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記憶力抜群のASD息子、なぜかテスト結果は散々!不器用なのに「枠にきっちり書きたい」特性を踏まえた受験大作戦

LITALICO発達ナビ

子どものころからずば抜けた記憶力をみせていた


わが家の長男タケル(ASD・22歳)は、子どものころから物覚えが良く、一度聞いたことは忘れません。平仮名はもちろん、一般的に使われる漢字も、4歳になったころには完璧に読めるようになってしまい、大人たちを驚かせました。

小学校でも、授業で聞いたことはほとんど丸覚えしており、しばしばほかの子に先生のように教えるほど。先生方も「タケルくんは本当に頭が良いね」と、ほめて(おだてて?)くれていました。

さぞかしテストもできるだろう…と思いきや


小学校の6年生になり、タケルは中高一貫校を受験することになりました。学校ではお勉強のできる子のタケル。受験用勉強は学校の勉強とは違うとはいいますが、タケルなら結構良い線いくんじゃないか?そう思いつつ、12月に初めて有名予備校の模試を受けました。

…ですが!

結果は惨憺たるものだったのです…。


記憶力抜群のASD息子、なぜかテスト結果は散々!不器用なのに「枠にきっちり書きたい」特性を踏まえた受験大作戦

Upload By 寺島ヒロ

どの科目もまんべんなく点数が低く、特に後半の文章題になると全部の科目で落としていました。やはり受験向けの勉強をしてないと難しいというのは本当なんだ…。

と思いつつ、タケルを見ると…

あれ?なんだか納得いかない顔…?

記憶力抜群のASD息子、なぜかテスト結果は散々!不器用なのに「枠にきっちり書きたい」特性を踏まえた受験大作戦

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なんと、タケルは「問題は難しくなかった。答えは読んだところは全部わかってた。」と、言うのです。

ん??「読んだところ」とは?

「問題数が多すぎて、全部読む前に終わっちゃったんだよ!答えも文字が多くて、枠の中にきっちり書ききれなくて、何度も書き直したの!」

「タケル不器用なんだよ…。」
悔しさを滲ませながら、タケルはそう言いました。

実は隠れLDだった?タケルの言い分


詳しく聞いていくと、タケルは漫画のセリフのような数行の文字なら問題ないが、小説のような長い文章になると、今読んでいたところがしばしばわからなくなったり、ほかの行に視線が飛んでしまうことがあるのだそう。

しばらく読んで「ん?意味が通らないな?」と思うと読み直すので、普段はあまり問題にならないのですが、入試問題など時間内に読んで、答えを書かないといけないようなものだと時間が足りなくなります。また、タケルには文字を書く欄にぎっちり余白なく文字を書きたいというこだわりがあり、うまく収まらないと何度も書き直したくなり、時間が足りなくなるのだそう。


そういえば、タケルのノートは余白がなく、びっしりと文字で埋まってます。あれはそういうこだわりだったのか…!

特性はすぐにはなくならない!タケルの作戦とは?


そうはいっても受験はもう目の前。できることで勝負をしていくしかありません。

解答欄にはぎっちりと文字を入れたいこだわりのあるタケルでしたが、枠の中に均等に文字が入っている必要はないと説得。解答欄になるべく先詰めで答えを書く練習をすることにしました。

記憶力抜群のASD息子、なぜかテスト結果は散々!不器用なのに「枠にきっちり書きたい」特性を踏まえた受験大作戦

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また、文字を読むときには、定規を当てながら読んでみるなど、本人も自分なりにいろいろ考えて工夫していたようです。

特別扱いじゃない!実力を発揮するために必要なこと


細かい工夫が功を奏し、タケルは希望の中学校に合格することができました。

しかし、22歳の今でも、文字を読むのは遅く、書くのも苦手です。


18歳で大学受験をしたときも、答えを書くまでの時間が足りず大変苦労しました。大学入試センター試験では、合理的配慮の範囲で時間延長をお願いできないかと相談もしたのですが、当時は「肢体不自由でペンが握れない」というような明らかな障害でなければ認められないと、適用されなかったのです。

ちなみに、現在(2022年)では、センター試験が大学入学共通テストに変わると共に見直しが行われ、条件が緩和されているようです(※)。

最近タケルが受けたTOEICでは、合理的配慮の申請フォームに既にASDの項目が用意されており、時間延長措置が選べるようになっていました。こういうところは、さすがアメリカ発祥の資格試験だな〜!と感心しました。

「特別扱い」「下駄を履かせてる」という声が聞こえてくることもある合理的配慮ですが、障害がある子が実力を発揮する大きな助けになることですので、もっと理解が進んで、広がっていくといいなと思います。

執筆/寺島ヒロ

(※)合理的配慮の内容や条件はこちらをご覧ください。

https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/hairyo.html
参考:令和5年度 受験上の配慮案内| 大学入試センター

(監修:井上先生より)
近年、LDを含む発達障害のある学生に対して、試験などでの合理的配慮が認められるようになってきました。
合理的配慮の種類によっては、個別の教育支援計画の中に記載されていたり、日ごろの学校での配慮の実績などが問われる場合もあります。また、年齢が上がれば、配慮を受けたい/受けたくないといった本人の意思も関係してきます。大人になって合理的配慮を行う場合は、本人の申し出が必要になってきます。本人の自己理解やプライドなど、さまざまな段階や葛藤もあるかと思いますが、相談しやすい環境づくりとともに、合理的配慮に対する知識を学ぶ場が望まれています。

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