言語聴覚士(ST)への相談内容とは?吃音は学校で配慮してもらえる?発話を促す工夫や障害告知についても【日本言語聴覚士協会理事にきく】
Q.言語聴覚士(ST)の方に相談する際、準備しておくと良いものはありますか?
A.お子さんのコミュニケーション場面を撮影した動画があると良いです。
言語聴覚士に相談したいと思っても、すぐに相談できないことがあると思います。また、日常とは異なる療育の現場では、環境の変化もありお子さんの様子が普段と異なるという場合もあります。
一つの方法として、スマートフォンなどでお子さんの普段の生活の様子やコミュニケーション場面、困っている時の様子など動画を撮影しておいていただけると、実際に療育で関わるときに、ご家族と一緒に確認しながらアセスメントしやすくなります。口頭でご説明いただくのでも大丈夫なのですが、イメージにずれが出てしまう可能性がありますので、動画があるとより伝わりやすくて良いです。
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Q.言語聴覚療法を受けるとき、保護者がどのようなことを意識すれば家庭療育にも活かせるでしょうか?
A.「言語聴覚士の行動を予測してみる」ことをおすすめしています。
たとえば言語聴覚士が「りんご」の絵カードをお子さんに見せたとき、お子さんが「りんご」と言ったとします。そのとき、言語聴覚士はなんと答えるのか?「りんご」と返すのか、「あかいりんごだね」と返すのか、それとも「真っ赤でおいしそうだね」と返すのか。
どういう声かけや反応をするんだろうと予測することで、保護者の方にとっても関わり方のヒントになります。ちなみにこの場合、声かけの工夫として下記のようなものがあります。
1.「りんご」の場合、子どものことばを真似することで、子ども自身が「りんご」と言ったことを確認できることと、共感していることを伝えることで相互作用のきっかけとしてコミュニケーションの成立を図ります。
2.「あかいりんご(だね)」の場合、子どもの「りんご」のことばに、「あかい」を加えることで、子ども自身の発話内容や意図を大人が理解していることを示しながら、発話意欲を促すことと、子どものことばを意味、文法的に広げていくことでことばには結びつきがあることを学習するきっかけとしています。
3.「真っ赤でおいしそうだね」の場合、やり取りを通じての役割交代や、子どものことばを使わずに新しいことばのモデルを提示します。
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Q.子どもに吃音があるのですが、小学校と同じように中学校の先生にも事前に伝えたほうが良いでしょうか?配慮は受けられますか?
A. 学校生活に支障が出る前に、事前に伝えることをおすすめします。
小学校と中学校では、先生のお子さんへの関わり方が変わることが多いです。何かあった場合、当人同士で解決することが前提となり介入が難しいこともあるかもしれません。
だからこそ、はじめに文書や動画をもとにお子さんの症状や、SOSの出し方について相談しておくことが大切です。吃音であれば、発達支援を受ける場合と同じように、動画などがあると視覚的に理解してもらいやすくなります。伝え方が難しい場合は、吃音に関する啓発資料等もありますので、言語聴覚士に相談していただけたらと思います。
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Q.子どもに障害告知をしたほうが良いでしょうか?
A. 保護者の方がどう思うのか、お子さんがどう受け止めるのかが大切です。
一般的に良い・悪いではなく、まず保護者の方は告知したいのかしたくないのか。次に、誰がするのか。いつするのか。お子さんが障害を受け入れる過程をどのようにつくっていくのか。
順番に考えることが大切です。
例えば構音障害や発達障害がある場合、お子さんが小学校高学年や中学生ぐらいになったときに、本人に対して障害の説明をする保護者の方が多くいらっしゃいます。「私ってこうなんだ」と受け止めるお子さんもいれば、「調べてみよう」と思うお子さん、「先生に詳しく聞いてみたい」と思うお子さん…さまざまです。
これまで、お子さんが自分の困り感をどのように受け止めてきたかを振り返ってみましょう。発表会でうまく話せなかったとき、「もっと練習しよう」と前向きに取り組めたのか、「私はダメなんだ」と落ち込んでしまったのか。今までのその子ども自身の受け入れ方が、告知の方法を考える上で重要なヒントになります。
お子さんが一人で悩んでしまうこともあるかもしれません。まずは主治医の先生に相談していただき、言語聴覚士も一緒に考えていけたらと思います。
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Q.言語聴覚士の方と子どもの相性のようなものはあるのでしょうか?
A.言語聴覚士も経験や得意領域、コミュニケーションの取り方などさまざまですので、相性の違いはあると思います。
お子さんと相性が良く、保護者の方も安心して任せられるのが理想ですね。言語聴覚士はまだまだ少ないので、担当者以外に相談するというのが難しいこともあるかもしれません。各都道府県の言語聴覚士会などに相談していただけたらと思います。子どもの成長を応援している言語聴覚士と出会えることを願っています。そして、私たち言語聴覚士も、子どもと家族のミカタであり続けたいと思います。
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