練ができそうであれば、絵カードで視覚的に教えてみたり、そういった練習用のアプリがあるので活用してみるという方法もありますね。ただ、ボリューム調整の練習ができたとしても状況に応じて使い分けできるかはまた別問題ではありますが…。
https://app.litalico.com/voicevolumecatcher/jp.html
LITALICOアプリ|こえキャッチ
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今の時点でほぺろう君に「調整してね」というオーダーが難しいのであれば、「ほかの方法で喋ることから気をそらす」「独語じゃないことをさせる」のもいいかもしれません。例えば、おやつを与えてモグモグしてる間は喋らない、動画やゲームを見ている間は喋らないとか。
ーー確かに!ほぺろうは遊びに夢中だったりおやつを食べていたり絵本を読んでいる間は喋ってないです。
三木先生:なので直近の対応としては、必要に応じて「大人が別の刺激で気をそらす」のが有効だと思います。
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今すぐは無理でも、将来的に改善できますか?
ーー今はコントロールが難しくても、成長すると改善していくという見込みはありますか?
三木先生:もちろん個人差はありますが、どんなお子さんでも成長はしますので大きくなるにつれ改善する可能性はあります。
僕が診ている重度の知的障害があるお子さんも、完全にTPOをわきまえるのは難しくても外からのオーダーは入りやすくなっていますね。そうやって聞き入れてくれることで周りに迷惑をかけることは減っていると感じます。
でも最終的には「枠組みをつくってあげる」ことが大事かなと。ABA的な感じで。やっぱり本人の損得の経験で動機づけするのが一番身につくんじゃないかと思います。
ーーなるほど動機づけ…。そう言われると、私は「ほぺろうは理解していないからできない」と思ってたんですけど、もしかしたら「理解はしているけどやりたくない」という可能性もあるかなって気がしてきました。三木先生:納得して聞き入れてくれるかは、損得の経験を積み重ねていくことで行動をコントロールできるようになっていきます。
経験から蓄積した理解を高めていき物事を判断する「行動学習」をしていくと、ある程度統制できていくと思います。
状況による音量の使い分けはシーンの理解ができていればいるほどやりやすいです。気をつけなければいけないのは、「声を発するのは良くない」というインプットになってしまわないようにということですね。本当は声を出したいのに制限されてしまうとほぺろう君はしんどいと思うんです。なので、そこはもうちょっと理解が進んでからアプローチする方がいいかな。
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感想
三木先生のお話を聞いているうちに、ほぺろうに対する私の根底の要求は「奇声をコントロールしたい」というより「TPO(状況)を理解してほしい」なんだと気づきました。
「奇声」という悩みでしたが、社会性を鍛えることで全ての解決に繋がっていくんだろうなと。今のほぺろうは階段が100段あるうちの1段目くらいの状態ですが、少しずつ経験値を積み上げてTPOに合った行動をとれるようになってくれたら嬉しいです。
また、締めくくりに三木先生が仰った「そもそも“声を発するのは良くない”と思われるのは望ましくない」という言葉にハッとさせられ、発語を促すために奇声は逆に抑えつけない方がいいかもと考えを改めました。
外出先ではどうしても公共のTPOが求められるので、"今は"必要に応じて大人が外部的に働きかける方法を取り、ほぺろうの今後の成長に期待したいです。
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執筆/ぼさ子